アネモネの咲く頃に。

シグマ

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とある少女の二日間

第1話 不思議な出逢い

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──何て運命は残酷なんだろう。

 私は自分の人生に絶望した。
 好きだけど、ずっと好きと言えずにいた幼なじみの遼太りょうたが、親友の沙絵さえと付き合うことになったのだ。

 沙絵とは中学校に入った初めのクラスで、私の隣の席に座った時からの仲である。
 自然と一緒にいることが多くなったことで遼太とも仲良くなったのだから、二人が付き合い始めることは自然な流れだったのかも知れない。
 高校生になるまで自分の気持ちを素直に伝えられず、素直になれなかった自分が悪いことは解っている。それでも彼と結ばれるのは自分だと思っていた。
 まだ付き合ったのが沙絵では無い他の人であれば、心の内を打ち明けられどんなに楽であったか。

 放課後、部活に向かう私は引き留められ、二人から報告された時に私はきっと酷い顔をしていただろう。
 初めは遼太に大事な話があると呼び出され、もしかしてと心高ぶったのに、呼び出された先には沙絵もいた。そして遼太の口から付き合い始めたと聞かされ、私の心はどん底に落とされてしまう。
 本当は直ぐにでも泣いてしまいたい気持ちだったが、少しでも祝福するために笑顔を作り続けた。それでも自分を騙し続けているので、本当に情けない顔だったと思う。

──気持ち悪い、気持ち悪い。

 私の心はどんどん荒んでいく。

 あんまり長く一緒にいると本当に泣き出してしまいそうだったので、部活に行く振りをして逃げるようにその場を立ち去った。


 高校から家への道のりは二人が帰る道でもあり、いつもの道を通ると二人が追い付いてきてしまうかも知れない。それに色々と思い出して、二人の顔が浮かぶのが今は辛く感じたので、別の道を通ることにした。
 悲しみに暮れ行く当てもなくフラフラと歩いていると、背後から涼やかな鈴の音が聞こえてくる。何だろうと思い下を見ると、そこには黒い猫が歩いていた。
 その場にしゃがみこみ呼び寄せてみるも、私のことを気にも留めずに抜き去ってしまう。

──私は猫にも好かれないのか。

 悲しみに追い討ちを掛けられたのだが、既に普段通らない道を通っていて、この道の先に何があるのか知らないので、どうせならと行く先を猫に任せることにする。人目につきたく無い私にとって、細く入り組みひっそりとした路地裏は好都合だ。
 そこは普通であれば絶対に足を踏み入れることの無い薄暗く人の気配のしない道なのだが、それでも今の自分にはピッタリであり引き返そうとは思わない。そして不思議と心が引かれるように足が進む。

 後ろを付いて行くも黒猫は気にすること無く、スタスタと歩を進めて行く。そして開けた場所に出たと思うと、猫は急に立ち止まった。
 何があるのか目線を猫から外し前を見て見ると、そこには黒いもやが立ち込めている。

「えっ……何これ」

 そう言葉を発した瞬間に、私は黒い靄に吹き飛ばされ意識を失った。
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