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side K
偽りの日々。
しおりを挟む──兄上の婚約者である、ヨフィエラへの恋慕。
それは打ち明けてはならず、そして気付かれてもならない。
ただ側にいられることだけが、唯一の幸せだった。
側に寄り添うことは叶わない。それでも義弟として力になれることは何でもするつもりだった。
「──お茶は如何ですか、ヨフィエラ様?」
王宮を訪ねてやってきたヨフィエラだが、兄上は直ぐに姿を表さずに待たされることが殆んどであった。
酷いときには忙しいからと顔も会わさずに、お帰りいただくこともあるほどだ。
「ありがとうございます、ケルビム様…………うん、美味しい」
庭でお茶を飲むヨフィエラを見て、側で一緒に過ごす口実にと必死に練習した。
今ではヨフィエラの好みがわかるほどに上達してしまったほどだ。
「……きっと、もうすぐこちらに来ると思いますよ」
幾ら自分がヨフィエラを見ていようとも、その目に写るのは自分ではない。
ただひたすらに待つしか出来ずに、ヨフィエラは物憂げな表情を見せる。
(ああ、自分だったらそんな表情にさせることはないのに……)
そっけない態度しか見せない兄上に腹が立つ。
しかしその感情すらも押し殺さなければならないのだ。
出来ることならば立場を投げうち、今すぐにヨフィエラの手を取りこの場から逃げ出したい。
けれどもそれでヨフィエラを悲しませてしまうのであれば意味がない。
自分が何より好きなのは、笑顔でいるヨフィエラなのだから。
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