4 / 11
弟が洗脳されている
しおりを挟む
◆◆◆◆
もはや、疑いようもない。
弟のラルフは完全に変態伯爵に洗脳されている。牢獄にぶちこまれた変態をいまだに父上と呼び、差し入れさえしようとしている。
「くっ、何てことだ!」
「ハロルド兄上?」
おもわず心の声が言葉に出てしました。仕事ならばトラブルに見舞われても冷静にいられるのに・・やはり、身内の事になると冷静ではいられない。
「いや、何でもないよ。ラルフ、スコーンもお食べ」
「はい、兄上」
ラルフが可愛らしい笑顔でスコーンを手に取ると、パクリと食べた。その姿があまりに愛らしく、俺はにやにやしてしまった。そんな俺と目が合うと、ラルフは俯いてしまう。
「ハロルド兄上。そんなに見つめられたら、恥ずかしくて食べられません」
「そ、そうか。すまない」
俺は紅茶を口に含み心を落ち着かせた。兄弟として過ごした時間が短いだけに、ラルフとどう接するべきか戸惑う。
それにしても、これ程美味しそうにお菓子を食べる様子を見るに・・伯爵家では大したものを食べさせて貰っていなかったに違いない。
先ほど、ラルフはコーヒーを飲み不味かったと言っていた。だが、王太子殿下はコーヒーを旨い飲み物だと仰っていた。俺は飲んでいないので正確な判断は下せないが、変態伯爵より殿下の言葉を優先する。
大体、王族の殿下でさえ一度きりしか飲んでいない貴重な品だ。それを、伯爵が頻繁に飲んでいたとの話も疑わしい。
おそらく、変態伯爵が飲んでいたものは、黒色の怪しげな液体だったに違いない。そんな危険物をラルフに飲ませるなど、伯爵は死に値する罪を犯している!
「ブラグデン家の現在の繁栄が、ラルフの犠牲の元に成り立っていると思うと・・俺はとても辛い。これからは、ラルフには自由に生きて欲しい。その為ならば、いくらでも資金はだす。将来の目標などはあるかい、ラルフ?」
「ブラグデン家の繁栄は、ハロルド兄上の努力の賜物です。伯爵家での暮らしは、僕にとっては恵まれたものでした。きっと、兄上の方がずっと苦労されてこられたはずです。むしろ、兄上の方がブラグデン家の繁栄の為に様々な事を犠牲にされてきたのだとお察しします」
ラルフの気遣いの言葉に、胸が潰れそうになる。きっと、伯爵家では肩身の狭い思いをして、常に変態の顔色を伺い生活していたに違いない。
それにしても、あの変態伯爵め!
なぜ、処刑されなかった。領地の民のごりマッチョを地下に閉じ込めて性奴隷に調教した上で、魔方陣の上で情交をさせて淫紋の開発に勤しんでいたと聞く。
とんでもない変態野郎だ!
ただひとつの救いは細身のラルフが、変態野郎の好みではなかった事ぐらいだ。もしも、ラルフがごりマッチョか細マッチョなら、変態伯爵の餌食になっていたに違いない。
いや、待て!
もしも、ラルフが着痩せするタイプならどうする?ラルフがもしも細マッチョなら、すでに伯爵の毒牙に掛かっている可能性がある。
何てことだ!
俺は弟の裸体を知らねばならない。細マッチョなのか、ほっそり体型なのか、確認が必要だ!
「あー、ラルフ」
「はい、兄上」
「我々は離ればなれに過ごした時間が長い。その時間を埋める為に、東洋の知恵を利用してはどうかと思ったのだが、どうだろうか?」
「東洋の知恵と申しますと?」
「裸の付き合いというものだ」
「はい!?」
「裸の付き合いをすると、心が穏やかになり互いに本音を語り合えるらしい。ついては、この兄と湯浴みを共にしてはどうだろうか、ラルフ?」
「ええっ!?」
ラルフが手からポロリとスコーンを落とした。
◆◆◆◆◆
もはや、疑いようもない。
弟のラルフは完全に変態伯爵に洗脳されている。牢獄にぶちこまれた変態をいまだに父上と呼び、差し入れさえしようとしている。
「くっ、何てことだ!」
「ハロルド兄上?」
おもわず心の声が言葉に出てしました。仕事ならばトラブルに見舞われても冷静にいられるのに・・やはり、身内の事になると冷静ではいられない。
「いや、何でもないよ。ラルフ、スコーンもお食べ」
「はい、兄上」
ラルフが可愛らしい笑顔でスコーンを手に取ると、パクリと食べた。その姿があまりに愛らしく、俺はにやにやしてしまった。そんな俺と目が合うと、ラルフは俯いてしまう。
「ハロルド兄上。そんなに見つめられたら、恥ずかしくて食べられません」
「そ、そうか。すまない」
俺は紅茶を口に含み心を落ち着かせた。兄弟として過ごした時間が短いだけに、ラルフとどう接するべきか戸惑う。
それにしても、これ程美味しそうにお菓子を食べる様子を見るに・・伯爵家では大したものを食べさせて貰っていなかったに違いない。
先ほど、ラルフはコーヒーを飲み不味かったと言っていた。だが、王太子殿下はコーヒーを旨い飲み物だと仰っていた。俺は飲んでいないので正確な判断は下せないが、変態伯爵より殿下の言葉を優先する。
大体、王族の殿下でさえ一度きりしか飲んでいない貴重な品だ。それを、伯爵が頻繁に飲んでいたとの話も疑わしい。
おそらく、変態伯爵が飲んでいたものは、黒色の怪しげな液体だったに違いない。そんな危険物をラルフに飲ませるなど、伯爵は死に値する罪を犯している!
「ブラグデン家の現在の繁栄が、ラルフの犠牲の元に成り立っていると思うと・・俺はとても辛い。これからは、ラルフには自由に生きて欲しい。その為ならば、いくらでも資金はだす。将来の目標などはあるかい、ラルフ?」
「ブラグデン家の繁栄は、ハロルド兄上の努力の賜物です。伯爵家での暮らしは、僕にとっては恵まれたものでした。きっと、兄上の方がずっと苦労されてこられたはずです。むしろ、兄上の方がブラグデン家の繁栄の為に様々な事を犠牲にされてきたのだとお察しします」
ラルフの気遣いの言葉に、胸が潰れそうになる。きっと、伯爵家では肩身の狭い思いをして、常に変態の顔色を伺い生活していたに違いない。
それにしても、あの変態伯爵め!
なぜ、処刑されなかった。領地の民のごりマッチョを地下に閉じ込めて性奴隷に調教した上で、魔方陣の上で情交をさせて淫紋の開発に勤しんでいたと聞く。
とんでもない変態野郎だ!
ただひとつの救いは細身のラルフが、変態野郎の好みではなかった事ぐらいだ。もしも、ラルフがごりマッチョか細マッチョなら、変態伯爵の餌食になっていたに違いない。
いや、待て!
もしも、ラルフが着痩せするタイプならどうする?ラルフがもしも細マッチョなら、すでに伯爵の毒牙に掛かっている可能性がある。
何てことだ!
俺は弟の裸体を知らねばならない。細マッチョなのか、ほっそり体型なのか、確認が必要だ!
「あー、ラルフ」
「はい、兄上」
「我々は離ればなれに過ごした時間が長い。その時間を埋める為に、東洋の知恵を利用してはどうかと思ったのだが、どうだろうか?」
「東洋の知恵と申しますと?」
「裸の付き合いというものだ」
「はい!?」
「裸の付き合いをすると、心が穏やかになり互いに本音を語り合えるらしい。ついては、この兄と湯浴みを共にしてはどうだろうか、ラルフ?」
「ええっ!?」
ラルフが手からポロリとスコーンを落とした。
◆◆◆◆◆
4
お気に入りに追加
285
あなたにおすすめの小説
平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。
なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。
そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。
そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。
クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。
底知れぬ深い沼の底
春山ひろ
BL
俺の姉ちゃんが結婚するらしい。らしいというのは、その彼氏を家に連れてきて紹介してくれたからだ。彼氏はイケメン、高身長で職業は弁護士だ。まったく姉ちゃんの未来は明るい。そう思っていたのに、なんでこうなった?!イケメン・俺様・職業弁護士×高校生。長くなりましたので、前編と後編に分けました。R指定しておりますが、軽いです。R指定は保険です。
寝込みを襲われて、快楽堕ち♡
すももゆず
BL
R18短編です。
とある夜に目を覚ましたら、寝込みを襲われていた。
2022.10.2 追記
完結の予定でしたが、続きができたので公開しました。たくさん読んでいただいてありがとうございます。
更新頻度は遅めですが、もう少し続けられそうなので連載中のままにさせていただきます。
※pixiv、ムーンライトノベルズ(1話のみ)でも公開中。
騎士は愛を束ね、運命のオメガへと跪く
夕凪
BL
サーリーク王国郊外の村で暮らすエミールは、盗賊団に襲われた際にオメガ性が顕現し、ヒートを起こしてしまう。
オメガの匂いに煽られた男たちに体を奪われそうになったとき、狼のように凛々しいひとりの騎士が駆け付けてきた。
騎士の名は、クラウス。サーリーク王国の第二王子であり、騎士団の小隊長でもあるクラウスに保護されたエミールは、そのまま王城へと連れて来られるが……。
クラウスとともに過ごすことを選んだエミールは、やがて王城内で湧き起こる陰謀の渦に巻き込まれてゆく。
『溺愛アルファの完璧なる巣作り』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/26677390)スピンオフ。
騎士に全霊で愛されるオメガの物語。
(スピンオフにはなりますが、完全に独立した話ですので前作を未読でも問題ありません)
完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。
結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに
「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……
前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです
珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。
老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。
そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。
「こんな横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で横取り女の被害に遭ったけど、新しい婚約者が最高すぎた。
古森きり
恋愛
SNSで見かけるいわゆる『女性向けザマア』のマンガを見ながら「こんな典型的な横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で貧乏令嬢になったら典型的な横取り女の被害に遭う。
まあ、婚約者が前世と同じ性別なので無理~と思ってたから別にこのまま独身でいいや~と呑気に思っていた俺だが、新しい婚約者は心が男の俺も惚れちゃう超エリートイケメン。
ああ、俺……この人の子どもなら産みたい、かも。
ノベプラに読み直しナッシング書き溜め中。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ベリカフェ、魔法iらんどに掲載予定。
記憶を持ったままどこかの国の令嬢になった
さこの
恋愛
「このマンガ面白いんだよ。見て」
友人に言われてマンガをダウンロードして大人しく読んだ。
「君はないね。尻軽女にエルマンは似合わないよ」
どこぞの国の物語でのお見合い話から始まっていた。今はやりの異世界の物語。年頃にして高校生くらいなんだけど異世界の住人は見るからに大人っぽい。
「尻軽ですって!」
「尻軽だろう? 俺が声をかけるとすぐに付いてくるような女だ。エルマンの事だけを見てくれる女じゃないと俺は認めない」
「イケメンだからって調子に乗っているんじゃないでしょうね! エルマン様! この男は言葉巧みに私を連れ出したんですよ!」
えっと、お見合い相手はエルマンって人なんだよね? なんで一言も発さないのよ!それに対して罵り合う2人。
「もういい。貴女とは縁がなかったみたいだ。失礼」
冷酷な視線を令嬢に向けるとエルマンはその場を去る。はぁ? 見合い相手の女にこんな冷たい態度を取るなら初めから見合いなんてするなっての! もう一人の男もわざとこの令嬢に手を出したって事!? この男とエルマンの関係性がわからないけれど、なんとなく顔も似ているし名前も似ている。最低な男だわ。と少し腹がたって、寝酒用のワインを飲んで寝落ちしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる