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sideルーカス

23.答え合わせ。の裏側

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永遠に続くように感じた沈黙は、ノアの言葉で途切れた。

「俺も大概だとは思ったけど、お前も相当口下手だよな」

ポツンと呟く声に、俺はノアを見つめた。

「なぁ。ルーカス。何で俺があの街を出たと思ってるんだ?」

「………。俺から離れるため………か」

自分で言って、心が抉られる気がする。
ドス黒い本能が、奥底から再び囁やき出すのを必死に抑えた。

「そうなんだけど。何で離れようって思ったか、お前考えたことある?」

「………。」

――――無い。

ノアが俺から離れ行くって考えすら浮かばなかったから、何でノアが街を出たかなんて考えなかった。

「だから、口下手ってか、言葉が足りないって言ってんの」

困ったように眉を下げるノア。

「俺も悪いとは思うよ?お前に番が現れたら終わってしまう関係なのに、縋り付くようなマネしたくなくて、最後辺りは態とお前と話しをする機会を避けてたし」

自嘲するような笑いに、俺はノアに手を伸ばした。

「―――ノア?」

少し朱に染まった頬を撫でると、恐る恐るその手に触れてきた。

「俺、お前の番なの?」

「ああ」

「そっか…」

俯く動作は、俺から顔を隠すようで……。俺はどうしてもノアの顔を見たくて、顎を持ち上げて黒曜石の瞳を覗き込んだ。
ゆらりと瞳が揺れ、キレイなノアのキレイな涙が溢れた。

「何で泣くんだ…」

「…………。」

無言で泣かれると、胸が痛む。

「――――ノ…」

呼びかけようとした時、ノアが口を開いた。

「なぁ、ルーカス」

両手を俺の頬へ伸ばして、触れてくる。優しく俺を引き寄せて、そっと額を合わせてきた。

「俺、お前の事が好きだよ」

「―――っっ!!!」

目を見開く。
今、何て……?

「出会ってからそんな時間経ってない時に、もう好きだった。だから、決めてたんだよ。お前の番が見付かったら街を出ようって」

口を開くが言葉が出ない。思わずノアの両手に自分の掌を重ねた。

「ギルドでさ、ルーカスの番が見付かったって話しを聞いて、俺行かなくちゃって思ったんだ」

「何で、」

「平気な顔して、お前と番が仲良く居るのを見れる訳ないだろ」

近距離で見つめ合う。

「だから、お前から離れたんだ」

囁くような言葉に、俺は唇を噛んだ。
本当だ。お前の言うとおりだな。
俺は決定的に言葉が足りなかったんだ。
だからノアは俺の手をすり抜けて、旅立ってしまった。

「ノア、悪かった」

「うん」

小さく頷いた彼に、謝罪を込めて口付けを贈る。
軽く触れるだけの口付け。ふと柔らかいものが俺の唇に触れた。

思わず目を開くと、同じようにこちらを見つめる一対の瞳と視線が絡む。


「―――は……っ!」

我慢ができずに唇に触れてきたノアの舌を吸い上げ、絡ませ、貪るように口付けた。

「お前はっ!!煽んなよっ、怪我してんだぞ…っ!!」

「俺から欲しいって思っちゃダメな訳?」

情欲に潤む瞳で見上げられ、俺の理性は崩壊した。


弾き飛ばすような勢いでシャツのボタンを寛げて、ノアの胸に唇を滑らせる。胸にある密やかに色付くモノに舌を絡める。

「キツかったら、言え」

「…ふっ、あ………。ぁあ…っ。」

艶を帯びる声を漏らしながらコクンと頷くのを見て、俺は忙しなく指でノアの身体を辿り弄った。
時折、ぴくんっ!と跳ねる身体が愛おしい。

傷に障るだろうから優しくしようと思っても、番に触れることができる喜びが抑えきれない。


――――ああ、漸く…番を手に入れることができた………!!



結局、最後まで致しただけじゃなく、タガが外れて抑えが効かなくて。ノアが気を失うまで抱き潰してしまって、街医者にメチャクチャ怒られた。

怒られる俺を見て、ノアは真っ赤な顔でブツブツ呟いてる。

「煽った俺が悪い。俺が悪い……。悪いんだけど、加減ってモンが………」

お陰で再び熱を出してベッドの住人と化したノアを、俺は喜々として世話をする。
俺の舞い上がりっぷりに、時々ノアは恨めしげな目を向けるけど、そこは意に介するつもりはない。

俺の尻尾全開の喜び具合に、ノアも毒気を抜かれたみたいで、最近は諦め顔で俺の世話を受け入れてる。
世話のついでに、今迄のこともポツポツと話した。

ノアは概ね俺の心情は理解したみたいだけど、1つだけ納得がいかないことがあるらしい。

「はっ!?じゃ何か?俺とお前の関係って皆知ってんのかっ?」

「皆かどうかは知らんが、まぁ大抵は知ってるだろうな。マーキングしてたし、お前が番だと何人かには話したし」

俺の言葉を愕然とした顔で聞いてたノアは、その次の瞬間首まで真っ赤になって顔を覆っていた。……可愛い。

「お前、花街の女達に『大変だけど頑張れ』とか言われてなかった?」

「………っっ!!言われたけどっ!冒険者の活動の方のことかと…」


「春をひさぐ女達の頑張れって1つだけじゃん」

「!!!」

ノアは涙目になって再起不能っポイようすだ。
そんなにバレるのが恥ずかしかったのか。

可愛すぎて、堪らん。

恥ずかしくて身悶えているノアを、ゆったりと腕で囲い閉じ込める。
そっと手を添えて、顔を隠す手を外させた。

「ノア、今回のは俺の言葉が足りなかったと反省してる。だからこそ、お前に伝えときたい」

「なに?」

まだ少し耳が赤いけど、俺の話に顔を上げてくれる。

「狼族はな、一途な種族だ。つがったら死が別つまで側に寄り添うし、何なら共に死ぬことにも躊躇はしない」

真剣に伝える。大事な事だ。
ノアにも分かって欲しい。

「だから、互いの命があるのに離れるっていう事は、相手を裏切る行為だ。それは不貞と変わりがない」

見上げるノアの眦に唇を落とす。

「獣人は番が居なくなれば狂うしかない哀れな生き物だ。だから、逃げた相手を追い求めるし、追い詰めるし、食い殺す。それを獣人は誰も止めない」

俺の目には剣呑な光が宿っていたに違いない。
ノアは少し青褪めたけど、拒否することはなかった。

少し考えて、ノアは笑った。

「お前が俺を番だって言うんなら、俺は側から離れるつもりはないよ。例えお前が嫌だって言ってもね」

くすっと悪戯っぽく笑う姿に、少しくすぐったい気持ちになる。
でも、その後に僅かに思案顔をしてため息をつくノアに、抱き締めて「どうした?」と声をかけてみた

我ながら、ドロドロに甘ったるい声だと思う。
俺の声に促され、ノアは横に逸していた視線を俺に向けた。

「俺、お前との関係はセフレだって、思いは叶わないんだって思ってたんだ。……でも、叶った」

う~ん……と首を捻る。

「俺、恋愛なんて初めてだ。願いが叶って始まったモンを、皆どうやって維持してるんだろうなぁ」

困り顔のノアに胸を撃ち抜かれた!

初めての恋愛!!


くっそ可愛かわ……………っ!!!

叫び出したい気持ちを、何とか喉元に押し込む。
そしてノアの鼻の頭をちょんちょんと突き、俺に意識を向けさせた。
最高に甘いキスを贈ろう。『そんなの簡単だ。俺に甘やかされてりゃイイんだよ』と囁きながら………。



~~~END~~~


本編、完結になります。
お付き合い下さいまして、ありがとうございました!

この後は、番外編を2編UPする予定です。
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