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第108話
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◆◆◆◆◆◆
(智也の部屋)
猫モモは兄のピンチに最大限の瞬発力を発揮して智也の部屋を駆け出すと、まさしく猫のように廊下を走る抜け治療院に駆け込み、大きな声で叫んでいた。
「おにーーーちゃまが、大変なんれすうぅうう!!ギーナさんのが部屋に来るように呼んでいるでしゅーーーー!!」
「何、側室のトモヤ様がどうかされたのか!?」
「とにかくきて欲しいレスニャーーーー!!」
側室の妹の異常な言動にはもう慣れっこの治療院の人間たちだったが、その猫モモが顔面蒼白で叫び声を上げている姿は事が重大であることを知らしめていた。治療院で働く人たちは、救急の道具をカバンに詰め込むと、側室の部屋に走って向かった。
部屋にたどり着いた治療院の人間は、部屋の床で寝かされているカインの側室の異常な様子に青ざめた。彼女は、気を失っている状態にもかかわらず、うめき声を上げて脂汗が全身から噴出していた。智也の傍では女医のギーナが真剣な表情で、ようやく現れた部下たちによく通る声で命令していた。
「誰か鋏は持ってきたか?トモヤのドレスを切って、彼女を下着姿にする。」
「は、はい!!持ってきています。」
ギーナに声を掛けられて治療院から駆けつけた人たちが、はっとしてそれぞれの役割を果たし始める。カバンからはさみを取り出した男はそれを、女医に手渡した。彼女はそれをしっかりと受け取ると躊躇うことなく、智也のドレスを引き裂くように切りはじめた。ドレスを切り裂かれた智也は薄い下着のドレスだけを身にまとっていた。剥きだしの白く艶やかな肌の太もも、盛り上がった乳房や乳首のピンクの色さえ下着越しに見えて、治療院の男たちの手が止まった。
彼女の下着姿に魅入られている男たちに、舌打をした女医のギーナが語気を荒げる。
「彼女をベッドに連れて行くから、手伝ってくれ。おい、お前ら病人に欲情してんじゃない!!そっと優しく抱き上げるんだぞ。彼女は、カイン様のお子を宿しているんだ。何かあったらお前たちただではすまないと思えよ。」
「ひぃ、はい。ギーナさま、俺たちがベッドにトモヤ様をお運びします!!」
ギーナの迫力に顔面を蒼白にさせながら男たちが、床に寝転がったトモヤを数人で優しく抱き上げると寝室へと速やかに運び込んだ。ベッドに移動させられて、ようやくトモヤが意識を取りもどす。
「はぁ・・ああ、痛い。はぁ・・はぁ・・お腹が・・・痛い。眩暈がする。いや、助けて・・・赤ちゃんが!!」
「しっかりしろ、トモヤ。私が分かるか?治療院のギーナだ。」
虚ろな目がギーナを捉えると、智也は縋るように彼女の腕を掴んだ。その手のひらは脂汗でべたべたになっていた。女医のギーナは尋常でない状態に、背中に冷や汗が流れるのを感じつつ、冷静な声で智也に話しかけていた。
「腹部を触ったが、子がいる辺りがしこりの様になって異常に張っている。出産前にお腹が張るのは正常だが、この周期でお腹が張るのは異常だ。何か原因があるはずだ、それを知りたい。何か飲んだり、食べたりしたか?あるいは、無理な体勢を取ったり転んだりしなかったか?」
ギーナの声は耳には届いたようで、痛みに朦朧とした状態で女医の質問に智也は答え始めた。
「あ・・・ぅ、転んだりはしてない。でも・・やばいものは飲んだかも。うう・・痛いっ!!」
「何を飲んだんだ!?」
「うううっ・・・・せ、せい・・・」
虚ろな状態のはずなのに、智也は何故か話すことを躊躇った。ギーナは舌打しながら先を促す。
「せい?なんだ、何を飲んだの?おなかの子の命に関わることよ!!はっきり言いなさい!!」
「せ、精液を飲んだわ!!」
智也の告白のその場の誰もが凍りついた。顔を引きつらせて予想外の答えに動揺しつつ、女医のギーナが口を開く。
「精液を飲んだことが理由で、お腹が張るという症状は聞いたことが無い。快感から、子宮が収縮するという事例は聞いたことはあるが、その場合その場で痛みなりを感じたはずだ。その・・精液を飲んだときにお腹の痛みを感じなかったか?」
「ううっ・・・・わかんないよぉ。」
「それ以外に、何か飲んだりしなかったか?トモヤ、大切なことなんだ。思い出して欲しい。」
ギーナの必死の問いかけにも関わらず、徐々に智也の意識が再び遠のいていく。原因を探りたいギーナは必死で彼女に話しかけていた。
寝室の空気は緊迫していた。妹のモモでさえも、言葉すら発することもできずただ涙を流して兄を見守っていた。そんな張り詰めた空気を引き裂くような冴えた声が寝室に響き渡った。
「智也の体調は気遣いながら精液を飲ませたつもりだ。確かに諍いがあって智也は興奮状態で俺の部屋を出て行ったが、その時には子宮が収縮している様子は無かった。」
「レン!!」
女医のギーナは突然部屋に現れた魔法使いにぎょっとしてその名を呼んでいた。
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(智也の部屋)
猫モモは兄のピンチに最大限の瞬発力を発揮して智也の部屋を駆け出すと、まさしく猫のように廊下を走る抜け治療院に駆け込み、大きな声で叫んでいた。
「おにーーーちゃまが、大変なんれすうぅうう!!ギーナさんのが部屋に来るように呼んでいるでしゅーーーー!!」
「何、側室のトモヤ様がどうかされたのか!?」
「とにかくきて欲しいレスニャーーーー!!」
側室の妹の異常な言動にはもう慣れっこの治療院の人間たちだったが、その猫モモが顔面蒼白で叫び声を上げている姿は事が重大であることを知らしめていた。治療院で働く人たちは、救急の道具をカバンに詰め込むと、側室の部屋に走って向かった。
部屋にたどり着いた治療院の人間は、部屋の床で寝かされているカインの側室の異常な様子に青ざめた。彼女は、気を失っている状態にもかかわらず、うめき声を上げて脂汗が全身から噴出していた。智也の傍では女医のギーナが真剣な表情で、ようやく現れた部下たちによく通る声で命令していた。
「誰か鋏は持ってきたか?トモヤのドレスを切って、彼女を下着姿にする。」
「は、はい!!持ってきています。」
ギーナに声を掛けられて治療院から駆けつけた人たちが、はっとしてそれぞれの役割を果たし始める。カバンからはさみを取り出した男はそれを、女医に手渡した。彼女はそれをしっかりと受け取ると躊躇うことなく、智也のドレスを引き裂くように切りはじめた。ドレスを切り裂かれた智也は薄い下着のドレスだけを身にまとっていた。剥きだしの白く艶やかな肌の太もも、盛り上がった乳房や乳首のピンクの色さえ下着越しに見えて、治療院の男たちの手が止まった。
彼女の下着姿に魅入られている男たちに、舌打をした女医のギーナが語気を荒げる。
「彼女をベッドに連れて行くから、手伝ってくれ。おい、お前ら病人に欲情してんじゃない!!そっと優しく抱き上げるんだぞ。彼女は、カイン様のお子を宿しているんだ。何かあったらお前たちただではすまないと思えよ。」
「ひぃ、はい。ギーナさま、俺たちがベッドにトモヤ様をお運びします!!」
ギーナの迫力に顔面を蒼白にさせながら男たちが、床に寝転がったトモヤを数人で優しく抱き上げると寝室へと速やかに運び込んだ。ベッドに移動させられて、ようやくトモヤが意識を取りもどす。
「はぁ・・ああ、痛い。はぁ・・はぁ・・お腹が・・・痛い。眩暈がする。いや、助けて・・・赤ちゃんが!!」
「しっかりしろ、トモヤ。私が分かるか?治療院のギーナだ。」
虚ろな目がギーナを捉えると、智也は縋るように彼女の腕を掴んだ。その手のひらは脂汗でべたべたになっていた。女医のギーナは尋常でない状態に、背中に冷や汗が流れるのを感じつつ、冷静な声で智也に話しかけていた。
「腹部を触ったが、子がいる辺りがしこりの様になって異常に張っている。出産前にお腹が張るのは正常だが、この周期でお腹が張るのは異常だ。何か原因があるはずだ、それを知りたい。何か飲んだり、食べたりしたか?あるいは、無理な体勢を取ったり転んだりしなかったか?」
ギーナの声は耳には届いたようで、痛みに朦朧とした状態で女医の質問に智也は答え始めた。
「あ・・・ぅ、転んだりはしてない。でも・・やばいものは飲んだかも。うう・・痛いっ!!」
「何を飲んだんだ!?」
「うううっ・・・・せ、せい・・・」
虚ろな状態のはずなのに、智也は何故か話すことを躊躇った。ギーナは舌打しながら先を促す。
「せい?なんだ、何を飲んだの?おなかの子の命に関わることよ!!はっきり言いなさい!!」
「せ、精液を飲んだわ!!」
智也の告白のその場の誰もが凍りついた。顔を引きつらせて予想外の答えに動揺しつつ、女医のギーナが口を開く。
「精液を飲んだことが理由で、お腹が張るという症状は聞いたことが無い。快感から、子宮が収縮するという事例は聞いたことはあるが、その場合その場で痛みなりを感じたはずだ。その・・精液を飲んだときにお腹の痛みを感じなかったか?」
「ううっ・・・・わかんないよぉ。」
「それ以外に、何か飲んだりしなかったか?トモヤ、大切なことなんだ。思い出して欲しい。」
ギーナの必死の問いかけにも関わらず、徐々に智也の意識が再び遠のいていく。原因を探りたいギーナは必死で彼女に話しかけていた。
寝室の空気は緊迫していた。妹のモモでさえも、言葉すら発することもできずただ涙を流して兄を見守っていた。そんな張り詰めた空気を引き裂くような冴えた声が寝室に響き渡った。
「智也の体調は気遣いながら精液を飲ませたつもりだ。確かに諍いがあって智也は興奮状態で俺の部屋を出て行ったが、その時には子宮が収縮している様子は無かった。」
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