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第8話 理想の転生④
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気付くと僕は表面の湿った草原の上で仰向けに横たわっていた。
どうやら僕自らが呼び出した雷によって感電し、しばしの間気を失っていたらしい。
雨雲もそれ自体が元々なかったような青空が眼前に広がっていた。
上半身を持ち上げて辺りを見渡すと火の魔法によって発生していたボヤはすっかり鎮火していた。
ただ、目の前の破壊された樹と周辺の焦げた草原だけが魔法が確かに存在したことを物語っていた。
『城に帰るか。』
ひとりつぶやきながら立ち上がり、城に向けて歩き始めた。
歩きながら僕はこの異世界に来てからの違和感について考え始めていた。
城はある。
それは間違いない。
だが人は?
僕は城を出てからこの草原に来るまで誰とも出会わなかったし、この見晴らしのいい草原から城以外の建築物を一つも見つけられなかった。
これはいったいどうしたことだ?
不安に後押しされるように足早に城に戻り、転生のスタート地点だった寝室兼書斎で濡れた服を着替える。
城の中を確認しなければ。
何が起きているかを確かめないと。
城の二階の端にある寝室兼書斎から延びる廊下に沿って部屋がいくつかある。
これを一つずつ確認していくことにした。
一つ目の部屋。
だだっ広い空間に窓が二つと木製の重厚な机、椅子があるだけだった。
人の気配はない。
二つ目の部屋。
なんとなく悪い予感がするが、それを打ち消すように勢いよく扉を開ける。
予感していた通り、二つの窓に机と椅子、全く一つ目の部屋と同じだった。
三つ目、四つ目、五つ目。
僕はもう開けた扉を閉めることもやめて、ひたすら扉を開け続ける。
どの部屋も同じだ。
そして廊下の中心にある、階段の真正面にある扉にたどり着いた。
この扉は他の部屋の扉とは違い両開きとなっている。
少なくとも窓二つに机と椅子だけということはあるまいと半ば念じるような気持ちで扉を開いた。
するとそこには広大な空間に二つの玉座と等間隔でいくつかの窓が並んでいるのが見えた。
そして、玉座の片側には人影が見える。
逆光でよく見えない為、走り出したい気持ちを抑えてゆっくりと近付いていく。
玉座の数メートル手前まで来たとき、座っているのが女性であることに気付いた。
女性、とてもきれいな女性だ。
色白で肩まで優に届く黒髪、はっきりとした目鼻に薄い唇、ほっそりとした身体つき。
街中ですれ違ったら思わず振り向いてしまうだろう。
ただ、人形のように生気を感じられない。
人間なのだろうか?
僕は恐る恐る話しかけてみることにした。
『こんにちは。
僕は星渉です。
あなたは誰ですか?』
不安を悟られまいとゆっくりとはっきりした口調で発声した。
『初めまして、王様。
私はあなたの妻ですわ。
名前はまだありません。』
なんという支離滅裂な会話だろうか。
初めましてなのに妻で、しかも名前がないときた。
これが隕石に当たって死ぬ前の出来事であれば、こんな美人の「あなたの妻」という部分だけ切り取って狂喜乱舞できたかもしれない。
だが、今はそれすらも不安を増幅させる要素でしかなかった。
そして、僕は核心に迫る質問をする。
『この国の他の人達はどこにいるんですか?
大臣とか衛兵とか町の人々とか。』
王妃、僕の妻の答えに僕は絶句した。
『この世界には王様と私の二人だけしかいませんわ。』
どうやら僕自らが呼び出した雷によって感電し、しばしの間気を失っていたらしい。
雨雲もそれ自体が元々なかったような青空が眼前に広がっていた。
上半身を持ち上げて辺りを見渡すと火の魔法によって発生していたボヤはすっかり鎮火していた。
ただ、目の前の破壊された樹と周辺の焦げた草原だけが魔法が確かに存在したことを物語っていた。
『城に帰るか。』
ひとりつぶやきながら立ち上がり、城に向けて歩き始めた。
歩きながら僕はこの異世界に来てからの違和感について考え始めていた。
城はある。
それは間違いない。
だが人は?
僕は城を出てからこの草原に来るまで誰とも出会わなかったし、この見晴らしのいい草原から城以外の建築物を一つも見つけられなかった。
これはいったいどうしたことだ?
不安に後押しされるように足早に城に戻り、転生のスタート地点だった寝室兼書斎で濡れた服を着替える。
城の中を確認しなければ。
何が起きているかを確かめないと。
城の二階の端にある寝室兼書斎から延びる廊下に沿って部屋がいくつかある。
これを一つずつ確認していくことにした。
一つ目の部屋。
だだっ広い空間に窓が二つと木製の重厚な机、椅子があるだけだった。
人の気配はない。
二つ目の部屋。
なんとなく悪い予感がするが、それを打ち消すように勢いよく扉を開ける。
予感していた通り、二つの窓に机と椅子、全く一つ目の部屋と同じだった。
三つ目、四つ目、五つ目。
僕はもう開けた扉を閉めることもやめて、ひたすら扉を開け続ける。
どの部屋も同じだ。
そして廊下の中心にある、階段の真正面にある扉にたどり着いた。
この扉は他の部屋の扉とは違い両開きとなっている。
少なくとも窓二つに机と椅子だけということはあるまいと半ば念じるような気持ちで扉を開いた。
するとそこには広大な空間に二つの玉座と等間隔でいくつかの窓が並んでいるのが見えた。
そして、玉座の片側には人影が見える。
逆光でよく見えない為、走り出したい気持ちを抑えてゆっくりと近付いていく。
玉座の数メートル手前まで来たとき、座っているのが女性であることに気付いた。
女性、とてもきれいな女性だ。
色白で肩まで優に届く黒髪、はっきりとした目鼻に薄い唇、ほっそりとした身体つき。
街中ですれ違ったら思わず振り向いてしまうだろう。
ただ、人形のように生気を感じられない。
人間なのだろうか?
僕は恐る恐る話しかけてみることにした。
『こんにちは。
僕は星渉です。
あなたは誰ですか?』
不安を悟られまいとゆっくりとはっきりした口調で発声した。
『初めまして、王様。
私はあなたの妻ですわ。
名前はまだありません。』
なんという支離滅裂な会話だろうか。
初めましてなのに妻で、しかも名前がないときた。
これが隕石に当たって死ぬ前の出来事であれば、こんな美人の「あなたの妻」という部分だけ切り取って狂喜乱舞できたかもしれない。
だが、今はそれすらも不安を増幅させる要素でしかなかった。
そして、僕は核心に迫る質問をする。
『この国の他の人達はどこにいるんですか?
大臣とか衛兵とか町の人々とか。』
王妃、僕の妻の答えに僕は絶句した。
『この世界には王様と私の二人だけしかいませんわ。』
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