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第1章 魔道具(1)

#6 魔道具を知る

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 異世界に召喚された佐藤隼人さとうはやとは運動音痴なので、魔物と戦って活躍するという妄想は簡単に砕け散った。

 それでも神様に与えられたユニークスキル[職人の心得EX]を用いて生産職で活躍し、冒険者のサポートに回ることで魔王討伐の一助を担うことにした。

■■■

 生産職として名声をあげるためには他の人が作っているものをただ作っても難しい。

 色々な商品を作製し自分だけにしか作れないモノを作り出すにしても、何を作れば売れるのかを調べる必要があるのだが、それでもハヤトには是が非でも取り組みたい作ってみたいアイテムがある。

「アダムスさん、魔石を使った魔道具ってどうやって作るんですか?」

 ワーウルフとの戦闘で目を奪われた魔道具を是が非でも作ってみたいのだ。

「早速そこに取り組みますか。ですが魔力を扱えないハヤトさんには使うことが出来ないんですよ?」

「まぁそこは確かに残念なんですけど、それさえあれば一般の人でも魔物と渡り合えるようになりますし、最も魔王討伐に貢献できると思うんですよね」

「そうですね、確かに手軽に手に入るようになったなら最も売れる商品でもありますね。ですがまずは文字を書けなければ話にならないですよ?」

 ということで、魔道具の作製方法を説明して貰った。

■■■□□□

 魔道具の鍵となるのは魔法を使うためのキーファクターとなる魔石だ。そこに魔方陣と呼ばれる文字などを刻み込むことで、魔力を注ぎ込むだけで魔法を使えるようになる。

 刻むと言ってもノミでただ彫る訳ではない。錬金スキルを用いることでノミで削るだけではなく魔石の形状を変えていくイメージだ。

 魔石には大きさ、質、純度など様々な要素があり、品質の良いものでなければ高いレベルの魔法を発動するに至らない。そして質の低いものは手を加えるのが難しく直ぐに壊れてしまう。

 またその魔石をどのようなモノに嵌め込むかによって引き出される性能も変わってくる。

 質の高い剣に装着することで魔剣と呼ばれる代物も作れるのだ。この世界にある聖剣には魔剣をベースにした代物もある。

 ちなみにハヤトが神に貰った聖剣は確かに神の加護が備わっているが剣の質が高くは無く、この世界にある質の高い剣に教会の神官が加護を付与したものの方が質が高い。

 質の高い剣に神の加護が与えられたモノは大聖剣と呼ばれ、魔王を倒せるほどのチート武器らしいが今は何処にあるのか分かっていないとのことだ。


 質が良くそれも大きさがある魔石はAランクの魔物など高レートの魔物からでなければ入手出来ないし、質の高い魔石に陣を刻む事の出来る錬金スキルを持っている人も少ないので、魔道具はどうしても値段が高くなっている。

 しかし値段が高いがニーズも高いので紛い物も流通しており、直ぐに壊れたり爆発するモノもある。このような様々な要因と簡単には作れないということもあり、なかなか一般には広まっていないのが現状だ。

 それに今の品質の魔道具を買えるぐらいのお金を持った冒険者になると、自分で戦えるのでほとんど買われず貴族や商人の護身用となっている。

 普及させるためには品質の向上と価格を下げるという2つを両立させなければいけない。

 ハイエンドとローエンドモデルを揃えることが普及に必要になってくるのかもしれない。

■■■□□□

「あの時、そんな貴重なモノを使って貰ったんですね。ほんとすみません」

「いえいいんですよ、勇者が戦えないことを想定していなかった我々も悪いんですから。そんなことよりも、もし本当に気軽に魔道具を使うことが出来るようになれば我々はかなりの利益を手に入れることが出来ますからね」

「色々と作製するにしても、まずは試しに簡単なモノを作ってみたいんですが……」

「それならまずは小さな魔石に一文字を刻む練習をされたらどうですか?」

 小さな魔石はゴブリンの用な低級の魔物から得られるもので、安く大量にある。なので練習に使っても問題ないとのことだ。

「一文字ですか……そうするとどんな効果が得られるんですか?」

「刻む文字にもよりますが発熱をするので様々なエネルギーに使えますね。それに小さな魔石は簡単に手に入り加工も比較的容易なので、光源として広く普及しているものですよ」

 今いる部屋を照らしている照明にも使用しているらしい。

 ということでまずはありったけの小さな魔石に、指定された文字を黙々と刻む作業を行うことになった。
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