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第92話
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◆◆◆◆◆◆
(カインの寝室)
女医のギーナと魔法使いのギルドの姉弟が、カインの治療に必死にあったっていた。そこからすこし離れた位置でユリアスが状況を見守っていた。
蓮がその場に不意に現れたことにユリアスは気がつき、彼に話しかけた。
「レン、お前は牢獄塔で『トモ』の祖母を拷問に掛けたのだろう?なにか、カイン様の呪いを解く方法を聞き出すことはできたのか?」
ユリアスの声で、治療に専念していたギーナとギルドが蓮の存在に始めて気がつき揃って視線を彼に向けた。蓮ははゆっくりとカインのベッドに歩み寄ると、カインに向かって口を開いた。
「カイン、お前に話がある。この部屋にいるものに退出を命じてくれ。」
「はぁ・・・はぁ、レン。俺に話だと?」
「ああ、そうだ。命じてくれ。そうでなければ、俺が魔法で彼らを部屋から追い出すまでだがな」
「私たちが傍にいてはまずい話でもあるのですか?あなたをカイン様と二人きりにする気にはなれませんね。あなたは、『トモ』の祖母の脳を生きたまま喰ったそうですね?気が狂ったと思われても仕方あるませんよ、レン。」
「ユリアス、あんたはおしゃべりで俺はあまり好きじゃない。魔法でこの部屋から吹っ飛ばしてやろうか?」
蓮は不快そうにそう言い放った。ユリアスの頬がびくっと震えた。その蓮を制したのはカインだった。息を荒げながらも、カインは部屋にいるものに退出を命じた。
「レンを残し、全員部屋から退出しろ。これは命令だ。」
弱っていてもカインの命令は絶対だった。渋々ながらも、ユリアスはカインに一礼するとギルドたちと共に部屋を後にした。寝室に残ったのは、カインと蓮だけになった。蓮は、寝室に魔法壁を張り巡らし周辺からの干渉を完全に遮断するとカインに近づいた。カインは背中に刻まれた呪いの魔法陣に苦しみながらも、それ以上に自分に近づく蓮に脅威を感じていた。じわりと冷や汗がカインの背中を伝っていく。
そんなカインの心を読み取ったのか、蓮はにやりと笑って口を開いた。
「そう俺のことを恐れないでくれ。カインの脳を喰らったりしない。」
「『トモ』の祖母の脳を食らったという話は本当なのか?」
「だったらどうだというのだ?あんたにとっては、呪いを掛けた『トモ』の親族が死んだからといって気にすることでもあるまい?」
「レン、お前はトモヤの為ならどんなことでもする男だ。あの老婆の脳を生きたまま喰らったのも・・あいつの為なのだろ?」
カインにそう訪ねられたが、蓮はそれには答えなかった。ただ、蓮は黙ってカインに近づくとそのやせ細った腕を掴んで呟いた。
「随分痩せたな。相当体力が落ちているようだ・・・・まずいな。」
「手を放せ、レン。」
「今、お前に死なれてはまずい。現王が死にお前が王位を継いでもらわなくては困る。そうでなければ、智也の子は次期王にはなれない。」
「・・・・現王は病床についているが、俺より元気らしいぞ。きっと、俺が死んでもあの人は悲しむ事は無いだろうな。何故なら俺は・・」
「カインは現王の血を引いてはいないからな。正妃であるあんたの母親が不倫した結果できた子供だからな。」
蓮がそう言い切ると、カインは無念そうに唇を噛み目を閉じ独り言のように呟いた。
「やはり・・そうだったのか。そうだとは疑ってはいたが、お前のような強力な魔法使いにそう言われては疑う余地もないな。」
「ああそうだ。お前が死ねば、現王は側室の子である実子のアーサーを次期王位に据えるだろう。お前はそんな事を認めるつもりか?」
カインは、諦め気味にため息を付いた。
「・・・・アーサーは現王に似て、王の資質がある。だからこそ、俺はあいつを憎んだのだ。だが、トモヤにとっては俺が死にアーサーが王位に付くほうが望ましいのではないか?」
「そんなことは無い。智也はすでにお前の子を宿している。そして、その性別は男だ。この国の王となる資格がある。もし、智也がアーサーの子を宿していたなら即座にお前を殺してただろう。だが・・智也が宿したのはお前の子供なのだ。お前は、自身の子を守る義務がある。」
カインは蓮の言葉を聞き、弱い声ながらも言葉を荒げて反論した。
「だが、呪いで今にも死にそうな俺がどうやってトモヤと子を守れと言うのだ!!俺だって守りたい。だが今はベッドから出ることさえままなら無い!!」
カインは細くなった両手で必死で体を支えながら、ベッドから上半身を起き上がらせた。その体は、軋めき悲鳴をあげていた。その姿を見た蓮は薄笑いを浮かべて呟いた。
「無様だな、カイン。『トモ』を殺した報いだ。そうそう、まだ報告していなかったな。『トモ』の祖母の話によると、俺は『トモ』の生まれ変わりらしいぞ。」
「まさか!!」
カインは驚きの声をあげて、蓮を見つめた。蓮は薄笑いを浮かべて、カインを見つめていた。カインは背筋にぞくりとした震えを感じながら酷薄な蓮を見つめていた。
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「レン、お前は牢獄塔で『トモ』の祖母を拷問に掛けたのだろう?なにか、カイン様の呪いを解く方法を聞き出すことはできたのか?」
ユリアスの声で、治療に専念していたギーナとギルドが蓮の存在に始めて気がつき揃って視線を彼に向けた。蓮ははゆっくりとカインのベッドに歩み寄ると、カインに向かって口を開いた。
「カイン、お前に話がある。この部屋にいるものに退出を命じてくれ。」
「はぁ・・・はぁ、レン。俺に話だと?」
「ああ、そうだ。命じてくれ。そうでなければ、俺が魔法で彼らを部屋から追い出すまでだがな」
「私たちが傍にいてはまずい話でもあるのですか?あなたをカイン様と二人きりにする気にはなれませんね。あなたは、『トモ』の祖母の脳を生きたまま喰ったそうですね?気が狂ったと思われても仕方あるませんよ、レン。」
「ユリアス、あんたはおしゃべりで俺はあまり好きじゃない。魔法でこの部屋から吹っ飛ばしてやろうか?」
蓮は不快そうにそう言い放った。ユリアスの頬がびくっと震えた。その蓮を制したのはカインだった。息を荒げながらも、カインは部屋にいるものに退出を命じた。
「レンを残し、全員部屋から退出しろ。これは命令だ。」
弱っていてもカインの命令は絶対だった。渋々ながらも、ユリアスはカインに一礼するとギルドたちと共に部屋を後にした。寝室に残ったのは、カインと蓮だけになった。蓮は、寝室に魔法壁を張り巡らし周辺からの干渉を完全に遮断するとカインに近づいた。カインは背中に刻まれた呪いの魔法陣に苦しみながらも、それ以上に自分に近づく蓮に脅威を感じていた。じわりと冷や汗がカインの背中を伝っていく。
そんなカインの心を読み取ったのか、蓮はにやりと笑って口を開いた。
「そう俺のことを恐れないでくれ。カインの脳を喰らったりしない。」
「『トモ』の祖母の脳を食らったという話は本当なのか?」
「だったらどうだというのだ?あんたにとっては、呪いを掛けた『トモ』の親族が死んだからといって気にすることでもあるまい?」
「レン、お前はトモヤの為ならどんなことでもする男だ。あの老婆の脳を生きたまま喰らったのも・・あいつの為なのだろ?」
カインにそう訪ねられたが、蓮はそれには答えなかった。ただ、蓮は黙ってカインに近づくとそのやせ細った腕を掴んで呟いた。
「随分痩せたな。相当体力が落ちているようだ・・・・まずいな。」
「手を放せ、レン。」
「今、お前に死なれてはまずい。現王が死にお前が王位を継いでもらわなくては困る。そうでなければ、智也の子は次期王にはなれない。」
「・・・・現王は病床についているが、俺より元気らしいぞ。きっと、俺が死んでもあの人は悲しむ事は無いだろうな。何故なら俺は・・」
「カインは現王の血を引いてはいないからな。正妃であるあんたの母親が不倫した結果できた子供だからな。」
蓮がそう言い切ると、カインは無念そうに唇を噛み目を閉じ独り言のように呟いた。
「やはり・・そうだったのか。そうだとは疑ってはいたが、お前のような強力な魔法使いにそう言われては疑う余地もないな。」
「ああそうだ。お前が死ねば、現王は側室の子である実子のアーサーを次期王位に据えるだろう。お前はそんな事を認めるつもりか?」
カインは、諦め気味にため息を付いた。
「・・・・アーサーは現王に似て、王の資質がある。だからこそ、俺はあいつを憎んだのだ。だが、トモヤにとっては俺が死にアーサーが王位に付くほうが望ましいのではないか?」
「そんなことは無い。智也はすでにお前の子を宿している。そして、その性別は男だ。この国の王となる資格がある。もし、智也がアーサーの子を宿していたなら即座にお前を殺してただろう。だが・・智也が宿したのはお前の子供なのだ。お前は、自身の子を守る義務がある。」
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「だが、呪いで今にも死にそうな俺がどうやってトモヤと子を守れと言うのだ!!俺だって守りたい。だが今はベッドから出ることさえままなら無い!!」
カインは細くなった両手で必死で体を支えながら、ベッドから上半身を起き上がらせた。その体は、軋めき悲鳴をあげていた。その姿を見た蓮は薄笑いを浮かべて呟いた。
「無様だな、カイン。『トモ』を殺した報いだ。そうそう、まだ報告していなかったな。『トモ』の祖母の話によると、俺は『トモ』の生まれ変わりらしいぞ。」
「まさか!!」
カインは驚きの声をあげて、蓮を見つめた。蓮は薄笑いを浮かべて、カインを見つめていた。カインは背筋にぞくりとした震えを感じながら酷薄な蓮を見つめていた。
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