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第3章 武器(剣1)
#16 剣を知る
しおりを挟む丸薬タイプの回復薬を完成させたハヤトは次なる仕事に就くことになった。
魔道具を作ることはまだ出来ないが、魔道具の中でも最も作り上げたいモノは魔石を組み込んだ剣すなわち魔剣だ。
中二心をくすぐる武器を作るために、そのベースとなる剣も作れるようにならなくてはいけない。
■■■
ハヤトがやって来たのはエルラーが管理する鍛冶場だ。
「おーハヤト、いよいよ武器を作る番か!」
「ああ、直ぐに利益の出そうな回復薬を作れたからな。お金が掛かる武器作りにもチャレンジしていいとアダムスに許可を貰えたからな」
「まったく、ケチだよな。最初から武器を作っても良いじゃねぇか」
「まぁかなり赤字額が膨らんでいたみたいだからなぁ。あのままだったらエルラーも首だったぞ?」
「それは……うん、まぁ回復薬が出来たから良かった良かった。それよりどんな武器が作りたいんだ?」
「うーん、やっぱり剣かな。他の武器もいずれは作っていきたいけど、勇者の基本は剣だろうしな」
「やっぱそうだよな! 男なら剣に憧れるしな!」
「それがあれですか……」
エルラーの背後にボツとなった剣の山が堆く積もっている。
「まぁ……あれはこだわりを持ってる代償だな。でもほらこれを見てみろ!」
エルラーから素人目にも質が良く、そこにあるガラクタとはひと味もふた味も違う剣を渡される。
「これは確かに凄いな、なんというか派手?」
「そうだろ! これはオリハルコンに様々な金属を混ぜて作ってるのが重要でな、さらに装飾としてミスリルを使い……」
得意分野なことあって、堰を切ったかのように語られる。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ! というより、そんなに貴重そうな金属を使ってるのか?」
「そりゃ、質の高い武器を作るためには必要なことだからな。今さら鉄屑だけで武器は作れないよ」
この商会が赤字になり、この部署が厄介者扱いされている理由が分かった気がする。
「でもそんな武器を買えるのは極一部の人間に限られるだろう? 売れてるのか?」
「さぁ? その辺はアダムスに任せてるから知らん!」
「ちょっ、一回聞いてこようか……」
このまま行くとハイエンドどころか、ある意味で芸術作品のような剣を作らされかねない。
売ることの難しい剣を作っていては、お金を稼ぐことが出来ない。
赤字を膨らませているといつまで経っても魔道具作りを始められないので、アダムスに注意して貰わなければ。
■■■
「売れてる……訳がないでしょ!」
「なんで! 実用性はもちろん見た目にも拘った一品だぞ! ちゃんと売ってるのか!?」
「売れるものなら売りたいですよ! だがこの剣には購入層がいないでしょ! 冒険者が装飾に拘る余裕は無いし、金持ちの観賞用にしては無骨過ぎるんだよ!」
正論過ぎて口を挟む余地は無いのだが、さすがにこのままではエルラーが可哀想なのでフォローする。
「それでも売れ筋の商品もあるのでしょ?」
「それはもちろんです。そうでなければとっくに部署を解体してますよ」
「それはどんな武器なのですか?」
アダムスが取り出したのは何の変哲もない鉄の剣だ。
「おいおい、そんな只の剣に俺の作った逸品が負けるって言うのかよ!」
「只の剣だからいいのです。初心者から中級の冒険者を始め幅広い人が使えるからこそ売れるのです。売れない貴方の剣は只の自己満足でしかない。分かったらさっさと売れる剣を量産してきてください!」
■■■
アダムスの部屋からガックリと肩を落としたエルラーと一緒に鍛冶場に戻る。
「まぁそんなに気を落とすなって。別にエルラーの剣が駄目な訳ではなくて、今は買える人がいないだけだよ。それに商会が大きくなって取引相手が増えれば買いたい人も出てくるさ!」
「そうだよ、俺の剣は悪くないよな! ならハヤトも……」
「だが断る! だから今はその剣は売れ無いんだから、作っても意味が無いだろ? まずは普通の剣を作らせてくれ」
「ちぇっ、分かったよ。ならまずはどんな剣があるか見せていくから、どんな剣が作りたいか決めてくれ」
ということで、片手剣、両手剣、短剣、長剣など様々な形状の剣を見て自分で作りたい剣を選ぶことになった。
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