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第161話
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◆◆◆◆◆◆
僕がキリトを渋々友人として受け入れたことは、母にもわかっているはずだ。
それでも、楽観主義的なローズ母さんはいずれキリトが僕にとってかけがえのない友人になると思っているようだった。そんなことはありえないことだと僕は思ったが、あえて口には出さなかった。
というより、口に出す前にローズ母さんが爆弾発言をして僕の言葉を奪ってしまったからだ。
「さて、それとラインハルト・・・あなたに話しておかないといけないことがあるの。王宮の決まりで、王が14歳になると、母親が息子の性教育を取り仕切ることになるらしいの。で・・・性教育を行うにあたって、・・・親子二人じゃ気まずいでしょ?だから、キリト君をあなたの学友として共に教育を受けてもらうことにしたから。二人とも仲良くやってちょうだいね。」
「っ!?」
僕が母の言葉に愕然としていると、ローズ母さんも照れくさそうに頬を赤めて口を開いた。
「わ、私だって・・・息子の性教育の先生なんて嫌なんだよ。でも、王宮の決まりらしいから、そのあたりは割り切るしかないわ。王にとって、早く世継ぎをつくって国の基盤を安定させるのは大切な義務なんだって。まぁ。そういうことだからよろしくね、ラインハルト。それと、キリト君も。」
母が突然僕に友人を作らせようとしたのには、こんな理由があったのかとようやく納得がいった。僕に元々友人がいたのならその人物を学友として性教育の場に同席させるつもりだったのだろう。
でも、僕の周りには友達は一人もいずローズ母さんは悩んだ末にキリトを無理やり僕の友人としたのだろう。
そう考えるとキリトにとっても大いに迷惑な話だろうと思ったが、彼の顔をちらっと見たが少しも動揺している様子はなかった。不審に思ったが、すぐに合点がいった。彼は、母からすでにこの事を聞いていたのだろう。
母が、僕よりも先にキリトに性教育の話をしていたと思うと無性に腹が立ってきた。僕は苛立ちを隠すことなく、キリトにきつい口調で問いかけた。
「キリト、お前はこの件・・・性教育のことを母から事前に聞いていたのか?」
そうすると、キリトは申し訳なさそうな表情をして僕に頭を下げて口を開いた。
「申し訳ございません。ローズ様から、その事は事前に知らされておりました。身分違いで、とてもお受けできないと一度はお断りしたのですが・・・同世代のご友人が王様の周囲にはいらっしゃらないとのことでしたのであつかましいとは思いましたが、申し出をお受けしました。」
「ああ、お前の言うとおり。庭師のお前が僕の学友などと・・・まったくの身分違いだな。お前は断るべきだった。」
「申し訳ございません・・・」
「もう!!ラインハルトったら、なんてことを言うの。キリト君を自分の苛立ちの捌け口にするなんて私が許さないんだから!!」
俯いて謝ったキリトの前に、ローズ母さんは彼を庇うように立ちはだかり僕を叱りつけた。
王の僕を叱りつける人間など、この世に母以外存在しない。
母は僕にとって特別な存在。
その母が、僕と同じ歳の男を庇う。その事実が僕をさらに苛立たせ、同時に切なさで胸がつぶれそうだった。
美しいまま時を止めてしまった母を、僕は血が繋がっているという理由だけで手にすることができない。どんなものでも手に入れられる王が、一番欲しいものに触れることさえ許されない。
その事実は、苦痛でしかなかった。
そんな苦しさを抱えたまま、キリトと共にローズ母さんの性教育を受けることになるなんて、僕には耐え難かった。
胸が苦しかった。
このまま母さんのそばにいたら、いつか僕は本当に許されないことをしてしまうかもしれない。
誰もが救われない・・・そんな結果をもたらしてしまうかもしれない。
僕は、何の為に生まれてきたのだろう?
誰かを幸せにし、愛する為に生まれてきたのではないのだろうか?
最愛の人を傷つけようとしている僕に、生きる意味はあるのだろうか?
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僕がキリトを渋々友人として受け入れたことは、母にもわかっているはずだ。
それでも、楽観主義的なローズ母さんはいずれキリトが僕にとってかけがえのない友人になると思っているようだった。そんなことはありえないことだと僕は思ったが、あえて口には出さなかった。
というより、口に出す前にローズ母さんが爆弾発言をして僕の言葉を奪ってしまったからだ。
「さて、それとラインハルト・・・あなたに話しておかないといけないことがあるの。王宮の決まりで、王が14歳になると、母親が息子の性教育を取り仕切ることになるらしいの。で・・・性教育を行うにあたって、・・・親子二人じゃ気まずいでしょ?だから、キリト君をあなたの学友として共に教育を受けてもらうことにしたから。二人とも仲良くやってちょうだいね。」
「っ!?」
僕が母の言葉に愕然としていると、ローズ母さんも照れくさそうに頬を赤めて口を開いた。
「わ、私だって・・・息子の性教育の先生なんて嫌なんだよ。でも、王宮の決まりらしいから、そのあたりは割り切るしかないわ。王にとって、早く世継ぎをつくって国の基盤を安定させるのは大切な義務なんだって。まぁ。そういうことだからよろしくね、ラインハルト。それと、キリト君も。」
母が突然僕に友人を作らせようとしたのには、こんな理由があったのかとようやく納得がいった。僕に元々友人がいたのならその人物を学友として性教育の場に同席させるつもりだったのだろう。
でも、僕の周りには友達は一人もいずローズ母さんは悩んだ末にキリトを無理やり僕の友人としたのだろう。
そう考えるとキリトにとっても大いに迷惑な話だろうと思ったが、彼の顔をちらっと見たが少しも動揺している様子はなかった。不審に思ったが、すぐに合点がいった。彼は、母からすでにこの事を聞いていたのだろう。
母が、僕よりも先にキリトに性教育の話をしていたと思うと無性に腹が立ってきた。僕は苛立ちを隠すことなく、キリトにきつい口調で問いかけた。
「キリト、お前はこの件・・・性教育のことを母から事前に聞いていたのか?」
そうすると、キリトは申し訳なさそうな表情をして僕に頭を下げて口を開いた。
「申し訳ございません。ローズ様から、その事は事前に知らされておりました。身分違いで、とてもお受けできないと一度はお断りしたのですが・・・同世代のご友人が王様の周囲にはいらっしゃらないとのことでしたのであつかましいとは思いましたが、申し出をお受けしました。」
「ああ、お前の言うとおり。庭師のお前が僕の学友などと・・・まったくの身分違いだな。お前は断るべきだった。」
「申し訳ございません・・・」
「もう!!ラインハルトったら、なんてことを言うの。キリト君を自分の苛立ちの捌け口にするなんて私が許さないんだから!!」
俯いて謝ったキリトの前に、ローズ母さんは彼を庇うように立ちはだかり僕を叱りつけた。
王の僕を叱りつける人間など、この世に母以外存在しない。
母は僕にとって特別な存在。
その母が、僕と同じ歳の男を庇う。その事実が僕をさらに苛立たせ、同時に切なさで胸がつぶれそうだった。
美しいまま時を止めてしまった母を、僕は血が繋がっているという理由だけで手にすることができない。どんなものでも手に入れられる王が、一番欲しいものに触れることさえ許されない。
その事実は、苦痛でしかなかった。
そんな苦しさを抱えたまま、キリトと共にローズ母さんの性教育を受けることになるなんて、僕には耐え難かった。
胸が苦しかった。
このまま母さんのそばにいたら、いつか僕は本当に許されないことをしてしまうかもしれない。
誰もが救われない・・・そんな結果をもたらしてしまうかもしれない。
僕は、何の為に生まれてきたのだろう?
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