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第93話
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◆◆◆◆◆◆
(カインの寝室)
「まさか・・本当にお前が『トモ』の生まれ変わりだと言うのか?」
「ああ、そうらしいぜ?前世の記憶は無いがな。どうだ、俺を殺してその身に刻まれた呪いの魔法陣の威力は?」
蓮の言葉にカインが絶句した。だが、数秒のちにカインは自嘲気味に笑って返事した。
「・・・お前の呪いの魔法陣の威力は最悪だ。」
蓮はその言葉を黙って聞いていが、やがて口を開いた。
「『トモ』はギルミットの一族の末裔だ。ギルミット一族は呪いの魔法を得意としていた。特に『トモ』の直系にあたる先祖に、禁忌の魔法陣をいくつも生み出した天才的な魔法使いがいたんだ。幼い『トモ』はその先祖が生み出した魔法陣をそのままお前の背中に焼き付けたんだ。」
「そうなのか・・」
「そうでなければ、あんな幼いしかも力の弱いはずの女の魔法が、こうも長く破られること無くお前の背かなに刻まれているはずが無い。」
「レン、答えてくれないか?お前でも・・・この呪いの魔法陣から俺を解放することはできないのか?」
カインにそう聞かれて、蓮は難しい顔をした。そして、口を開く。
「『トモ』の祖母の脳を生きたまま食らったのは、ギルミットの魔法の知識を得る為だった。お前の背中に刻まれた魔法陣も喰らった脳に知識として刻まれていた。だが、その呪いの魔法陣を解く方法は刻まれてはいなかった。」
「そうか・・・では、やはり俺は死ぬしかないのだな。」
カインがそう言うと、蓮はすこし俯くと表情を変えて口を開いた。
「お前が、子供の頃にその魔法陣を身に受けて何故今まで死なずにいられたか分かるか?それは、お前に掛けられた呪いが拷問を主にした魔法陣だったからだ。死にそうなほどの痛みを与えるが、死ぬぎりぎりでゆるめ衰弱させていく拷問のような呪い。『トモ』の両親が王家に仕える貴族によって拷問を受け死んだことを知っていたからこそ、『トモ』はその拷問の呪いの魔法陣を選んでお前に掛けたのだろうな。」
「拷問のような呪いか・・・確かにそうだな。この身をもって思い知らされた。」
カインがそう言うと、蓮は首を振って口を開いた。
「いや、お前はまだ本当のこの魔法陣の恐ろしさを知らない。この魔法陣の最悪な所は、お前の子供がこの世に産声を上げたその瞬間に、魔法陣が生まれたばかりの子の背中に移動することだ。」
カインは驚いて目を見開き叫びに近い声をあげた。
「それは・・・トモヤが産む子にこの呪いの魔法陣が移るということなのか!!」
蓮は冷静な声で返事した。
「お前は苦しみや痛みから解放される代わりに、己の子にこの呪いの魔法陣が移動する。この呪いは体を蝕んだ後・・・今度は心を蝕むのだ。痛みから解放された喜びは、わが子が呪いに苦しむ姿を目の当たりにして、どん底に突き落とされる。そして、その子がもし呪いにより死んだ時には再び魔法陣がお前に移動してお前を苛む。お前の背中に刻まれた魔法陣は際限ない拷問の輪を作り出すんだ。」
「冗談じゃない!!こんな苦しみを、俺の子供に受け継がせてたまるか!!」
「ああ・・その通りだ。智也が産む子が生まれながらにしてそんな呪いの魔法陣を受けるなど、認めるわけにはいかない。お前には、智也が子を産む前に死んでもらう。お前は、その呪いの魔法陣もろとも死んでくれ。」
カインが表情を険しくして蓮を見て呟いた。蓮は表情も無くカインを見つめかえす。
「今・・・俺を殺す気か、レン?」
蓮が首を振って口を開いた。
「まだ、お前に死んでもらっては困る。お前には、王位に付いて絶対的権力で、『側室の腹にいる子が男ならその子が次期王位に継ぐものだ』と世間に広く宣言してもらわなくてはならない。」
「だが、現王が病床に伏せているとはいえ、王位はいまだ父のものだ。トモヤが子を生む前に父が死ぬかはわからない。俺の方が先に死ぬとも限らないしな。」
カインの言葉に、蓮が薄い笑いを浮かべた。
「安心しろ。現王は・・・もうすぐ死ぬ。」
「!!」
カインは冷や汗を流しながら蓮に向かって口を開いた。
「お前が父を殺すのか?」
「お前の父親は別にいる。現王はお前の父親ではない。他人の死だ・・・それ以上は追求するな、カイン。」
カインは、蓮が現王を魔法で殺すつもりなのだろうと思った。蓮の酷薄な様子が、その想いをいっそう強いものにした。だが、その行為を制することはカインにはできなかった。
今のカインにとっては、智也と彼女が産む我が子の方が大切だったからだ。カインは、悲しい現実を突きつけられて呆然としながら呟いていた。
「俺は・・・我が子をこの手に抱くことなく死ななくてはならないのか。」
「智也の子供を守る為だ。」
「分かっている・・・だが、辛い。子を抱けぬのは辛い。トモヤと一緒にわが子を抱きしめたかった。」
カインはいつの間にか涙を流していた。
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(カインの寝室)
「まさか・・本当にお前が『トモ』の生まれ変わりだと言うのか?」
「ああ、そうらしいぜ?前世の記憶は無いがな。どうだ、俺を殺してその身に刻まれた呪いの魔法陣の威力は?」
蓮の言葉にカインが絶句した。だが、数秒のちにカインは自嘲気味に笑って返事した。
「・・・お前の呪いの魔法陣の威力は最悪だ。」
蓮はその言葉を黙って聞いていが、やがて口を開いた。
「『トモ』はギルミットの一族の末裔だ。ギルミット一族は呪いの魔法を得意としていた。特に『トモ』の直系にあたる先祖に、禁忌の魔法陣をいくつも生み出した天才的な魔法使いがいたんだ。幼い『トモ』はその先祖が生み出した魔法陣をそのままお前の背中に焼き付けたんだ。」
「そうなのか・・」
「そうでなければ、あんな幼いしかも力の弱いはずの女の魔法が、こうも長く破られること無くお前の背かなに刻まれているはずが無い。」
「レン、答えてくれないか?お前でも・・・この呪いの魔法陣から俺を解放することはできないのか?」
カインにそう聞かれて、蓮は難しい顔をした。そして、口を開く。
「『トモ』の祖母の脳を生きたまま食らったのは、ギルミットの魔法の知識を得る為だった。お前の背中に刻まれた魔法陣も喰らった脳に知識として刻まれていた。だが、その呪いの魔法陣を解く方法は刻まれてはいなかった。」
「そうか・・・では、やはり俺は死ぬしかないのだな。」
カインがそう言うと、蓮はすこし俯くと表情を変えて口を開いた。
「お前が、子供の頃にその魔法陣を身に受けて何故今まで死なずにいられたか分かるか?それは、お前に掛けられた呪いが拷問を主にした魔法陣だったからだ。死にそうなほどの痛みを与えるが、死ぬぎりぎりでゆるめ衰弱させていく拷問のような呪い。『トモ』の両親が王家に仕える貴族によって拷問を受け死んだことを知っていたからこそ、『トモ』はその拷問の呪いの魔法陣を選んでお前に掛けたのだろうな。」
「拷問のような呪いか・・・確かにそうだな。この身をもって思い知らされた。」
カインがそう言うと、蓮は首を振って口を開いた。
「いや、お前はまだ本当のこの魔法陣の恐ろしさを知らない。この魔法陣の最悪な所は、お前の子供がこの世に産声を上げたその瞬間に、魔法陣が生まれたばかりの子の背中に移動することだ。」
カインは驚いて目を見開き叫びに近い声をあげた。
「それは・・・トモヤが産む子にこの呪いの魔法陣が移るということなのか!!」
蓮は冷静な声で返事した。
「お前は苦しみや痛みから解放される代わりに、己の子にこの呪いの魔法陣が移動する。この呪いは体を蝕んだ後・・・今度は心を蝕むのだ。痛みから解放された喜びは、わが子が呪いに苦しむ姿を目の当たりにして、どん底に突き落とされる。そして、その子がもし呪いにより死んだ時には再び魔法陣がお前に移動してお前を苛む。お前の背中に刻まれた魔法陣は際限ない拷問の輪を作り出すんだ。」
「冗談じゃない!!こんな苦しみを、俺の子供に受け継がせてたまるか!!」
「ああ・・その通りだ。智也が産む子が生まれながらにしてそんな呪いの魔法陣を受けるなど、認めるわけにはいかない。お前には、智也が子を産む前に死んでもらう。お前は、その呪いの魔法陣もろとも死んでくれ。」
カインが表情を険しくして蓮を見て呟いた。蓮は表情も無くカインを見つめかえす。
「今・・・俺を殺す気か、レン?」
蓮が首を振って口を開いた。
「まだ、お前に死んでもらっては困る。お前には、王位に付いて絶対的権力で、『側室の腹にいる子が男ならその子が次期王位に継ぐものだ』と世間に広く宣言してもらわなくてはならない。」
「だが、現王が病床に伏せているとはいえ、王位はいまだ父のものだ。トモヤが子を生む前に父が死ぬかはわからない。俺の方が先に死ぬとも限らないしな。」
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「安心しろ。現王は・・・もうすぐ死ぬ。」
「!!」
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「俺は・・・我が子をこの手に抱くことなく死ななくてはならないのか。」
「智也の子供を守る為だ。」
「分かっている・・・だが、辛い。子を抱けぬのは辛い。トモヤと一緒にわが子を抱きしめたかった。」
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