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CASE2 同調-シンクロ-
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なんとなく、少しだけ、できる気がした。
アゲハを助けるため。
そのための力が欲しいって、強く、願ったから。
アゲハが私に向かって飛び出した瞬間
私の手から黒い風が出た。
アゲハより上に飛びたい。
そう思ったからなのか、手から出た風を足元に向けると身体がグワッと上に上がった。
飛ぶと言うより上がるって感じで
簡単にアゲハより上に行った。
アゲハも身体を私の方に向けて大鎌を構えてたけど、私の風はまだ止めてない。
今度は手を空に向けて、力いっぱい押し出した。
私の身体は勢いよくアゲハに向かっていって、アゲハが大鎌を振るより先に、アゲハの身体にぶつかった。
私が知ってるのは、細くて今にも折れそうな身体だった。
だけど、目の前にあるのは、別人みたいに健康そうな身体。
私の視界には、アゲハの核。
「……ごめん、アゲハ」
そう言って、ポケットにしまっていた小刀で核を思いっきり突き刺した。
ユートピアに来る前に持参してきた工作用の小刀。
こんな使い方するなんて、思わなかった。
核は思ったより固くてあまり深くは刺さらなかったけど、小刀が刺さったところから血がドクドクと流れ出た。
アゲハの顔を見上げたら表情が固まっていて、大鎌も消えていた。
「一緒に落ちるから大丈夫……一人では死なせないよ」
そう言ってアゲハの胸にしがみついた。
私がアゲハを殺すって決めたときに私も死ぬって決めたから。
だから、このまま一緒に、落ちて死のう……―――――。
「……そ、ら?」
落ちてる途中、アゲハの声が聞こえて顔をあげたらさっきとは違う表情のアゲハの顔。
この顔は、いつも見ていた、私が知っているアゲハの顔。
自我を、取り戻したの?
「やっぱり、空だ……。声が、聞こえた。空の声……夢じゃ、なかったね」
そう言って力なく笑ったアゲハは、下を見てもうすぐ地上に落ちるって理解したみたい。
「大丈夫………空は、死なせないよ」
そう言ったアゲハは私を抱き締められた。
大丈夫って言われても死ぬでしょこの状況。
ぎゅっと目を瞑ったけど、ドンドン速度をあげて落下していたはずなのに、急に身体が浮いたような感覚がした。
そして、地面に落ちる瞬間は衝撃を何も感じなかった。
ただなんとなく、地面に落ちた?本当に?っていう不思議な感覚。
痛みもなにも感じなかった。
「ソラ!ソイツから離れて!!」
ルーラの叫び声
「空と井黒くん!?えっ、血がヤバくない!?」
桃華の叫び声
二人の声が聞こえて目を開けるとやっぱり地面っていうか地上。
私の隣にはアゲハが横たわってて、砂漠の砂がどんどん赤くなっていた。
これは、核を壊したから……アゲハから流れ出てる血で。
私は、生きてて、アゲハは、死ぬの?
「おい!お前らあぶねぇ!!」
辛島くんの叫び声がした方を向くと蟲がこっちに向かってきていた。
あ、ちょうどいいかも。
アゲハと一緒に死ぬんだから、蟲に潰されて私死ねばいいかも。
そう思って私がただ呆然とそっちを向いていたら、隣から起き上がる気配を感じた。
右手で核を抑えながら左手には大鎌を持ったアゲハ。
私以外がアゲハに警戒したけど、アゲハの目がいつもと同じだから自我はあるみたい。
そのまま左手で柄を蟲に向かって投げて、先端にあった三日月型の刃物が蟲の3つある目の真ん中に突き刺さった。
耳を塞ぎたくなるほどの絶叫をあげて蟲が止まった。
「向かって右の目を潰して!そこが核だから!核を潰せば蟲は死ぬ!!」
アゲハの声に、全員が驚いていたけど、辛島くんが一番に動いた。
辛島くんに続いてルーラが短剣を投げて、桃華が矢を放った。
三人の攻撃が同時に蟲の右目に刺さって、さっきの蟲同様に絶叫をあげて止まった。
そして、蟲が倒れたのを見てから、ホッとしたような、そんな表情を浮かべてアゲハの身体は砂の上に倒れた。
アゲハを助けるため。
そのための力が欲しいって、強く、願ったから。
アゲハが私に向かって飛び出した瞬間
私の手から黒い風が出た。
アゲハより上に飛びたい。
そう思ったからなのか、手から出た風を足元に向けると身体がグワッと上に上がった。
飛ぶと言うより上がるって感じで
簡単にアゲハより上に行った。
アゲハも身体を私の方に向けて大鎌を構えてたけど、私の風はまだ止めてない。
今度は手を空に向けて、力いっぱい押し出した。
私の身体は勢いよくアゲハに向かっていって、アゲハが大鎌を振るより先に、アゲハの身体にぶつかった。
私が知ってるのは、細くて今にも折れそうな身体だった。
だけど、目の前にあるのは、別人みたいに健康そうな身体。
私の視界には、アゲハの核。
「……ごめん、アゲハ」
そう言って、ポケットにしまっていた小刀で核を思いっきり突き刺した。
ユートピアに来る前に持参してきた工作用の小刀。
こんな使い方するなんて、思わなかった。
核は思ったより固くてあまり深くは刺さらなかったけど、小刀が刺さったところから血がドクドクと流れ出た。
アゲハの顔を見上げたら表情が固まっていて、大鎌も消えていた。
「一緒に落ちるから大丈夫……一人では死なせないよ」
そう言ってアゲハの胸にしがみついた。
私がアゲハを殺すって決めたときに私も死ぬって決めたから。
だから、このまま一緒に、落ちて死のう……―――――。
「……そ、ら?」
落ちてる途中、アゲハの声が聞こえて顔をあげたらさっきとは違う表情のアゲハの顔。
この顔は、いつも見ていた、私が知っているアゲハの顔。
自我を、取り戻したの?
「やっぱり、空だ……。声が、聞こえた。空の声……夢じゃ、なかったね」
そう言って力なく笑ったアゲハは、下を見てもうすぐ地上に落ちるって理解したみたい。
「大丈夫………空は、死なせないよ」
そう言ったアゲハは私を抱き締められた。
大丈夫って言われても死ぬでしょこの状況。
ぎゅっと目を瞑ったけど、ドンドン速度をあげて落下していたはずなのに、急に身体が浮いたような感覚がした。
そして、地面に落ちる瞬間は衝撃を何も感じなかった。
ただなんとなく、地面に落ちた?本当に?っていう不思議な感覚。
痛みもなにも感じなかった。
「ソラ!ソイツから離れて!!」
ルーラの叫び声
「空と井黒くん!?えっ、血がヤバくない!?」
桃華の叫び声
二人の声が聞こえて目を開けるとやっぱり地面っていうか地上。
私の隣にはアゲハが横たわってて、砂漠の砂がどんどん赤くなっていた。
これは、核を壊したから……アゲハから流れ出てる血で。
私は、生きてて、アゲハは、死ぬの?
「おい!お前らあぶねぇ!!」
辛島くんの叫び声がした方を向くと蟲がこっちに向かってきていた。
あ、ちょうどいいかも。
アゲハと一緒に死ぬんだから、蟲に潰されて私死ねばいいかも。
そう思って私がただ呆然とそっちを向いていたら、隣から起き上がる気配を感じた。
右手で核を抑えながら左手には大鎌を持ったアゲハ。
私以外がアゲハに警戒したけど、アゲハの目がいつもと同じだから自我はあるみたい。
そのまま左手で柄を蟲に向かって投げて、先端にあった三日月型の刃物が蟲の3つある目の真ん中に突き刺さった。
耳を塞ぎたくなるほどの絶叫をあげて蟲が止まった。
「向かって右の目を潰して!そこが核だから!核を潰せば蟲は死ぬ!!」
アゲハの声に、全員が驚いていたけど、辛島くんが一番に動いた。
辛島くんに続いてルーラが短剣を投げて、桃華が矢を放った。
三人の攻撃が同時に蟲の右目に刺さって、さっきの蟲同様に絶叫をあげて止まった。
そして、蟲が倒れたのを見てから、ホッとしたような、そんな表情を浮かべてアゲハの身体は砂の上に倒れた。
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