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魔王城の屋根を吹き飛ばす奴なんて、勇者のライヒアルト = ネアリンガーだけだろう。闇堕ち確定の勇者であり、能力規格外の勇者。

俺の前世の知識に誤りがなければ、今世はBLゲーム『☆カミングアウト☆』の世界が始まる以前の世界に違いない。

ゲームの本筋は、闇堕ちした勇者ライヒアルトが、世界を破壊し尽くした後から始まる。

女性が激減した世界で、生き残った男たちが、苦難を乗り越え、新たな国を作り上げていくBLゲーム。それが『☆カミングアウト☆』の世界である。勿論、BL18禁ゲームの為、男性たちのあれこれを楽しめる。魔法により、妊娠可能な世界観で、まさにファンタジー盛り盛りの世界である。

「他の勇者は闇討ちで殺す父上が、どうして勇者のライヒアルト = ネアリンガーとは真っ正面から戦うのでしょうか?今回は、魔王城の屋根まで壊れてしまったではないですか。父上の気まぐれには付き合いきれません!」

俺がそう言うと、ニコラウス兄上は笑って答えた。

「父上は、ライヒアルトが気に入っているようだよ。奴を闇堕ちさせて、配下とするつもりかもしれないね」

その行為が、世界の破滅に繋がるのだが、まあ人間が生き残るなら半魔人の俺たちもギリで生き残れると信じよう。

「兄上、そろそろ地上に降りませんか?上空を飛んでいては、父上の配下に見つかる可能性があります」

「そうだが、まだ魔界の森の上空だぞ?魔力のないお前が万一にでもはぐれたら、命が危うい」

「そうですが、ニコラウス兄上ならば、私を守って下さるでしょ?」

「まあね。では、降りるか」

兄上は黒い羽を体内に戻しながら、急降下を始めた。俺は慌てて、ニコラウス兄上にきつく抱きつく。眼下の森がどんどん近付いてくる。森の木々に突入する直前に、兄上は魔力で周囲に結界を作った。そして、緩やかに木々の隙間を抜けて、森の中に着地した。

「ふひゃー、空の旅は私には不向きです」

「ゆっくりと飛んだつもりだが、駄目だったか、イサベラ?」

父上は魔王。
名は、オトフリート = プフリューガー。

兄上とは母が違うだけ。兄上の母親は農婦。俺の母親は王族の娘で、魔素の扱いに秀でた聖女であった。共に、父上により拐われ、交わった結果、子が産まれた。人間界では、随分と身分が違う間柄だったらしいが、二人はとても仲が良かった。だけど、共に、魔界の風に馴染めず早世してしまった。

「どうして、俺は聖女の子なのに僅かしか魔力がないのかな?これでは自分で身を守ることすら叶わないよ」

俺は魔界の森の土を踏みしめながら、愚痴をこぼした。

「イザベラの場合は、聖女の力と魔王の魔力を引き継いだ結果、相殺されてしまったのだろうな。それよりも、さっきから女の悲鳴が聞こえて、こちらに迫って来るのだがどうすべきかな?」

「え、そうなの?女って、人間?魔王城に近い森に人間がいるとは思えないけど・・勇者の仲間かな?」

「ふむ、ならば殺すか」

「いや、いや、待ってよ。兄上、これはチャンスです。勇者の仲間を救い恩を売って、人間界に共に向かうというのはどうですか?それに、ニコラウス兄上は、俺を伴侶とするのが嫌だから、魔王城から家出したのでしょ?人間の女と知り合うチャンスですよ、兄上!」

「いや、俺はイザベラを伴侶として迎えることに抵抗はない。だが、イザベラはどうだ?お前は、男に挿入されるのは抵抗があるだろ?今まで、一度として体を許していない事から、俺はそう判断したのだが?人間界は魔界と違い、女が存在する。魔界人の様に皆がにょきにょき、あれが生えている訳ではないらしいからな」

「そうですねえ。俺の場合はあそこが小さいから、魔界人は勝手に牝扱いするけど・・人間界なら、挿入可能かも。男扱いされるかな?ふむ、少し頑張ろうかな」

「では、女を救うとするか」
「はい、兄上!」


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