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皇都脱出
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しおりを挟む「うむ……通行手形に間違いはないな」
そんな兵士の声が聞こえた。
「では……失礼します」
おじさんの声と共に馬車は動き出した。
荷の隙間から外を見たらそこはよくゼシカと手合わせをした草原だった。
あたしはもう皇都に戻れないんだ……
父の思い出、皇都の生活を思い出すと涙がでてきた。
少しして馬車が止まった。
「セシル!もう出ても平気だぞ!」
ルイの声で箱から顔を出した。
ゼシカも顔を出すがアベルが顔を見せない。
ゼシカが慌てて箱を開けたらアベルは苦しそうな顔をしていた。
「また熱が上がったようですね……傷もまだ塞がらないようですし」
そう言って服をめくればさっき替えたばかりの包帯が真っ赤になっていた。
「ゼシカ……アベルそんなに酷い怪我だったの?」
「はい……お嬢様に会うまで歩いていたのが不思議なくらいでした」
そう言って包帯の下の傷を見て目を背けたくなった。
あたしは戦いに行った経験も切られた経験もない。
戦いでは負傷した人はこんな怪我をするんだろうか……?
深く切られた傷は塞がってはおらず、血が滲み出ていた。
「お嬢様……私は…大丈夫ですから」
痛みも高熱もあって大丈夫なわけないのにアベルは絶対に弱音をあたしには言わなかった。
絶対に大丈夫だと言い続けた。
旅仕度に薬は持参したがあまり効かず熱は一向に下がらなかった。
そして2日目の夜には前よりだいぶ具合が悪いように見えた。
「アベルさんってすごいよな」
消えかけの火の前でルイがポツリと言い出した。
「セシルを逃がすためにあんだけの怪我をしたのにセシルを心配ばっかしてさ。しかも大丈夫と言えるなんて強いよな」
「うん」
「町に着いたら俺は親父と共に野菜の出荷……それが終わればセシルたちと一緒だからな!」
「うん」
「セシルが元気ないとアベルさんもゼシカさんも心配するんだから。お前いつまでも暗い顔ばっかしてんなよ!」
そう言ってルイはいなくなった。
あたしはもう少しその火を見てから寝ることにした。
見上げたら空は星がたくさんあった。
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