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CASE2 同調-シンクロ-

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さぁって言われても部屋にはゾロゾロとカラフルな頭の耳が長い皆様が入ってくるから話をする空気じゃないんだけどなぁ……。

「あ、はーい!自己紹介しましょっ!私は都築桃華です!!」



元気よく手をあげて満面の笑みで自己紹介。

桃華らしくて吹き出したら、ゾロゾロ入ってきた皆様もクスクス笑い出した。


「元気なお嬢さんだねぇ。ワシはニャン。お嬢さんはツヅキモモカ?モモカでいいのか?」


まさかのお婆ちゃんの名前が可愛らしくて桃華の目がキラキラしてた。


「桃華でいいよっ!でね、こっちが虹野空と辛島涼!ニャンさんは、何ニャンさん?」


桃華の質問にニャンさんはニコニコしてた。


「異界人らしい質問だのぅ。久しぶりに聞いたわ。ワシらは名前しかない。大昔に会った異界人も同じことを言っていたなぁ」

大昔に会った異界人?

やっぱり、私たち以外にもここに来たことがある人間はいるんだ……。


「へぇー!じゃあニャンさんたち向けに自己紹介すると桃華と空と涼!よろしくお願いしますっ!!」

「はいはい、こちらこそよろしく。さぁてまずは暑かったろぅから水でも飲みなされ」

ニャンさんが手をあげると私たちと同い年っぽい見た目の緑色の髪色をしたふわふわの巻き髪女子が水を持ってきてくれた。

怪しい感じは……しないけど……?

知らない土地の水だし…って私が考えてる間に辛島くんはさっと手に取ってグビッと飲み干した。

え?マジで怖くないの??


「別にただの水だった」

「あ、ホント?ちょっとドキドキしたんだぁ!」

桃華もそう言って一口飲んだから、私も口をつけた。

……うん、ただの水だ。


水も言語も、とりあえず日本と同じらしい。



「あのっ、ニャンさん!質問いいですか!?」

「はいはい、どうぞ?」

いつしか周りの皆様も椅子を持ってきて座っていた。

「私たちみたいな人間、他に見ませんでしたか?男の子で…私たちと同い年で黒髪で痩せてる人です」

ニャンさんは首を横に振ってから、後ろにいる全員に聞いてくれたけどみんな首を横に振った。


「この辺り一帯は異界人が現れるポイントと言われているが、君たち以外は何十年も見ておらんよ」

アゲハはこっちには向かわなかった?

そうだよね、右も左も分からない砂漠だったもんね。


「異界人、来てもすぐに死んじゃうから。だからニャン様が助けたの」


コハルちゃんがさらっと怖いことを口走った。

まぁ確かにあの巨大ダンゴムシに殺されるって思ったけどね。


「少し、ばばあの長話をしようかねぇ」


ニャンさんはそう言って教えてくれた。

この世界、ユートピアについて……―――――。


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