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第一章 『隠された出会い』

CHAPTER.16 『嘘はいつまでも続かない』

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「なぁ? 偽物さんよ」
「……偽物って? え、何を言ってるの?」

 プロ子の言葉を無視して、誉は得意げに話を続ける。

「いやぁ、最初に会った時からさ、若干違和感は感じててん。でも、アンドロイドの表情とか正確に読み取られへんから、その時は怪しいなぁって程度」
「そんで、僕が相談を受けた。君らが出会った次の日の学校でな」

 背後から聞き覚えの無い声が聞こえ、プロ子は慌てて振り向く。そこに立っていたのは、あの日プロ子を尾行していた惣一だった。


◇◇◇


 そして話は戻る。誉とプロ子が出会った翌日へと。

「……ていうことが昨日の夜にあってん」

 休み時間、喧騒に包まれる中で誉と惣一は教室の隅に居た。

「いやいや、アホやろ。もうちょい現実味のある話してーや」

 誉の一通りの話、プロ子との出会いの話を聞いた惣一はいつもの冗談だとその話を流そうとした。しかし、いつもの冗談にしては出来が悪かった。更に、誉の表情はいつになく真剣そのもの。そこでようやく、惣一は誉の話が事実だと理解した。

「……いやほんまなんかい」
「良かった。惣一なら信じてくれると思ったで」
「いや、まあそんな顔されたらな。でも、ほんまなら、なんか怪しない? いや、ただの勘やねんけど」

 本当は、惣一には確信的に怪しいと言える根拠があった。

 そもそも未来に送還した時点で、未来に起こるその犯罪者が起こした事件は起こらなくなる。事件が起こらないなら、当然その送還された犯罪者だった者は一般人になり、本来ならば事件を起こす筈だったという罪を証明する証拠も存在しない。でもプロ子とやらを派遣した奴らはプロ子が送還した者を犯罪者として扱わざるを得ない。送り返すリスクは高すぎるし、そもそも自分達が派遣を決定した時点でその不確定さは承知していたはずだからだ。

 つまり、そのシステムではプロ子の権限が大きすぎる。これじゃ、テキトーに一般人を捕まえて未来に送還しても向こうはそれを分からない。そして恐らくだがプロ子を過去に送ったのは、犯罪者が強大化する前に捕まえるという作戦なんだろう。

 しかし、画期的にも思えるその作戦は致命的な穴を抱えている。

 それは絶対に犯罪を撲滅することは出来ないという点だ。
 そもそも、犯罪者を何人捕まえようが、そこで未来がどう変わるかは不透明だし、より危険な犯罪者が出てくる可能性も十二分にある。そうなれば、その犯罪者をまたプロ子が捕まえて、また他の犯罪者が出て、のくり返しだ。

 つまり、プロ子の任務は永遠に終わらない可能性の方が高い。

 また、もし奇跡的に犯罪者が新たに生まれなかったとして、全ての犯罪者を捕まえたとしよう。その場合、プロ子を過去に派遣するという必要性が無くなる。つまりプロ子が存在しなくなる。プロ子が存在しなければ、犯罪者は捕まっていなかったことになり、結局は未来で起こったらしい犯罪は起こることになる。

 ここまでの惣一の思考時間、約5秒。その他にも幾らでも怪しい点はあるが、誉には内容が難しすぎる為言わないことにした。

「いや、俺もそう思う。俺らの勘って外れんしな。ただなぁ、アンドロイドやから正確には表情分からんのよ」
「うーん……じゃあ取り敢えずさ。戦闘の様子だけでも撮影しよか。アンドロイドらしからぬ行動とか見せるかもやし。僕がこっそり撮影しとくわ」

 実際、未来のアンドロイドの身体機能には惣一も興味を惹かれた。

「うん、そやな。それがええわ。でさ、今日俺が捕まえるデブの方は? どう潜入すべきやろか?」
「まぁ、普通に狂人のフリをして入れてもらう。これに限るんやない?」

 惣一は潜入した後については一切心配していなかった。誉ならなんとかアドリブでやるだろう、という信頼がそこにはあったからだ。


◇◇◇


「……っていうわけ」
「……ふぅーん、初めから繋がってたんだ」

 プロ子は惣一の話を聞いて、つまらなさそうにそう言った。

「俺一人じゃ、流石に今までの作戦は立てれてないわ。ぜーんぶ惣一と二人で考えた作戦ってこと」
「そんで、僕はプロンプター、君の戦闘をずっと撮影してた。いやしっかし、驚いたなぁ。君、ひとつもデブのこと捕まえる気なんかなかったやん? 一思ひとおもいに捻り潰して食ったやろ?」

 惣一はその光景を思い出して身震いしながらそう言った。プロ子はデブの見た目をした男との戦闘時、変形した姿で圧倒したあと頭から男を食らったのだ。
 もちろん、人型のプロ子は物理的には大男を食うことなど出来ない。食事の際、プロ子は自身の口の両端からまっすぐに後頭部までを裂いた。その後、男を腕力で捻り潰して身体に入れやすくしてから、取り込んだのだった。

「そうだね、食べた。でも何なの? 結局、私の正体も分かっていない」

 そうプロ子が言い返すと、また一人別の声が発言した。

「いいえ、分かっていますよ。私は噂ぐらいには知っていたもので」
「っナキガオ!? 」

 影から出てきた予想外の人物にプロ子は驚いた。

「えぇ、こんにちはプロ子さん。おや、なんでお前が、人間の味方している? それに、いつ? とでも言いたげな顔をしていますね」
「……」

図星だったのかプロ子は黙って睨んだ。

「当たりだったようですね。いやはや、誉さんの真似ごとに過ぎないのですが……。疑問に答えてあげましょう。そうですね、あなた方が、カジノに来た時があったでしょう?そして、私が転んでデブさんを取り逃した」
「ええ、そのせいで私はわざわざ追いかける羽目になったからね」

 恨めしそうに言うプロ子にナキガオは衝撃の一言を与えた。

「アレ、わざとです」
「は?」

何を言っているのか分からない、そんなプロ子の様子を見てナキガオはカジノであったことを話し始めた。
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