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第123話
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◆◆◆◆◆◆
「ふぅぎゃぁああああーーーーーーー!!」
突然馬車の屋根をすり抜け落ちてきた黒い物体に、私は思わず悲鳴をあげていた。それは漆黒のマントを空に漂わせながら、ふんわりと対面のソファに腰を下ろした。その時になって、ようやく私はそれが見慣れた魔法使いであることに気が付いた。蓮は悲鳴をあげた私を見ながらにやりと笑って口を開いた。
「なんて可愛げのない悲鳴なんだ。普通、『キャァアーーー』とかって悲鳴あげないか?『ふぅぎゃあああーーー』って、とても姫の悲鳴じゃにね。少なくとも、麗しいアーサーの正妃はそんな悲鳴は上げないだろうな。」
「蓮、あんたが突然馬車の屋根を突き抜けて現れるから悪いんじゃないの。って、それより蓮はアーサーの正妃に会ったの!?」
私は蓮の衣服を掴み彼に顔を押し付けるようにして、叫んでいた。蓮は、私の唾が顔に当たったのかちょっと眉を顰めたが、不意に意地悪な笑みを見せるといきなり私を抱き寄せ唇を奪ってきた。
「ふぅ・・んっ!!」
くちゅりと水音を立てながら、蓮が私の咥内に舌を無理やり押し込むと私の舌を絡みとってきた。長く深い繋がりの後、蓮は唾液をつっーと垂らしながら、私を解放した。私は、蓮の胸の中で新鮮な空気を肺に流し込んだ。体が熱くほてっているのが自分でもわかって恥ずかしかった。
蓮はそんな私の気持ちなどスルーして、また意地悪なことをいいはじめた。
「アーサーと正妃マリーは、こーんなキスを毎日しているんだろうな。お似合いの二人だよ。まるでお伽の国から出てきたような二人なんだ。お前も正妃のマリーに逢えば、アーサーへの想いをあきらめることもできるだろう。」
蓮がそういいながらぎゅっと私を抱きしめて囁いた。
「・・私はっ!!」
「今でも、アーサーの事を思っているんだろ?妊婦が山道を走る馬車に乗るのは、体に障るとわかっているだろうに。それでも、アーサーが正妃を迎えたと聞き、逢いに来ずには居られなかったのだろう?」
私は蓮に抱きしめられながら叫んでいた。
「蓮、もうそれ以上言わないでよ!!私は、今はカインの妻で彼の子を宿している。でも、もし・・・王宮に行った時に私がカインに無理やり側室にされなかったなら・・カインに愛もなく処女を奪われなかった。もし、私がアーサーに処女を奉げていたら、アーサーは私を愛してくれて側室にしてくれたかも知れないでしょ?正妃は無理でも、側室としてアーサーに愛された未来があったかもしれないのよ。それを思うと・・・」
蓮は私の頬にそっと唇を寄せながら口を開いた。
「過去を変えたいと、俺も時々考えることがある。だが、過去を変えれば今の自分はいなくなる。過去に囚われることは現在の自分を否定することだと思わないか、智也?」
「現在の自分の否定?」
蓮は不意に真顔になると、私の頬を両手で包み込んで囁いた。私はどきりとしながらも、どこまでも深く透き通った蓮の瞳から目が離せなかった。
「今、お前はこの異世界の国王の子をそのお腹に宿している。想い人の子供ではなかったかもしれないが、お腹の子を生む運命をお前は受け入れた。その子の親のカインも受け入れようと努力している。一生懸命現実を受けとめようとしている現在の自分を肯定してあげてくれ。お前が過去に囚われて苦しんでいると、俺も苦しくなる。・・・現在の俺自身を否定したくなって苦しくなるんだ。」
蓮の瞳に一瞬闇が宿ったような気がしたが、それもすぐに消え去って目を細めると優しく微笑んだ。私は彼の瞳に魅入られるように見つめながら口を開いた。
「蓮、私は・・・現在の自分を否定なんてしてないよ。ちゃんと受け入れているよ。ただ、アーサーのことになると、気持ちが落ち着かなくなるの。やっぱり、初恋だったからかな?・・・・蓮も過去のことで苦しむことがあるんだね。大丈夫、蓮?」
私がそう聞くと、蓮は私を隣に座らせてすこし私と距離を置くと自嘲気味に言葉を紡いだ。
「ある人に、『化け物』ってよばれたんだ。当たってるって思ったけど、ちょっと心が痛かったかな?」
「蓮を『化け物』呼ばわりするなんて!!誰よ、そんな事言ったのは。私が許さないんだから!!」
私が怒りを覚えて語気を強めると、蓮は微笑みを浮かべて私を諌めるように優しく呟いた。
「もういいんだ。そう言った奴も、死んでしまったしな。それに、お前が怒ってくれただけで俺の心も痛みも和らいだよ。それより、俺はお前に大切なことを伝える為にお前の馬車まで魔法で瞬間移動してきたのに言い出しにくくて、アーサーのことでお前をからかって場を茶化してしまった。悪かったな。」
蓮が真剣な顔で言い出したので、私もいつの間にか不安な顔になって彼に聞いていた。
「蓮、私に伝えたい大切なことって・・・何?」
「お前もその事を俺に聞きたくて、アーサーの城に向けて馬車を走らせてきたんだろ?」
蓮の言葉に、私はごくりと唾を飲み込むと、覚悟を決めて妹のモモのことについて話し出した
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「ふぅぎゃぁああああーーーーーーー!!」
突然馬車の屋根をすり抜け落ちてきた黒い物体に、私は思わず悲鳴をあげていた。それは漆黒のマントを空に漂わせながら、ふんわりと対面のソファに腰を下ろした。その時になって、ようやく私はそれが見慣れた魔法使いであることに気が付いた。蓮は悲鳴をあげた私を見ながらにやりと笑って口を開いた。
「なんて可愛げのない悲鳴なんだ。普通、『キャァアーーー』とかって悲鳴あげないか?『ふぅぎゃあああーーー』って、とても姫の悲鳴じゃにね。少なくとも、麗しいアーサーの正妃はそんな悲鳴は上げないだろうな。」
「蓮、あんたが突然馬車の屋根を突き抜けて現れるから悪いんじゃないの。って、それより蓮はアーサーの正妃に会ったの!?」
私は蓮の衣服を掴み彼に顔を押し付けるようにして、叫んでいた。蓮は、私の唾が顔に当たったのかちょっと眉を顰めたが、不意に意地悪な笑みを見せるといきなり私を抱き寄せ唇を奪ってきた。
「ふぅ・・んっ!!」
くちゅりと水音を立てながら、蓮が私の咥内に舌を無理やり押し込むと私の舌を絡みとってきた。長く深い繋がりの後、蓮は唾液をつっーと垂らしながら、私を解放した。私は、蓮の胸の中で新鮮な空気を肺に流し込んだ。体が熱くほてっているのが自分でもわかって恥ずかしかった。
蓮はそんな私の気持ちなどスルーして、また意地悪なことをいいはじめた。
「アーサーと正妃マリーは、こーんなキスを毎日しているんだろうな。お似合いの二人だよ。まるでお伽の国から出てきたような二人なんだ。お前も正妃のマリーに逢えば、アーサーへの想いをあきらめることもできるだろう。」
蓮がそういいながらぎゅっと私を抱きしめて囁いた。
「・・私はっ!!」
「今でも、アーサーの事を思っているんだろ?妊婦が山道を走る馬車に乗るのは、体に障るとわかっているだろうに。それでも、アーサーが正妃を迎えたと聞き、逢いに来ずには居られなかったのだろう?」
私は蓮に抱きしめられながら叫んでいた。
「蓮、もうそれ以上言わないでよ!!私は、今はカインの妻で彼の子を宿している。でも、もし・・・王宮に行った時に私がカインに無理やり側室にされなかったなら・・カインに愛もなく処女を奪われなかった。もし、私がアーサーに処女を奉げていたら、アーサーは私を愛してくれて側室にしてくれたかも知れないでしょ?正妃は無理でも、側室としてアーサーに愛された未来があったかもしれないのよ。それを思うと・・・」
蓮は私の頬にそっと唇を寄せながら口を開いた。
「過去を変えたいと、俺も時々考えることがある。だが、過去を変えれば今の自分はいなくなる。過去に囚われることは現在の自分を否定することだと思わないか、智也?」
「現在の自分の否定?」
蓮は不意に真顔になると、私の頬を両手で包み込んで囁いた。私はどきりとしながらも、どこまでも深く透き通った蓮の瞳から目が離せなかった。
「今、お前はこの異世界の国王の子をそのお腹に宿している。想い人の子供ではなかったかもしれないが、お腹の子を生む運命をお前は受け入れた。その子の親のカインも受け入れようと努力している。一生懸命現実を受けとめようとしている現在の自分を肯定してあげてくれ。お前が過去に囚われて苦しんでいると、俺も苦しくなる。・・・現在の俺自身を否定したくなって苦しくなるんだ。」
蓮の瞳に一瞬闇が宿ったような気がしたが、それもすぐに消え去って目を細めると優しく微笑んだ。私は彼の瞳に魅入られるように見つめながら口を開いた。
「蓮、私は・・・現在の自分を否定なんてしてないよ。ちゃんと受け入れているよ。ただ、アーサーのことになると、気持ちが落ち着かなくなるの。やっぱり、初恋だったからかな?・・・・蓮も過去のことで苦しむことがあるんだね。大丈夫、蓮?」
私がそう聞くと、蓮は私を隣に座らせてすこし私と距離を置くと自嘲気味に言葉を紡いだ。
「ある人に、『化け物』ってよばれたんだ。当たってるって思ったけど、ちょっと心が痛かったかな?」
「蓮を『化け物』呼ばわりするなんて!!誰よ、そんな事言ったのは。私が許さないんだから!!」
私が怒りを覚えて語気を強めると、蓮は微笑みを浮かべて私を諌めるように優しく呟いた。
「もういいんだ。そう言った奴も、死んでしまったしな。それに、お前が怒ってくれただけで俺の心も痛みも和らいだよ。それより、俺はお前に大切なことを伝える為にお前の馬車まで魔法で瞬間移動してきたのに言い出しにくくて、アーサーのことでお前をからかって場を茶化してしまった。悪かったな。」
蓮が真剣な顔で言い出したので、私もいつの間にか不安な顔になって彼に聞いていた。
「蓮、私に伝えたい大切なことって・・・何?」
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