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5人目

船上

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 第6層『赫陽かくようの砂海』、砂漠が一面に広がり、太陽は地上で見るものとは比較にならないほど大きい。さらに厄介なことに砂海の名が指す通り、少しでも同じ場所に立ち止まっていれば身体が砂中に沈み始める。見た目こそ砂だが、性質はどちらかと言えば水に近い。尋常じゃなく暑い気候と、どこに行っても足場は底なし沼、みたいな感じだ。

 そんな海の上を俺たちは船で移動していた。俺の片脚を代償と使用してしまった為、ただでさえ足場が悪いこの層を歩いて移動するというのは選択肢から外された。勿論、徒歩での移動の方が戦闘時は都合がいいのだが。仕方なく俺が5レベルを使って『代償成就』で小型の魔導船を作り、それをリカの魔力で動かしている。

 魔道船といっても5レベル程度の代償だ。船室も無く、ほとんど見た目は木船と変わらない。そうなると、遮るものがなく存分に降り注ぐ太陽光がヒリヒリと俺たちの肌を焼く。体中の水分全てが熱を冷ますために汗として使用され、もうカラッカラッだった。

「あっっっつい……を完全に遮断するようなスキルは無いのか?」

 かなりのスピードが出ているため熱気が体にまとわりつくようなことは無いが、太陽光線からは避けられない。前方に砂避けの盾を張っているシズクに俺は、ダメ元でそう聞いてみる。

「物理的に塞ぐってことならあるにはあるんだけど、影って案外貴重な情報になるからさ」
「そうじゃな、いつ奴らが上から、後ろから、攻撃をしてくるか分からん以上無闇に死角を増やすのは得策とは言えんじゃろう」

 それは確かにそうか、とシズクとリカの言い分に納得する。奴ら、とはもちろんエレナとタカダのことだ。階層を移動したとはいえ、あの二人ならすぐに追いついてくるだろう。

「それで、本当に時間を取って良かったのか?」

 リカは俺の右膝から下の虚空を見つめながら聞く。
 <治癒ヒール>をもってしても俺の右脚が治らない、ということを知ったリカは魔道国の技術の粋をかき集めて義足を作ることを提案してくれた。それが、どうにもリカ本人が一度魔道国に戻ならければ、なかなか時間がかかるとのことらしい。
 だが、例え義足の作成に時間かかってもリカの戦力を失うのは避けたかった。

「リカが居ない時にエレナとタカダに襲われたら流石に対処出来ないからな」
「流石にそのリスクは重いか。仕方ないのぉ、代わりにこの場に残った分しっかり働いてやるわい」
「特に、あのエレナって女はかなりヤバいもんね」

 シズクは索敵をしつつも、苦虫を噛み潰したような表情でそう零す。
 そうなのだ。てっきり俺は、シズクならエレナ相手にでも確実にとまでは言わないがある程度の勝率はあると思っていたのだが、実際はそうでも無いらしい。というかシズクが「逃げに徹しようか」と言ったのも、直接対決は勝算が低いからであって、決して俺を気遣ったものでは無かったみたいだ。

「転生者でも無いのに、エレナはそれほど強いのか……」
「リィラ………アラクネに戦わせた時も思ったけどアレは規格外って感じ。神に愛されてるのか、神の使いに愛されてるのか」

 そこまでシズクが言うなら、エレナは相当なんだろう。それにアラクネと戦っていた頃よりも、さらに強くなっていた気もするしな。
 というか、疑問が出てきたな。思い出した、に近いが。

「アラクネは一体何なんだ? 意識ある魔族なのに、どうしてシズクに従っている?」
「あー、簡単だよ。四天王の出来損ないを倒した時に頂いた能力に配下への指揮権が含まれていただけ。リィラには私がユーラに見えているみたいだね」
「なるほどな、じゃあ今は心強い仲間って訳か」

 アラクネのリィラを知らないリカはポカンとしているが、これは結構大きな戦力になる。

 そんな話をしていると、急にシズクが険しい顔つきになった。

「前方、魔物2体!」

 シズクが叫ぶ、それとほぼ同時に砂の中から半身だけを飛び出させる巨大なミミズが2体。待ち構えるような、その片方のミミズに船は力づくに突っ込んだ。
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