異世界転移、魔法使いは女体化した僕を溺愛する

第７８話

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それにしても、蓮はあの後どうなったのだろう？まさか、本当に『トモ』の祖母を殺したりしてなければいいけど。蓮が『トモ』の生まれ変わりなら、あの老婆は彼の祖母になる。元の世界では、家族の愛情に恵まれなかった蓮だからこそ、この世界で出会った祖母との繋がりを大切にして欲しかった。昔から蓮は何でも一人で背負ってしまうところがあるから、心配でたまらない。

私はぼんやりと考え事をしながら、カインとの契約の証である側室の指輪を見た。カインから逃げ出した時に側室の指輪の呪いが発動すると聞いたが、呪いが発動している感じは無い。誘拐は、私が逃げ出したとは判断しなかったと言う事だろうか？
だが、カインが私の為に動いてくれたのは意外だった。アーサーとの確執から私を彼から奪ったのだろうけど、私のことを少しは愛してくれているということなのだろうか？それとも、私がカインの子供を宿している事が彼に伝わったからこそ、取引に応じたということなのかな？

この取引が、王家の威信を損なう事にならないのだろうかと心配になる。カインの呪いを解く為に牢獄塔に行ったのに、かえってカインをピンチに追い込んだのではないかと思うと申し訳ない気がした。もともとは、アーサーから引き裂かれレイプされた身で恨みもしたが、今は彼の子供を宿している。この子を産めば、カインが父親になるのだ。そう考えると、子供のためにも彼を受け入れるべきだと思えた。

元男の私が母親になるなんて信じられない事だけど、それが紛れも無い事実なのだから。

「そんな暗い顔するなって。お前はすぐに解放される手はずになっている。アーサーとレンという男が長を連れてこの村を訪れる事になったと、この村に王宮から知らせがきた。」

私が暗い顔をして側室の指輪を見つめている事に気が付いたアベルがそう言って、私の肩を優しく叩いた。私ははっとしてアベルの顔を見て口を開いた。

「アーサーと蓮が迎えにきてくれるの！！」

私は一気に表情を明るくさせた。その様子を見ていたリリカが、さっき急に耳を触ったお返しとばかりに急に質問をぶつけてきた。

「すごく嬉しそうな顔をしたわね、トモヤ。そんなに、アーサーやレンという人に逢いたいの？まるで恋人が迎えに来てくれるような顔をしていたわよ！！」
「恋人！！」
私は思わず顔を赤めてしまった。リリカは楽しそうに獣の耳をぴくぴくさせながら口を開いた。
「ねえ、どちらの迎えがあなたにとっては嬉しいのかしら？」
「どちらって・・それは・・・。」
私が言いよどんでしまうと、アベルがからかう様に口を挟んだ。

「そんなのアーサーに決まってるだろ。こいつは、元アーサーの恋人なんだからな。」
「へぇ、そうなの？」

「や、アーサーと私はそんな関係じゃないよ！！私が勝手に想いを寄せているだけ。あの人は、私の命の恩人だから。そんなことより、今度は二人の事を聞かせてよ。アベルとリリカは恋人なの？」

そう聞くと、急にリリカが顔を赤くしたがアベルは平然とした顔で否定した。
「違う、違う。俺とこいつはただの幼馴染だ。俺は貴族どもみたいに恋やら愛なんかにうつつを抜かしている暇はねーんだよ。」
「嘘、嘘。本当はねえ、アベルは長の事が好きなのよ。」
「リリカてめぇ、何言ってんだよ！！」
「獣族の鼻を見くびらないでよ。アベルからは『長が大好き。大好き。』って匂いがぷんぷんしているんだから。」
「ふざけんなってーの。」
「・・・・・。」
アベルが獣族の長が好き？それって・・・つまり・・。

「ひぇえ、アベルって年老いた男しか愛せない同性愛者だったのね！！どうりで、私のナイスな体を見ても襲わなかったわけだ。納得ーーー。」
「ふざけんな！！」
がつん。
「ふぎゃ！！」
アベルは私の頭にげんこつを落とすとそのまま、怒って部屋を出て行ってしまった。リリカはくすくす笑いながら口を開いた。
「トモヤは勘違いしているよぉ。」
「いてて・・・。え、何が？」
「獣族の長って若い女性だよ。凛々しくて強くて、すっごく綺麗な人なの。アベルが惚れるのもわかるわ。」
「え、長って女の人だったの。私は、すんごい年寄りのおじいさんだと思ってた！！」

私は驚いて思っていた事を口にしていた。


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