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CASE1 アゲハの失踪

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1ヶ月前―――――



私、虹野空(ニジノ ソラ)は朝からいつものように学校に行って、いつものように同じクラスにいる親友の都築桃華(ツヅキ モモカ)と話をしていた。

昨日の夜に見たテレビの話とか、桃華が買った新しいコスメの話とか。

とにかく、いつもと変わらない朝。



いつもとちょっと違ったのは、HRが始まる10分前にアゲハが登校してきた事。


アゲハが教室に入ると全員が注目して無言になる。

それくらい、アゲハが朝から学校に来るのは珍しい話。


「空、おはよう」


ゆっくり歩いて私の席に来て挨拶をするのはいつものお決まりのパターン。

ニコッて笑う顔はイマドキなジャニーズにいそうなくらい可愛い顔なんだけど、相変わらず青白い顔に細い身体。


「おはよう、アゲハ。今日は調子いいの?」


「うん、だから朝から来たんだ。来れるときに来ないと進級危ないでしょ?」


「あぁ……去年ギリギリだったもんねぇ、、、」



去年も同じクラスだった私とアゲハ。


学校がわざとそうしてるとしか思えないけど、別にアゲハは幼馴染みだし嫌いじゃないからいいんだけどね。


「じゃあまたね」


桃華がいるから長話もせずにすぐに自分の席に座るアゲハ。


「久しぶりに井黒くん見たっ!相変わらず病弱って感じ!」


 桃華は悪気なくそう言うけど声が大きいから!

たぶんアゲハに聞こえるし!





アゲハは先天性の病気があって小さい頃から入退院を繰り返していた。

心臓が良くないらしく、運動はできないし、学校行事の旅行とか遠足も一切参加した姿を見たことがなかった。


私とアゲハは同じマンションに住む同い年だったから幼馴染みで、小さい頃は一緒におままごとをしたり本を読んだりして遊んでた。

アゲハが入院をしたら何回もお見舞いに行った。


仲は良かったと思う。


……思うけど、だんだんと私の生活リズムとは合わなくなった。



中学になった頃からかな?

私は部活でテニスに打ち込んだり、友達と遊ぶのが楽しくてあんまりアゲハとは一緒にいなくなった。

中学くらいからアゲハも休みがちになって、だから高校も行かないかな?って勝手に思ってたけど、普通に私と同じ高校を受験して合格してた。

身体の事に理解を示してくれた唯一の高校だったんだって。

普通の人と同じ高校生をやりたかったんだって。



だけど、高2になった今、数えるくらいしか朝から登校してない。


だから、今日は珍しい朝。

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