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◆◆◆◆◆◆
「ルノー様、ギリギリです!オークションは、既に始まってますよ!」
「すまない、ブノア。遅れたが、オークションにガキを参加させたい。何とか、都合をつけてくれ。すぐに、ガキを荷馬車から降ろす。おい、タグチ手伝え!」
ここは、オークションハウスの裏手にある馬車置き場らしい。ボスがオークションハウスに着いた事を知らせてくれたが、俺にとってはどうでも良いことだった。
ゲロにまみれた俺は、疲れ果てていた。指一本も動かしたくない。おっさんの俺がこの状態だ。子供達は更にぐったりとして顔色も悪い。
子供達をオークションに出すなんて、無茶すぎるだろ?
「ボス・・諦めましょう。子供達はオークションに出せる状態ではありません。因みに、俺も動けません。ボス~助けて~」
「タグチ・・お前は、完全なる役立たずだ!もういい。お前は、ゲロまみれで荷馬車で寝てろ。ガキは俺が荷馬車から降ろす!」
ボスは俺を無視すると、子供を脇に抱えて荷馬車から次々と降ろしていった。子供達が地面に転がされていく。馬の世話を終えたジャックも現れて、子供を荷馬車から担ぎ出す。いやぁ、二人とも働き者!!
オークションハウスの経営者のブノアは、地面に転がされた子供達を見て顔をしかめた。
「汚いし、くさいし、顔色悪いし、元気皆無。これは、オークションに出しても大した値は付かないですよ、ルノー様」
「何とかならないか、ブノア?」
「全く・・貴方が、ソドムの街を支配するリハーマン家の関係者でなければ、速攻で縁を切っていますよ。分かりました。子供達の世話は、こちらでします。オークションに出せる見た目には仕上げますが、高値は保証しませんよ?」
「構わない。とにかく、全員売り切ってくれ。ガキを食わせる金がないから、売れ残りは困る。わるいな、ブノア!」
ブノアは頭を抱えながらも了承した。そのブノアの視線が、荷馬車で寝転んでいる俺に向けられた。
「ルノー様、あれは売り物ではないのですか?我がオークションハウスでは、大人もオークションの対象ですが・・どうします?」
俺はブノアの言葉に驚き、よろよろと身を起こした。そして、回避の言葉を並べ立てる。
「うおー、ちょっと待って下さい。こんなゲロおっさんをオークションに掛けるなんて、お客様に対して失礼に当たります。ボスー、何を迷っているのですか!俺は逃げ出した子供を捕まえた功労者であって、奴隷ではありません!」
「ん、王都出身者ですか?ずいぶんと綺麗な発音ですね。王都に憧れを持つ客は多い。綺麗な発音で話すだけで、容姿のマイナスは帳消しになりますよ!」
容姿のマイナスとは失礼な。刑務所では人気者だったぞ・・女役として。うう、嫌な記憶だ。そう思っていると、ボスが荷馬車に乗り込み俺を担ぎ上げた。
「俺を売るのか、ボス?」
「お前は、一応は俺の部下だ。使えない部下だが、売りには出さない。第一、ガキを売った金で、礼金を渡す約束になっていただろ?」
「奴隷商人が律儀だ・・不気味だ」
「とにかく、てめえは臭すぎる。今から、宿屋に行く。ジャック、行くぞ」
「はい、ボス」
「ルノー様、宿屋ならこちらで手配します」
「ブノアが用意する宿屋は高級すぎる。金がないと言っているだろ?」
「ルノー様、そろそろリハーマン家にお戻りになっては如何ですか?当主がルノー様を心配なさっておいでだと聞き及んでおります」
ボスは俺を担ぎ上げたまま、少し笑ってブノアの問いにおうじる。
「リシャールが、元気にやっているならそれでいい。リハーマン家は代々、優秀な奴隷を養子とし、教育して当主としてきた。義理の弟のリシャールは優秀な奴だ。親父の実の息子の俺は、リハーマン家では異物だ。俺は、あの家には馴染めなかった。それだけだ。じゃあ、オークションの結果を楽しみにしているぞ、ブノア?」
「承知しました、ルノー様」
俺は黙って、二人のやり取りを聞いていた。どうやら、ボスの実家はソドムの街の実力者らしい。これは良いことを聞いた。食うに困ったら、ボスの名前を出して飯をおごって貰おう。
「何をにやけている」
「いえ、何でもないですよ。それより、金が入ったら風俗店に駆け込むので、いい女がいる店を教えて下さいよ、ボス~」
俺の質問に答えてくれたのは、ジャックだった。奴はしげしげと俺の顔を見た後にいい放った。
「ソドムは男色の街だ。女は全く存在しない。元々、男しか入れない街だから当然だな」
「えぇ!?」
「因みに、国中探しても、女の風俗店など存在しない。女は穢れた存在だから、適齢期になるまで教会が管理し教育を施す。女を抱きたければ、教会に代金を支払って、女を妻として娶れ」
「嘘だろ?快楽と悦楽の街に女がいない?」
俺がダメージを受けているのに、今度はボスが追い討ちを掛けてきた。
「まあ、ゴモラの街なら、女を抱けるかもな。俺の母親は、親父に拾われるまでゴモラの街に隠れ住んでいた。ゴモラは、教会や夫から逃げ出した女達が集まり自然に出来た街だ。貧困から、体を売る女も多い。だが、ゴモラの街は、性病と流行り病が蔓延している。行くなら死ぬ気で行け、タグチ」
「何だ、この世界は!女の風俗店が一軒もないとは、世の中腐ってやがる!」
俺はボスに担がれながら、悔し涙を流していた。最悪の異世界に来てしまった!
「女を抱かせろーーー!」
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「ルノー様、ギリギリです!オークションは、既に始まってますよ!」
「すまない、ブノア。遅れたが、オークションにガキを参加させたい。何とか、都合をつけてくれ。すぐに、ガキを荷馬車から降ろす。おい、タグチ手伝え!」
ここは、オークションハウスの裏手にある馬車置き場らしい。ボスがオークションハウスに着いた事を知らせてくれたが、俺にとってはどうでも良いことだった。
ゲロにまみれた俺は、疲れ果てていた。指一本も動かしたくない。おっさんの俺がこの状態だ。子供達は更にぐったりとして顔色も悪い。
子供達をオークションに出すなんて、無茶すぎるだろ?
「ボス・・諦めましょう。子供達はオークションに出せる状態ではありません。因みに、俺も動けません。ボス~助けて~」
「タグチ・・お前は、完全なる役立たずだ!もういい。お前は、ゲロまみれで荷馬車で寝てろ。ガキは俺が荷馬車から降ろす!」
ボスは俺を無視すると、子供を脇に抱えて荷馬車から次々と降ろしていった。子供達が地面に転がされていく。馬の世話を終えたジャックも現れて、子供を荷馬車から担ぎ出す。いやぁ、二人とも働き者!!
オークションハウスの経営者のブノアは、地面に転がされた子供達を見て顔をしかめた。
「汚いし、くさいし、顔色悪いし、元気皆無。これは、オークションに出しても大した値は付かないですよ、ルノー様」
「何とかならないか、ブノア?」
「全く・・貴方が、ソドムの街を支配するリハーマン家の関係者でなければ、速攻で縁を切っていますよ。分かりました。子供達の世話は、こちらでします。オークションに出せる見た目には仕上げますが、高値は保証しませんよ?」
「構わない。とにかく、全員売り切ってくれ。ガキを食わせる金がないから、売れ残りは困る。わるいな、ブノア!」
ブノアは頭を抱えながらも了承した。そのブノアの視線が、荷馬車で寝転んでいる俺に向けられた。
「ルノー様、あれは売り物ではないのですか?我がオークションハウスでは、大人もオークションの対象ですが・・どうします?」
俺はブノアの言葉に驚き、よろよろと身を起こした。そして、回避の言葉を並べ立てる。
「うおー、ちょっと待って下さい。こんなゲロおっさんをオークションに掛けるなんて、お客様に対して失礼に当たります。ボスー、何を迷っているのですか!俺は逃げ出した子供を捕まえた功労者であって、奴隷ではありません!」
「ん、王都出身者ですか?ずいぶんと綺麗な発音ですね。王都に憧れを持つ客は多い。綺麗な発音で話すだけで、容姿のマイナスは帳消しになりますよ!」
容姿のマイナスとは失礼な。刑務所では人気者だったぞ・・女役として。うう、嫌な記憶だ。そう思っていると、ボスが荷馬車に乗り込み俺を担ぎ上げた。
「俺を売るのか、ボス?」
「お前は、一応は俺の部下だ。使えない部下だが、売りには出さない。第一、ガキを売った金で、礼金を渡す約束になっていただろ?」
「奴隷商人が律儀だ・・不気味だ」
「とにかく、てめえは臭すぎる。今から、宿屋に行く。ジャック、行くぞ」
「はい、ボス」
「ルノー様、宿屋ならこちらで手配します」
「ブノアが用意する宿屋は高級すぎる。金がないと言っているだろ?」
「ルノー様、そろそろリハーマン家にお戻りになっては如何ですか?当主がルノー様を心配なさっておいでだと聞き及んでおります」
ボスは俺を担ぎ上げたまま、少し笑ってブノアの問いにおうじる。
「リシャールが、元気にやっているならそれでいい。リハーマン家は代々、優秀な奴隷を養子とし、教育して当主としてきた。義理の弟のリシャールは優秀な奴だ。親父の実の息子の俺は、リハーマン家では異物だ。俺は、あの家には馴染めなかった。それだけだ。じゃあ、オークションの結果を楽しみにしているぞ、ブノア?」
「承知しました、ルノー様」
俺は黙って、二人のやり取りを聞いていた。どうやら、ボスの実家はソドムの街の実力者らしい。これは良いことを聞いた。食うに困ったら、ボスの名前を出して飯をおごって貰おう。
「何をにやけている」
「いえ、何でもないですよ。それより、金が入ったら風俗店に駆け込むので、いい女がいる店を教えて下さいよ、ボス~」
俺の質問に答えてくれたのは、ジャックだった。奴はしげしげと俺の顔を見た後にいい放った。
「ソドムは男色の街だ。女は全く存在しない。元々、男しか入れない街だから当然だな」
「えぇ!?」
「因みに、国中探しても、女の風俗店など存在しない。女は穢れた存在だから、適齢期になるまで教会が管理し教育を施す。女を抱きたければ、教会に代金を支払って、女を妻として娶れ」
「嘘だろ?快楽と悦楽の街に女がいない?」
俺がダメージを受けているのに、今度はボスが追い討ちを掛けてきた。
「まあ、ゴモラの街なら、女を抱けるかもな。俺の母親は、親父に拾われるまでゴモラの街に隠れ住んでいた。ゴモラは、教会や夫から逃げ出した女達が集まり自然に出来た街だ。貧困から、体を売る女も多い。だが、ゴモラの街は、性病と流行り病が蔓延している。行くなら死ぬ気で行け、タグチ」
「何だ、この世界は!女の風俗店が一軒もないとは、世の中腐ってやがる!」
俺はボスに担がれながら、悔し涙を流していた。最悪の異世界に来てしまった!
「女を抱かせろーーー!」
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