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【中編】君のすべてが欲しいんだ

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「デイジー、これはなんですか?」
家政婦長はデイジーのポケットからスルスルと銀色の装飾が彫られた柄を握って取り出した。
デイジーは真っ青になって俯いた。

デイジーを陥れたジャネットはほくそ笑むのをやめられなかった。
……これで邪魔な役立たずをこの屋敷から追い出せる。
真面目で誠実なトーマスさんには、同じようにキチンと働く女性が似合うのよ。

「......やっぱり。あなたみたいな不真面目で役立たずな子、さっさと辞めればよかったのよ!トーマスさんやみんなを誑かして、いつもヘラヘラ無駄口叩いて、なのにみんなにチヤホヤされて。挙句はお嬢様やジョルジュさんの関心まで集めて、図々しい」
これでこの子は犯罪者だ。ずっと言いたかったことを言ってやれる。……
「この屋敷に役立たずの泥棒は要らない、出ていって!」

「......ジャネット、これのどこがナイフに見えますか?」
家政婦長がデイジーのポケットから抜き取ったのは、銀製の長方形のシガレットケースだった。

「随分、彼女が犯人という確信があったようですね」
ジャネットは声もなく青ざめた。
「そ、んな、はずは......」
デイジーはといえば、口を開けてポカンとしている。
「あ、あれぇ......?」

執事は片眉を上げて思案げにデイジーに問いかける。
「このシガレットケースは、デイジー、あなたのものには見えませんね? 私にはトーマスのものに見える」
「その通りです。執事さん、僕がご説明します」
トーマスが手を上げて発言した。デイジーは混乱の極みだった。舞台の中央にいるのに、蚊帳の外だ。

「まず僕が最初に目撃したのは、通りがかりにジャネットがデイジーとぶつかっていた場面です。デイジーは避けていたのですが、ジャネットが当たりに行ったように見えて、疑問に思いました」
トーマスの柔らかなテノールが説明する。誰にでもわかりやすく伝わる言葉で。
本当に頭がいい人は、難しい言葉は使わない、って誰が言ったんだっけ......とデイジーはぼんやり考えた。

「直後に僕の前まで来たジャネットが持っていた皿の数は三枚、デザートフォーク三本とナイフが二本でした。数が合わないのが気になって、ぶつかられていたデイジーに声をかけ、ポケットを探ると、これが。」

トーマスは胸の隠しからデザートナイフを取り出してみせた。
ジャネットを一瞬見ただけで、状況を理解したのだ。提督の旗を記憶したのと同じように。

「もし万が一デイジーが盗んでいたとしたら、僕にポケットを探らせるような状況は作らない。あまりにも隙だらけだ」

トーマスは冷たい目でジャネットを見下ろしながら宣言した。
「もしかすると何か企んでいるかと思って、家政婦長さんに相談して尻尾を掴ませてもらったよ、ジャネット」
「......っっ」

「この屋敷に一番必要ないのは、自分の欲のために他人を陥れる者だ。君みたいな」
容赦がない言葉で、ジャネットは泣き崩れた。ひどい、ひどいと叫んで。私あなたのために、とか何とかいう言葉が聞こえた。

デイジーはへたり込みそうになって、トーマスに支えられた。ジャネットの騒ぐ声はすでに聞こえないかのように、トーマスはデイジーの状態だけを案じていた。
「ごめん、びっくりしただろう」
「こ、怖かったぁ......」

緊張で足も指先も冷たくブルブル震えているのを、支えられた腕に縋ってどうにか宥めようとするが、うまくいかない。
目の端から涙が盛り上がってくるのも、止められなかった。
トーマスが信じてくれてたことは嬉しい。濡れ衣が晴れたことも。

しかし同時に、デイジーは傷ついていた。
悪意を抱かれ、それを本当に自分に向けて実行されたショックももちろんあるけれど、そんなものは相手の人間性の問題だ。デイジーにとっては重要ではなかった。

デイジーが引っかかっていたのはトーマスのあの甘い言葉や抱擁が計算だった、という可能性だ。ポケットを探る状況を作るために、二人きりになったの? と思うと、本気でうっとりしていた自分がバカみたいに思える。

「トーマスさん、私にキスしてくれたのって、あれ、演技だったの......?」

ダニエルや菓子室の助手を始め、デイジーを心配して取り囲んで様子を伺っていた周囲の者たちと、トーマスの目が丸くなった。ジャネットを引き起こし、詳しく事情を聞くため別室に連れて行こうとしていた執事と家政婦長の目も。

しくしく泣いているデイジーをよそに、トーマス以外の全員の目が生温かいものに変化して、トーマスに集中したあと明後日の方に向き、「さぁて、と」「お茶にしましょうか......」自分たちは関心ありませんよ、お二人でどうぞ、のポーズをとった。

菓子職人ダニエルは菓子室に走って、ポットに茶を汲み茶会のパイの残りや焼き損じを新聞紙に包んで、トーマスにジャスチャーで "あとで食いな" と伝えてテーブルに置くと、固まってくつろぎ始めた者たちの輪の中に入っていった。

トーマスは困っていたが、同時に喜びを噛み締めてもいた。可愛いデイジーが、自分の気持ちを疑うだけで傷ついて涙するほど、心を許してくれたことに。
自分の手で結って綺麗にまとめた髪を優しく何度も撫でて、トーマスはどう伝えればデイジーに自分の心が伝わるかを考えながら語りかけた。

「デイジー、あの時僕が何を考えて君を部屋に連れ込んでキスをしたかなんて、君は知らなくていいのに」
「だって私......トーマスさんみたいに頭がいい人の考えなんて、わかんない。一生懸命想像しても外れちゃうんだもん......お、教えてくれなくちゃ、わかんないっ......」

茶会が終わる前、食品庫の部屋では腕の中に収まってくれていたデイジーは、今はトーマスを拒絶するように背中を丸めて、立ちすくんだまま所在なげに震えている。

ああもう、全てを投げ打ってこの場で抱きしめて口づけてしまえたら、どんなに楽だろう。
トーマスは苦笑した。
「僕が考えてることなんて、『本当にデイジー可愛い』程度だよ......それじゃ納得できない?」
「......そう、見えない、もん」

しくしく泣いていたデイジーの涙の発作はおさまってきた。
「可愛いって......言うけど、トーマスさんはいろんなことに気が回るじゃない。私のことは、ジャネットのはかりごととかお仕事の合間の、ついでみたい。どれが一番・・か、わかんない」

ああなるほど、とトーマスは糸口が見えてきた。
元々、デイジーの ”頭の中の棚” に載せられる量は「ひとつ」だ。目の前のことに全力投球で、同時にいくつものことは考えない。そうじゃない人の考え方は理解できない子なのだ。

トーマスは、デイジーを椅子に掛けさせて、向かいに座って、ゆっくり話し始めた。
「じゃあ説明しようか。僕は君が笑って過ごせるためにどうしたらいいか、ってことをいつも考えてる」
ハンカチで涙やハナミズを拭いてやり、ダニエルのお茶をカップに注いで、デイジーの手に持たせた。手を握れない自分の代わりに冷えた指先を温めてもらうために。

「君の周りにどんな人がいて、どういう関係で、これからどんなことが起きそうか想像して、よくないことが起きそうなら、その時の立ち位置で自分にできる事を探す」
デイジーの瞬きが増えた。
「......え?」
近寄らず出来る事を探すのが愛だなんて、好きになったら一直線のデイジーにとっては想像もつかない表現だ。

「屋敷の中が平和で過ごしやすいと、君が安心できるから、目を配って仕事をする。もちろん旦那様への忠誠心も仕事への愛もあるけれど、僕の中の個人的な部分はデイジーを一番にしたがってる」

トーマスの「頭の中の棚」は仕切りがたくさんある。同時に載せられる量は膨大だ、けれどその巨大な棚のてっぺんには『デイジーのために』という名前がつけられている。

「いつも気にかけていたから、ジャネットのはかりごとはある程度予想してた。今回、君と親しい関係になったのと、僕が介入できたのがタイミング的にたまたま一緒だったっていう、それだけなんだよ」
「えぇ~......?」

トーマスの優秀さが恋愛方面に発揮され、凡人では考えがつかないような予測がなされていたことを、デイジーはここでようやく理解した。自分なんて、ジャネットの計略に気づいたのは罠にかかる直前だ。

「そもそもね、君じゃない別の子が陥れられる所だったとして、屋敷の平和のために僕が勝手に女性のポケットを探ったりすると思う? 君と触れ合えるチャンスだからこそ、ラッキーとばかりに連れ込んだに決まってるじゃないか」
「やっと、わかった。最初からそう言ってよ......」
デイジーはやっとトーマスが欲しい言葉をくれたのが嬉しくて、お茶を飲んで、にっこりした。

トーマスはデイジーの流儀が掴めて、言葉を飾らずに赤裸々に伝えることにした。
「デイジー、僕は君にいつだって触れたい。どこまでなら許されるか、距離を測るのはもうお終いにしたい。君のすべてが欲しいんだ」

今度は率直過ぎたのかデイジーは真っ赤になったけれど、拒否するそぶりは見せず、トーマスの手を握って目を閉じた。みんなが明後日の方を向いてくれていることに感謝しながら、トーマスはデイジーにキスをした。



今日は午後の遅い時間に茶会だったこともあり、当主一家の中で晩餐を摂るのは男性陣のみでいいと通達された。ソフィア夫人は美容や体型を気にしてダイエットを心がけている方なのだ。
人手は足りるため、家政婦長はデイジーに対し同僚に悪意を向けられてショックを受けているだろうから休むようにと計らってくれた。

他の者がまだ仕事をしているうちに抜けて使用人棟を歩くのは初めてだ、なんだかいつもの通り道が違う風に見えて新鮮に感じ、デイジーは緊張していた。
目の前にはトーマスの背中。デイジーはダニエルに包んでもらった念願のパイを抱え、とことこトーマスの後ろをついて行っていた。

家令や執事、近侍の部屋は個室で召使いも付いている。ゆっくり温かいお茶を飲んで、パイを食べたらいいと勧められて、トーマスの部屋へ行くことになった。下級の女中であるデイジーにとっては縁がない世界だ。

部屋に着くと、トーマスは召使いに命じて暖炉に火を入れさせた。
指示を聞いて召使いは水をポットに汲み、スキレットにパイを並べ、暖炉の脇ファイヤープレイスへ設置した。
急に冷え込んだ日の夜はなおさら寒く、部屋が暖められると安心できた。
トーマスの部屋は落ち着いた色合いの上品な調度品で調えられている。『トーマスさん』って感じの部屋だ......とデイジーは思った。

バターの良い香りが漂うのを嗅ぎウキウキしてパイを見守りながらデイジーはトーマスに尋ねた。
「トーマスさんはダニエルさんのパイ食べたことある?」
「初めてだよ。切れ端をもらったのはデイジーや普段から付き合いある階下の人たちなんじゃないかな?」
「じゃあたくさん食べてね。一緒にダニエルさんに感想を言って」

おしゃべりを楽しみながら二人でパイを味わって「ダニエルさんはさすがだ」という結論に達し、お互いの感想と美味しかった点を述べあった。召使いにもお裾分けをして、トーマスは彼を下がらせた。
「お茶のおかわりは?」
戸口から戻ったトーマスに、デイジーは無言で顔を横に振ってもう十分の意思を示した。

こんなところに来て二人きりにされて、この先に何が起こるかなんて、さすがのデイジーも教えられなきゃわからないなんてことはない。

トーマスのしっかりした手がデイジーの頬を包んで、顔が近づいてきた。
「デイジー......可愛い。君が欲しい。全部に口づけたいし、触りたい」
囁かれ、額に、頬に、まぶたに口づけられる。

私、トーマスさんのこと『地味』って思ってたんだっけ......。
近寄り難い、胡散臭い、って。
なんでそう思ってたんだろ、......こんなに、色っぽくってかっこいいのに。全然わかってない。私何にもわかってなかったんだ。

トーマスの綺麗な形をした薄めな唇が動いた。
「耳に触っても?」
「耳くらい、わざわざ聞かなくてもいいのに......、ひぁっ」
やわりと温かな手が耳介を挟み込み、触れるか触れないかの加減で指を溝に嵌めなぞってくる動きは、デイジーにとって未知の刺激だった。
トーマスの指が耳をこするだけで、ぞわ、と鳥肌が立って、なんでこんな、とデイジーは新たな疑問に頭がいっぱいになった。

「んん、ぁ、こんな、どして、聞いてない......」
「全部に触りたい、って、こういう触り方をしたい、ってことだよ?」
ぜんぶ・・・? 全部こんな風にされるの......? デイジーはもっと適当に考えていた。猫を撫でるように、よしよしされる感じだと思っていた。

トーマスはつんつんと指先で今度はデイジーの唇をつついた。
「触っても?」
さっきの繰り返しだ。今度は油断しない。
「......いいわ」
指の腹が柔らかな唇の表面をさすり、揺らして、こつりと爪が歯に当たった。

「っ!......ふ、ぅ 、ん」
長い指が歯の表面を撫でて、奥に入ってきた。
上下の歯の隙間に差し込み、曲げた指先で頬の内側をなぞる。
「あ っ......」
デイジーのおとがいが震えた。とろりと口の端から唾液が溢れたのを、トーマスの親指が掬った。
デイジーは恥ずかしさに涙目になって、指を食まされたまま、ふるふる顔を横に振る。
「全部触りたい って言っただろう? 体の内側も、"ぜんぶ" だよ」

ぬるりとデイジーの唇から抜き取った指を、トーマスは自分で舐めとった。
デイジーは、あまりの淫らさにくらくら眩暈がした。
「そんなの、したらだめ......」
「こんな事くらいで、音を上げちゃうの? まだちゃんとキスもしていない。君の内側に触れるキスをしたいのに」

トーマスの言葉は媚薬のようだ。
初心者のデイジーには効き目がありすぎて毒になりそうなほど。

「......っっ、トーマスさんは、ほんとは悪い人? 本性隠してたの? 私、恥ずかしくて死にそう」
「君を見てこんな風にすることを妄想したんだから、本当は悪いやつなのかもしれないね」

デイジーの唇に今度は指ではなく唇で触れ、ゆるく開いた唇の上下を舌でなぞり、中への侵入を果たす。
「んん......はふ」
ちゅるりと下唇を吸うと腕に縋るデイジーの指がキュウっとトーマスの服を掴んだ。
デイジーは頬を熟れた桃のように赤くさせてトーマスの与える刺激を受け入れ、徐々に反応を返すようになっている。

舌を舐めても抵抗されず、唇の隙間で可愛く喘ぐようになったデイジーを見て、トーマスは一度唇を離し椅子からデイジーを立たせると、ベッドの方へ誘導し灯りを落とした。暖炉の炎だけが室内を照らしている。

トーマスは再び口づけながらデイジーの髪を解いて、サイドテーブルにピンを置いて、サラサラの髪をほぐしながら地肌と首筋を撫で下ろした。
下ろした手の指先でつうと鎖骨をなぞられて、デイジーはビクビク背筋を反らせ、トーマスの腕の中で身を捩る。

「トーマスさ、その触りかた、だめ」
しかし続けざまにするりと襟元に指が入り、クイッと引かれて、まだこの上があると知らされる。

「全部触らせて、今度は服の下だよ」
「そんなぁ......こんな触りかたで、全部? むり。見られるのも、むり」
デイジーが処女ならではの戸惑いを見せて、トーマスはいったん先に進む手をとめることにした。

「ギブアップが早いなぁ......君のすべてが欲しいって言った時、受け入れてくれたと思ったのに」
「だって......思ってたのと違う......、それに、体......私スタイル良くないもん、こんなの見せてガッカリするんじゃないかって、怖い」

「スタイルの良さ......ってそんなに重要かな? 僕は、デイジーの肌じゃなきゃ、見たい、触りたいと思わないよ」
「ボンキュってしてスタイルいいリリーはモテるでしょ、男の人にとって大事なポイントじゃないの? 私の体、子どもみたいで......欠点ばっかりで」
デイジーには自信がなかった。
体のこともだが、トーマスが周囲から称賛される人間なのに、自分は......という思いがあるから。

出世頭だしね、真面目で誠実、モテるでしょ、彼はなんでも器用にこなす......と言われるトーマス。
アンタみたいな不真面目で役立たずな子......、ヘラヘラして、うっかり屋、と言われるデイジー。

デイジーにはわからない事がいっぱいあるけれど。
"なんで私を好きになったの?" ......これが一番わからない。

トーマスは鬱陶しくなった襟元のタイを外し、首元を緩めて、腑に落ちない表情のデイジーに対して眉を顰めて告げた。
「君に対して欠点があるなんて、僕は思わないけれど......それじゃ納得できないだろうから、言い方を変えようか」

髪を撫で、耳元をくすぐりながらトーマスはデイジーに教えた。
「見た目や性格が完璧だから......で付き合うなら、それは愛じゃないんだよ」

断定した言い方にデイジーはびっくりして、問い返した。
「......えっ? だって......、欠点はない方がいいでしょ? いい面を人は好きになるでしょ」
自分デイジーにはいい面の要素が足りないのだ。それではトーマスには釣り合いが取れないと悩んでいる。

「愛っていうのは、自分の得になる好ましい面を見たときに生まれるものじゃないよ。欠点と思えることや損になる部分こそ愛おしいと思うのが、愛なんじゃないかな? いい面を見てときめくのは当たり前だし、それはただの欲だよね」

「......!」
この時デイジーの中で、曖昧だったトーマスへの気持ち、その輪郭がくっきりと浮かび上がってきた。

私、トーマスさんが完璧な顔を見せているうちは、苦手だった。
欠点がなければ好きになるなら、完璧なトーマスさんを好きになっていたはずなのに、そうじゃなかった。

この人に欠点や弱点があれば、親近感が湧いて好きになれるのに、......って思って、ナルシストなんじゃないかとか、完全体とか。あんな言い方してトーマスさんを挑発したんだ。
怒ってくれてもいい、出来すぎた完璧紳士よりマシだって。

それにトーマスさんが優等生じゃないところを見せてくれるほど嬉しかった。
二人きりになりたくて、って仕事中に抱きしめてくれた時も。

愛されるのに、欠点があるかどうか、優れているかどうかは、関係ないんだ......

「わかった......、私、私もトーマスさんを、愛しちゃったの。」
トーマスのゆるめた首元から、鎖骨が覗いている。上下するゆっくりした動きで息遣いが見て取れる。デイジーの言葉で、息を止めたのがわかった。

「トーマスさんは、こんなお子様体型でうっかり屋で早とちりで、いっぱい説明しなきゃわからない面倒くさい私なんかを、好きになっちゃう変な人。意味わかんない。悪いこといっぱい妄想してるくせに本性隠して、虫も殺さないみたいな顔して、始まったら豹変するし」

これまではトーマスにリードされるままだったデイジーが、初めてトーマスに手を伸ばして、もう一度襟元に導いた。
「恥ずかしいけど......、私でいいなら、全部あげるから。トーマスさんも、私に全部ちょうだい」

デイジーの手は緊張で震えている。初めての経験で、トーマスのような執着が強い男の情熱を受け入れさせられる羽目になって、この先の予想ができないのだから無理もない。
「ああ......デイジー」
トーマスはデイジーの手に口づけて、きつく抱きしめ、背中に回した手で襟元をなぞった。
「続きをしても......?」
「いいわ。ぜんぶに、触って」
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