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第156話
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◆◆◆◆◆◆
蓮はまじまじとキリトの姿を見つめた。ローズは彼を魔法使いと言ったが、キリトはマントを羽織っていない。女を抱く時にさえマントを身に着けるかなり馬鹿げた魔法使いの習慣をキリトは完全に無視していた。
「こいつが、魔法使い?マントを身に着けていないのにか?」
蓮の疑問に答えたのはキリト自身だった。
「あ、そうなんですよ。マントって植物の手入れする時に面倒なもんで。引っかかって枝が折れてもうたり。それで、マントを園芸用のエプロンに変形して身に着けてるんです。ほらこれ、ポケットもいっぱいでめっちゃ便利ですよ。」
キリトは自慢げに深緑の園芸用エプロンを両手で持ちあげた。男のエプロン姿に、蓮は特に何の感情も持ち合わせなかったが、ローズは違っていた。美少年のエプロン姿は、ローズのつぼだったらしい。
「ひぁん、かわいい!!」
「・・・・ローズ。お前、まさか、ショタじゃねーだろうな。」
「ち、違うわよ。蓮、妙な勘ぐりはやめてよね。私は一児の母なのよ。同じ14歳の息子がいるのよ。ショタのわけないじゃない。そうそう、例の花が咲きそうなんだったよね。急いでいかないと!場所は『鳥かごの植物園』?」
「そうです。一緒に見にいきましょう、ローズ様!!」
「きゃ、あーー。蓮、また後でね!」
キリトに手を引かれながら、ローズはバラの花びらを散らせながらバラ園の小道を走り出した。蓮は唖然としながら、二人を見送ったが不意にキリトがローズに気づかれないように振り返り、蓮に向かってテレパスを送ってきた。蓮は表情を改め険しい表情になり二人を見つめた。
『僕と同じように不死の人間がいると知って、王宮に来てみれば・・・お前は、僕が作った魔法陣で輪廻の輪をきられて不死になったようやな。』
『お前は何者だ?お前も不死だって?』
『久々に牢獄塔に幽閉されているギルミットの生き残りのばあさんの様子を見に行けば、いないしさあ。部屋の過去の記憶を探ったら、レン・・お前がばあさんの脳を喰らっている場面が出てきたぞ。趣味悪いな、お前。でも、そのお陰で僕が研究してきた魔法陣の公式をすべて身に着けたわけや。なかなか思い切ったことする奴やな。』
『そうか・・・おばあさんが、言っていたな。呪いの魔法陣の研究に取り付かれたような男が「トモ」の先祖にいたと。それが、お前なのか?』
二人の姿はどんどん遠くなり小さくなっていくのに、キリトのテレパスは途切れることは無かった。
『ご名答。僕自身が作った輪廻をきる魔法陣で、己自身が不死となったわけ。でも、僕は君と違って強い魔法の力には恵まれなかった。そんなわけで、不死になってもただただいきるだけやった。しかも、不死の魔法陣を成功させたのは、僕自身の一回だけ。女の伴侶を得ようとして好きな女に魔法陣を焼き付けたら、心臓が溶けて死んじまった。あん時は・・・つらかったなぁ。』
『キリト・・・不死のつらさがどんなものなのか、まだなったばかりの俺にはわからない。君の気持ちを理解することは十分にはできないけど、不死の君が子孫のおばあさんに特別な感情を抱いていることは理解できる。おばあさんを殺したことは、申し訳ないと思っているんだ。でも、事情があったんだ。』
『誤解するなって、別に僕はギルミットの末裔が滅亡しようとどうでもいいよ。厳密にはギルミット族の生き残りの『トモ』の生まれ変わりの君が存在するわけだしな。』
二人の姿は、薔薇の園を抜けたところに建っている鳥かごのような形の植物園の中に消えていった。その建物はガラス張りになっており温室栽培の場となっているようだった。
蓮の場所からは、二人の姿は見えなくなったが見えなくなったが、キリトから届くテレパスはまだ続いていた。
『なら・・・どうして、俺やローズの前に姿を現したんだ?復讐の為じゃないのか?』
『復讐?そんなものに、僕は興味ないよ。ただ僕は、見たいだけだ。僕の能力さえ超える魔法使いになってこの世界にやってきた君が何をするのか?王族を殺して王宮をのっとったり・・面白いなぁ、ほんまに。この先、何を見せてくれるつもりや?この世界さえ滅ぼせる力を持つお前が、何をぐずぐずしている。もっと面白いものを、僕に見せてくれや。不死の僕には、この世界は退屈すぎる。退屈すぎて死にそうなんや。』
『俺は、何もするつもりは無い。ただ静かに、暮らしていきたいだけだ。』
薔薇の花々が、風に吹かれて花弁を空に散らせた。蓮は思わず空に散った色とりどりの花びらを見つめながらテレパスを続けていた。
『ローズと一緒にか?』
『・・・・・』
『答えないのか?なあ、不死の僕だって生涯の伴侶を求めていることを忘れていないか?』
『!!』
『彼女はいいなぁ。共にいると心が和む。それに、いい体してるし・・・抱いてみたいなぁ。』
『ガキのくせに、色ずいてんじゃねーよ。』
『ガキ?僕の方が蓮やローズよりずっと長く生きてきてるんやけどなあ。それに、僕が魔法使いだってこと、忘れてる?レン、見た目を変えるくらいの魔力は僕だってもっているよ。この14歳の姿は、魔法で作った作り物。だって面白いやろ?ローズの息子と同じこの14歳の姿でこの女を犯したら、どんな反応示すか・・・泣き叫んで抵抗するかな?』
キリトの言葉に一気に蓮の心がざわついた。蓮の精神が一気に熱を帯びてとげとげしくなり、やがてその棘は鳥のような形となり『鳥かごの植物園』に向かって飛び去った。
『そんなことしてみろ・・・お前を殺してやる。キリト!!』
パリンッ
鋭い音とともに、植物園の天井のガラス窓を棘の鳥が突き破った。植物園の中に、無数のガラスの破片が飛び散り、地面に向かって鋭く降り注いだ。
蓮は、ローズの身が傷つかないように彼女の周りに魔法防壁をはっていた。狙いはキリトだけだった。だが、ローズはそのキリトを庇って彼に覆いかぶさって地面に倒れこんでいた。
棘の鳥は植物園に侵入し直接キリトを攻撃しようとしたが、その鳥の目を通して内部を見ていた蓮はローズがキリトを庇う姿を見て、魔法で作った鳥を消滅させた。そして、蓮は植物園に向かって走り出していた。
奪われたくない。
失いたくない。
その想いだけが、蓮の心を支配していた。
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蓮はまじまじとキリトの姿を見つめた。ローズは彼を魔法使いと言ったが、キリトはマントを羽織っていない。女を抱く時にさえマントを身に着けるかなり馬鹿げた魔法使いの習慣をキリトは完全に無視していた。
「こいつが、魔法使い?マントを身に着けていないのにか?」
蓮の疑問に答えたのはキリト自身だった。
「あ、そうなんですよ。マントって植物の手入れする時に面倒なもんで。引っかかって枝が折れてもうたり。それで、マントを園芸用のエプロンに変形して身に着けてるんです。ほらこれ、ポケットもいっぱいでめっちゃ便利ですよ。」
キリトは自慢げに深緑の園芸用エプロンを両手で持ちあげた。男のエプロン姿に、蓮は特に何の感情も持ち合わせなかったが、ローズは違っていた。美少年のエプロン姿は、ローズのつぼだったらしい。
「ひぁん、かわいい!!」
「・・・・ローズ。お前、まさか、ショタじゃねーだろうな。」
「ち、違うわよ。蓮、妙な勘ぐりはやめてよね。私は一児の母なのよ。同じ14歳の息子がいるのよ。ショタのわけないじゃない。そうそう、例の花が咲きそうなんだったよね。急いでいかないと!場所は『鳥かごの植物園』?」
「そうです。一緒に見にいきましょう、ローズ様!!」
「きゃ、あーー。蓮、また後でね!」
キリトに手を引かれながら、ローズはバラの花びらを散らせながらバラ園の小道を走り出した。蓮は唖然としながら、二人を見送ったが不意にキリトがローズに気づかれないように振り返り、蓮に向かってテレパスを送ってきた。蓮は表情を改め険しい表情になり二人を見つめた。
『僕と同じように不死の人間がいると知って、王宮に来てみれば・・・お前は、僕が作った魔法陣で輪廻の輪をきられて不死になったようやな。』
『お前は何者だ?お前も不死だって?』
『久々に牢獄塔に幽閉されているギルミットの生き残りのばあさんの様子を見に行けば、いないしさあ。部屋の過去の記憶を探ったら、レン・・お前がばあさんの脳を喰らっている場面が出てきたぞ。趣味悪いな、お前。でも、そのお陰で僕が研究してきた魔法陣の公式をすべて身に着けたわけや。なかなか思い切ったことする奴やな。』
『そうか・・・おばあさんが、言っていたな。呪いの魔法陣の研究に取り付かれたような男が「トモ」の先祖にいたと。それが、お前なのか?』
二人の姿はどんどん遠くなり小さくなっていくのに、キリトのテレパスは途切れることは無かった。
『ご名答。僕自身が作った輪廻をきる魔法陣で、己自身が不死となったわけ。でも、僕は君と違って強い魔法の力には恵まれなかった。そんなわけで、不死になってもただただいきるだけやった。しかも、不死の魔法陣を成功させたのは、僕自身の一回だけ。女の伴侶を得ようとして好きな女に魔法陣を焼き付けたら、心臓が溶けて死んじまった。あん時は・・・つらかったなぁ。』
『キリト・・・不死のつらさがどんなものなのか、まだなったばかりの俺にはわからない。君の気持ちを理解することは十分にはできないけど、不死の君が子孫のおばあさんに特別な感情を抱いていることは理解できる。おばあさんを殺したことは、申し訳ないと思っているんだ。でも、事情があったんだ。』
『誤解するなって、別に僕はギルミットの末裔が滅亡しようとどうでもいいよ。厳密にはギルミット族の生き残りの『トモ』の生まれ変わりの君が存在するわけだしな。』
二人の姿は、薔薇の園を抜けたところに建っている鳥かごのような形の植物園の中に消えていった。その建物はガラス張りになっており温室栽培の場となっているようだった。
蓮の場所からは、二人の姿は見えなくなったが見えなくなったが、キリトから届くテレパスはまだ続いていた。
『なら・・・どうして、俺やローズの前に姿を現したんだ?復讐の為じゃないのか?』
『復讐?そんなものに、僕は興味ないよ。ただ僕は、見たいだけだ。僕の能力さえ超える魔法使いになってこの世界にやってきた君が何をするのか?王族を殺して王宮をのっとったり・・面白いなぁ、ほんまに。この先、何を見せてくれるつもりや?この世界さえ滅ぼせる力を持つお前が、何をぐずぐずしている。もっと面白いものを、僕に見せてくれや。不死の僕には、この世界は退屈すぎる。退屈すぎて死にそうなんや。』
『俺は、何もするつもりは無い。ただ静かに、暮らしていきたいだけだ。』
薔薇の花々が、風に吹かれて花弁を空に散らせた。蓮は思わず空に散った色とりどりの花びらを見つめながらテレパスを続けていた。
『ローズと一緒にか?』
『・・・・・』
『答えないのか?なあ、不死の僕だって生涯の伴侶を求めていることを忘れていないか?』
『!!』
『彼女はいいなぁ。共にいると心が和む。それに、いい体してるし・・・抱いてみたいなぁ。』
『ガキのくせに、色ずいてんじゃねーよ。』
『ガキ?僕の方が蓮やローズよりずっと長く生きてきてるんやけどなあ。それに、僕が魔法使いだってこと、忘れてる?レン、見た目を変えるくらいの魔力は僕だってもっているよ。この14歳の姿は、魔法で作った作り物。だって面白いやろ?ローズの息子と同じこの14歳の姿でこの女を犯したら、どんな反応示すか・・・泣き叫んで抵抗するかな?』
キリトの言葉に一気に蓮の心がざわついた。蓮の精神が一気に熱を帯びてとげとげしくなり、やがてその棘は鳥のような形となり『鳥かごの植物園』に向かって飛び去った。
『そんなことしてみろ・・・お前を殺してやる。キリト!!』
パリンッ
鋭い音とともに、植物園の天井のガラス窓を棘の鳥が突き破った。植物園の中に、無数のガラスの破片が飛び散り、地面に向かって鋭く降り注いだ。
蓮は、ローズの身が傷つかないように彼女の周りに魔法防壁をはっていた。狙いはキリトだけだった。だが、ローズはそのキリトを庇って彼に覆いかぶさって地面に倒れこんでいた。
棘の鳥は植物園に侵入し直接キリトを攻撃しようとしたが、その鳥の目を通して内部を見ていた蓮はローズがキリトを庇う姿を見て、魔法で作った鳥を消滅させた。そして、蓮は植物園に向かって走り出していた。
奪われたくない。
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その想いだけが、蓮の心を支配していた。
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