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CASE2 同調-シンクロ-

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運動神経はいい方で、なんならクラスの女子で一番で。

桃華だって運動神経はいい方だし、辛島くんは確かサッカー部。


だから、走ることは得意なはずなのに、もう辛い。

足は痛いし、暑いし、砂地は走りにくい。

だけど、巨大ダンゴムシの方が怖いから走って走って、、、


「もう無理……走れない……」

自分達より2倍くらい巨大なんだって分かるくらい近づいた時に、桃華の足が止まった。


「桃華っ!走って!!」

「都築!何してんだよっ!!」


私も辛島くんも立ち止まって桃華の方を振り返った。

もう、ダメかもしれない…。

謎の巨大ダンゴムシとか砂漠とか。



こんな世界で私は生きていけないよ。

だから、アゲハもきっともう…………。



「桃華っ!早く…っ!……え!?」

桃華のところに行こうとしたら足が動かない!


「おい!なんだこれ!?」

辛島くんの方を見たら足がズブズブと砂に埋もれていってるし!!


砂に埋もれるのが先か、巨大ダンゴムシに潰されるのが先かの二択なんてひどすぎるよ!


「もぅやだ……なんでもいいし」

桃華は泣きながら無抵抗でいたらズボッと身体が砂に埋もれた。

「はあっ!?桃華っ!!!どこ!!?」

辛島くんは半分くらい砂に埋もれてるけど、私はまだ足だけ。



「空!!暴れないで!!止まって!!」

砂の中から、桃華の声?

止まれ?私が??



もうやけくそだって思って暴れるのをやめたら途端に砂に埋もれた。







でもそれは一瞬で。






おしりから落ちた先はレンガ造りの家のソファの上だった。




私が落ちてきてすぐに辛島くんが落ちてきて、桃華と三人でソファに座ってる状態。


え?もうナニコレ?

目の前にはソファに座った白髪頭のお婆ちゃんと孫なのかな?小さな女の子。

この世界ではじめて会った人間(?)だけど、人じゃない。

お婆ちゃんは白髪だけど、女の子は漫画に出てきそうなくらい鮮やかなピンクの髪の毛だし。
二人ともエルフっぽい感じで耳がとがってるし!


「お婆ちゃん、これでいいの?」

「あぁ、コハルはよくやった…さぁ、皆を集めておくれ」


優しそうに話すお婆ちゃんと不審者を見るようにこっちを見てる女の子(コハルって名前らしい)


「ね?止まったらここに来たでしょ?なんかラッキーって感じじゃない?」

この状況で満面の笑みで私に話しかける桃華に、何か強さを感じた。


「都築の空気の読めなさ……」

辛島くんは額に手を当てて呆れてたけど。


「さて、お前さん方は…異界人かな?」

異界人って……異世界の人って意味だよね?

この世界にとったら私たちは違う世界の住人だから異界人…だね。


「そうです!さっきは助けてくれてありがとうございますぅ!」

元気よく頭を下げた桃華に続いて、私と辛島くんも頭を下げた。

ちょっとさっきまで、色々諦めていた桃華だったのに…そんな桃華の姿にちょっとだけ、私も元気をもらった。


「あの…色々聞いてもいいですか?」


お婆ちゃんはニッコリ笑ってそれから“静かに”のポーズをとった。

お婆ちゃんは上を見上げるから私も上を見たら、パラパラと砂が落ちてきた。

ガサガサって音がして、音がしなくなったらお婆ちゃんはふぅってため息を吐いた。


「さぁもう大丈夫。お互い、色々話しましょうかね?」


お婆ちゃんはそう言ってまたニッコリ笑った。


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