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CASE2 同調-シンクロ-

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アゲハって小さい頃から走れなかったのに。


今、走ってるんだよね。


私を、殺すためなんだけど、ね。



「っ!逃げろよっ、馬鹿!!」


アゲハが私に向かって振り降ろした大鎌を止めたのは辛島くんの剣だった。


辛島くん、剣出せるんだ。

アゲハ、私を本当に殺す気なんだ。


シンクロが使いこなせない私はアゲハを止めることもできないし。

アゲハは元に戻せないって言われたし。

逃げても、アゲハをどうもできないし。



戦うも逃げるもできない私はただその場に立ち尽くしてた。



「蟲がっ!硬い!!?」

桃華の弓が蟲の甲に刺さらずに落ちた。



「ニャン様は戦えない人を連れて逃げてください!」

ルーラも蟲と戦っている。



辛島くんはアゲハの攻撃を受け止めるので精一杯って様子。




私は、どうしたらいい?




「ソラ!お主もこちらへ!!」


ニャンさんの声が私と、アゲハにも届いた。


アゲハの視線がニャンさんがいる方へ向いた。



すごく、嫌な予感がする。


アゲハは辛島くんの剣を弾いて、辛島くんの身体が吹き飛んだ。


風?風の魔法?


アゲハの手には大鎌がある。

武器と魔法って同時に使えないんじゃないの?



「アゲハ!やめて!!」


私が叫ぶと同時にアゲハが大鎌を大きく振りかぶってそのまま投げた。


大きいから重たいと思われる鎌なのに、すごい速度でニャンさんがいる方に軽々と飛んでいって誰かに当たった。

慌ててアゲハの方を向いたらもうアゲハの手には大鎌があった。


そしてフワッと高く飛んで、大鎌の柄をそのまま地面に突き刺した。

大鎌の柄の先端は三日月型の刃物がついていて、刺した地面では人が真っ二つになっていた。



「もうやめてっ!!!お願いだからっ!!!」


こんなアゲハをもう見たくない!!



私の声が聞こえたのか私を見て、それから手を振り下ろした。

途端に足元が陥没して、蟲も含めた全員が体勢を崩した。


砂?土?魔法って一人ひとつしか使えないんじゃないの?


手には大鎌を持ったまま、私たちの足場を崩したアゲハ。

そのまま、アゲハのいる場所の砂が空高くあがって、次に私の足元も上がった。


蟲の高さより高い場所で、下を見るとみんながアリみたいに小さい。

私の足場は小さくて、落ちても死ぬし、攻撃されても避けられないと思う。

アゲハは私よりやや高い位置に立っていて、大鎌を構えていた。


あ、この場所で私を殺すんだ。

誰にも邪魔をされない場所だし、運よく避けられても落ちたら死ぬだろうし。


「アゲハ、もうやめようよ……アゲハはこういう事を平気でできる人じゃないでしょ?」


会ってから一言も話さないし表情も変わらないから、聞こえてるわけ、ないよね。


私が死んだら次は下にいるみんなを殺すよね?

っていうかアゲハはこの世界に来て新人類にされてから、ずっと誰かを殺していたのかな?



優しかったアゲハが自我を取り戻したら、きっと自分のした事に耐えられないと思う。

だから、私が、止めないといけないと思うんだ。


ねぇ、アゲハ?

私を許してくれるかな?

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