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第0章 アヴラムは決意する

#1 勇者パーティーに任命される

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 聖騎士団に所属する一人の騎士が国王に謁見するために、アールヴヘイム国の王城へ呼び出されていた。

「アヴラムよ、これまでの聖騎士団での活躍は見事であった。これを称えてお主を勇者一行に任命する」

「勿体なきお言葉、恐れ入ります。ありがたく拝命させていただきます」

 アヴラムは捨て子であり幼少期に教会に引き取られると、剣の才能を見込まれ十歳で聖騎士団への入団が認められた才能の持ち主だ。
 聖騎士団へ入団した後の活躍は凄まじく、数ある最年少記録を塗り替えるのみならず、災害とも呼ぶべき魔物の討伐数も数知れない。その結果として[救国の聖騎士]との二つ名が轟くほどである。
 齢14歳になり、これまでの功績が国王の耳にも届いて晴れて勇者一行に任命されるに至ったのだ。

 アヴラムとしてはこのまま聖騎士団の一員として民草の力になりたいと思っていたが、教会の司祭たちが召喚した[勇者]とやらをサポートする為に必要と言われれば、組織の一員であるので断るわけにはいかない。此度の勇者召喚に伴うサポートメンバーの選出は国王の肝いりで、教会の上層部も関わる極めて政治的なプロジェクトなのだ。
 過去に[勇者ユウキ]が史上最悪と称された魔王と相討ちして死んだことで、『英雄になるべき勇者を死なせるわけにはいかない! 』と国家プロジェクトとして始まった最強のパーティーメンバー探し。その失敗するわけにはいかないプロジェクトの一員に、国王自らのお言葉によって任命されることは至極名誉なことである。
 こうして晴れてアヴラムは勇者のパーティーに入ることになった。

■■■

 アヴラムは勇者と初めての顔合わせに行くと、そこには勇者だけでなく自分と同じように勇者一行に任命された人たちが何人かいた。

 鎧を着込んだタンクのアイナ。
 弓を携えたアーチャーのトランファス。
 ローブ姿でヒーラーのベラドンナ。

 ここに召喚された勇者ユウトとアヴラムを合わせた5人が勇者一行である。
 アイナ、トランファス、ベラドンナの三人はアヴラムより年齢が高いが、召喚された勇者ユウトはアヴラムと歳が近いこともあって馴染むのに時間はかからなかった。
 しかし、人間関係に問題は無さそうなことは良いが、勇者の生活はどういうものなのかが分からないのでアヴラムは不安を抱えている。
 この世界で語り継がれる[勇者ユウキの物語]は、過去に召喚された勇者の物語で、勧善懲悪のヒーロー物として子供の頃から読み聞かされてきた。
 そのため魔王を初めとする悪に立ち向かうという目的は知っているのだが、普段何をしているかは描かれていなかったので分からない。
 勇者一行としてこれから何をしていけば良いのかまだ分からないのだが、勇者はこの世界に来たばかりなので、支えていくのがアヴラムの仕事だ。
 魔王を討伐するのが最終目標と言ってもそれまでにやるべきことは多く、まだまだ先は長い。

 アヴラムは顔合わせを終え、『心機一転、頑張ろう!』と決意を新たにするのであった。
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