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CASE1 アゲハの失踪

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「都市伝説で“ユートピア”って知ってるか?」


暫くしてから辛島くんがポツリと言った。

ユートピア?……理想郷??


「ある儀式をしたらユートピアって名前の理想郷に行けるって都市伝説……。
名前の通り、理想郷に行けるらしい。地球上にない、異世界って言うのかな?そーゆー場所に行ける都市伝説」

「……知らないけど、、、その都市伝説が何?」


私らしくない言葉の冷たさのせいか辛島くんが口を閉ざしちゃって、しばらく無言だった。

だけど、次に続く言葉は桃華が教えてくれた。



「やったんだって辛島くん……井黒くんにその儀式を……」



頭がおかしくなりそうなその言葉を、理解するまでに時間がかかった。

都市伝説って作り話でしょ?

異世界って漫画とか小説の世界でしょ?

令和の時代に都市伝説で異世界に行ったって、あり得ないどころの騒ぎじゃないけど。



制服のポケットから携帯を取り出して“都市伝説”“ユートピア”で検索


・ある儀式を行うと誰でも理想郷に行けるらしい
・17:00ちょうどに日の当たる場所で真っ白いカード(厚紙でOK)に名前(フルネームで代筆OK)を書いて自分の血液を垂らすだけの簡単な儀式
・望む自分になれる世界へ誰でも行ける
・理想郷から現実にも簡単に戻れる


調べるとこんな感じの文章がたくさん出てきた。

なに、これ?


「調べたけど……これをやってアゲハはユートピアってところに行ったって言うの?非現実的にも程がある」

信じたくない。

ありえない。

頭で警報が鳴っているのが分かる。

これ以上は、聞いたら私がおかしくなりそう。

信じたくない言葉を言われる。

言わないで!

聞きたくない!!



「俺がやった。アイツは暴れて…拒否してたけど……井黒の事、ムカついてたから……そしたら井黒は光に包まれて消えたんだ……」


頭を殴られたような感覚がした。


やっぱりアゲハは嫌だったんだ。

拒否、ちゃんとしたんだ。


なのに無理矢理、やりたくないことをさせられて、消えたんだ……。


アゲハ、ずっと前からイジメられてた?

ワタシは、何を見てた?


………一番ムカつくのは、何も見ていなかった自分自身だ。



時計を見たら17:15すぎ


「そう……分かった。もういい」


「そ、そらっ!!」


桃華が私の名前を呼んだけど、無視してそのまま家に帰った。



さっきの話が本当だとしたら

アゲハはどんな気持ちで消えたんだろう?

知らない世界で一人ぼっちで、私でも生きていけるのだろうか?


考えれば考えるほど苦しくて辛くて。


だから、私がすべき事はただひとつ。



アゲハを迎えに行くこと。


ただ、それだけ。


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