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子供を四人も抱いた男は、ずかずかと森の中を歩いて行く。男は時々立ち止まると、折れた枝の方向を確認している。そして、また男は歩き出す。

「なぁ、悪いけどもう少しゆっくり歩いてくれないかな?子供を抱っこして森を歩くのは、俺には難しい」

「あぁ?お前は、ガキを一人抱えて歩くだけで泣き言かよ?これだから、王都育ちは役に立たない」

「待ってよ。俺は今すごく役に立っている筈だけど?それより、王都育ちとは、どういう意味ですか?」

男は僅かに振り返って俺を見た。俺は子供を抱えて、息を切らせていた。太ももも、ガクガクしている。男は俺の状態を見て、深い溜め息をついた。

「もうすぐ森から抜ける。礼はするから、歩くスピードは落とすな。そのガキは上玉だ。逃がさずに済んで助かった。あんたには感謝している」

「人拐いが、礼儀正しい。何気に怖い」

俺の言葉に、男は不快そうに顔を歪めた。そして、俺に向かって言葉を吐き出した。

「俺は人拐いじゃない!奴隷商人だ!お前が抱いてるガキも、親から買い取った。そいつのがめつい親に、大金をむしりとられた。だから、そいつに逃げられると、赤字になるんだよ!これは、正当な商売だ。勘違いするな!」

「嘘だっ!僕が親に売られる訳がない!」
「うわ、暴れないで!」

男の言葉に反応を示し、子供が暴れだした。俺は耐えきれずに、地面に転んでしまった。しかも、子供が逃げ出そうと、俺の頭を叩きまくる。

「うわ、痛いってば!」
「おっさん、離せ、このやろう!」

おじさんから、おっさんにランクダウンしてしまった。俺は深い息を吐き出すと、子供に頭突きを食らわせた。

「いたーい!」

「俺も痛かった!ねえ、大人しくした方がいいと思うよ?奴隷商人さんが、すごく苛ついてるから。後で、殴られるかもしれないよ?」

「でも、僕は『ソドムの街』には行きたくない。二度と出られない場所だと、人拐いが言ってた!嫌だよ、嫌だ!」

「『ソドムの街』?」

「おい、早く立て。ソドムの街は、快楽と悦楽の街だ。だから、昼も夜も関係なく門は開きっぱなしだ。だが、俺にも都合がある。今日中にソドムに着いて、ガキどもを捌きたい」

「悦楽と快楽の街~!?何それ!めちゃくちゃ、行きたいんだけど!女を抱きたい!」

「・・お前?発音が綺麗だから、王都出身だと思っていたが違うのか?頭は悪くは無さそうだが、無知が過ぎるぞ。長く監禁でもされていたのか?」

「発音?」

そういえば、異世界転移なのに、こちらの言葉を完全にマスターしている。俺は天才か!まあ、そんな筈はないだろうから、異世界ものに良くあるチートだな。

だが、魔法や体力強化を使える気配はない。何故なら、森を歩くだけでヘロヘロ状態だからだ。チートな体力は、期待出来そうにない。

「王都出身ではないよ?でも、発音が綺麗なら、問題ないのでは?それと、確かに監禁はされていた。今日、ようやく解放されて・・森の中に放り出されてしまった」

俺は子供を抱き直して、立ち上がった。刑務所に入っていたから、国家による監禁には違いない。何故か、逮捕されて自白させられた。冤罪なんだけどなぁ。世は理不尽だ!

「行く場所がないなら、俺が雇ってやる。ちょうど、ガキの世話をしていた奴が死んで、人手が不足していたところだ。給金は安いが、飯つきだ。どうだ?」

「選択の余地はないね!雇ってよ。今から、快楽と悦楽の街に行くんだろ?俺は女を抱ければ大満足だ。15年監禁されていたからな。さすがに、女の肌に触れたい。楽しみ!」

男は嗤いを浮かべると、俺に問いかけてきた。

「名前はなんだ?」
「あんたは?」
「雇い主に先に名乗らせるのか?」
「いいだろ?」

「ルノー = リハーマンだ」
「田口誠」
「タグチマコト?変な名前だな」

「親しい人は、マコトと呼ぶ。親しくない人は、タグチと呼ぶ。ルノーは、タグチと呼んでくれ」

「俺の事を名前で呼ぶな。おかしいだろ、お前?仲間にはボスと呼ばれている。そう呼べ」

「了解です、ボス!」

互いに、抱いた子供は泣きっぱなしだった。だが、無事に互いの名前のやり取りは完了した。

さあ、快楽と悦楽の街『ソドム』に向かおう!女を抱きまくる!


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