異世界転移、魔法使いは女体化した僕を溺愛する

月歌(ツキウタ)

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第113話

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( 王の間 )


「死を目前にして王であることよりも、父親であることを選んだいうことですか、王様?カインよりもアーサーに王の座を着かせたいと思ったのですか?」

蓮の言葉にはっとして王は息を整えつつ口を開いた。

「アーサーは可哀想な子じゃ。わしの唯一の子だというのに、母親の身分が低く王位に着かせることができなんだ。わが子を王にしたいと望むことは自然なことだとは思わんか、レンよ。正妃はな、わしに嫁いだ時・・・すでに処女ではなかったのじゃ。あいつには、恋人がおったのじゃ。その恋人は、名門の貴族で遥か昔じゃが、王の妹をその血筋に宿した事もあったほどの家柄じゃったが、あの時はすっかり落ちぶれておった。正妃の親は、二人の結婚を認めず引き剥がし王宮の舞踏会に娘を連れ出して、わしの目に触れさせた。わしの、一目惚れじゃった。」

王は多弁に昔話を語ることを自分自身でもやめることができなかった。蓮の魔法によって喋らされているのかとも考えたが、あるいは以前から誰かに語りたいと王自身が思っていたのかもしれない。
王は、昔語りを辞めなかった。蓮もおとなしく聞き入っていた。

「その娘はわしの正妃とするのに十分な身分と財力を持っておった。わしはその娘を正妃に選んだ。だが、娘は寝所ではわしを拒絶した。わしは王じゃ。無理やりにでも、あの女を自分のものとすることもできた。しかし、正妃に惚れておったわしはあの女の心がわしに向くのを待つことにした。だが、正妃との間に子ができぬ時が長くなるほどに、周りのものは世継ぎを心配して多くの側室を傍に置くようすすめた。」

王は遠い過去を振り返るように眼を細めながらも言葉を続けた。

「あの頃は、わしも若かった。想い人に振り向かれぬ寂しさから逃れるように側室たちと体を繋いだ。その側室の一人がアーサーの母親じゃったな。側室のマリアがわしの子を孕むと、王妃の実家は彼女に圧力をかけたようじゃった。結局、彼女は渋々わしと体を繋いだ。わしは、それでもよいと思ったのじゃ。いつかは、わしを愛してくれると信じておった。だが、王妃が身ごもり子を生んだ時にその思いが幻想であることをわしは知った。生まれてきた子は、王家の証である青い炎を僅かにしか宿していなかった。王家の直系のわしの子ではありえんことじゃ。カインは、わしの子ではないのではないかと疑いを持った。わしは、契約魔法使いを使って真実を調べさせた。真実は・・・虚しいものじゃった。一時期、体調を崩し実家に戻っておった正妃は、密かに元恋人の貴族の男と体を交わし・・・・そして、子を宿しておった。あの女はわしを騙して、カインを生んだのじゃ。わしは偉大な王でなければならなかった。正妃の裏切りを公にできることもできず、真実を葬るしかなかった。」

「あんたは正妃に惚れて王宮に連れてきたんだろ?その女の子供のカインを愛しいとは思えなかったのか?」
蓮がそう聞くと王は愚かな質問をするというように、彼を見つめそして返事をした。

「わしは聖人ではない。自分の子ではない者を愛せはしなかった。わしは、虚しい心を埋めてくれる者を求めた。それが、アーサーじゃった。あれの母は身分は低いが気立てのいい器量も優れたいい女だった。アーサーは、わしがその女に己の種をまき得た実だ。それが、アーサーじゃ。間違いなく王家の男だ。青い炎を身に宿し、幼い身で王家の証である魔法使いと契約を果たしたのだぞ。あれこそが、唯一のわが息子だった。」

蓮は、真面目な顔で王に質問した。

「あなたは名君だった。王宮が乱れれば、それは王国の乱れにも繋がる。そう分かっていたからこそ、あんたは自身の気持ちを抑えて跡目争いの無い様に正妃の息子のカインを次期王位後継者に指名したはずだ。なのに、今になって何故カインの子を殺そうとした?」

蓮の質問に王は醜いしわを造って笑うと声高に話し出した。

「カインは呪いをかけられた身じゃ。たとえ王位に着いたとしてもじきに死ぬだろう。そして、王位は自然と兄のアーサーが引き継ぐはずじゃった。だが、カインは側室のトモヤを孕ませてその子を、王位につけると公言し公式文書まで配りおった。わしは、アーサーに・・・我が息子に王位について欲しかった。病床につき、わしは王であるよりも父として生きたいとおもったのじゃ。カインの子は生まれてきてはならない子なのじゃ。王家のものでない子を王位の座に据えることなどありえぬことじゃ!!」

蓮は腕組みをしたまま、王のベッドの周りをうろうろと歩きはじめ何か考え事をしていた。王はじっとそんな蓮の様子を見つめていた。王の視線を感じたのか、蓮はぴたりと足の運びをとめて立ち止まると王の方に視線を向けて口を開いた。

「お前は、たとえ愛した女の生んだ子供でも他人ならば愛せないと言った。だが、俺は違う。智也の生む子がカインの子であろうとも、俺は永遠に愛しぬくつもりだ。お前は邪魔だ、王よ。智也を傷つけるものは生かしてはおけない。」

漆黒のマントを靡かせて、蓮は王に近づくと薄い笑みを浮かべて王の胸に自身の手のひらを押し当てた。王は助けすらよべる状態ではなく、ただただ死にゆく己の定めに身震いしていた。

「哀れな王よ。鼓動が早鐘のようだ。お前は小心な王だったようだな。その小心者が、智也に苦しみを与えた。お腹から子が流れる苦痛を智也に与えて、お前は高みの見物でもしていたのか?」
「・・・・わしは。」
「お前も体験するがいい。大切なものが体外に流れ出る経験をな!!」

蓮はそう言い切ると、手のひらをぐっと王の胸に押し当てた。手のひらから青い炎が立ち上ると、やがてその青い光は魔法陣となって王の胸に刻まれた。




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