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第77話
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◆◆◆◆◆◆
「うげぇーーーぇえ。」
私は吐き気とともに、目が醒めた。最悪の目覚めである。だが、目覚めたところは私を誘拐した狼耳の男の胸の中ではなく、ちょっと固めのベッドの上だった。
「あ、気が付いたのね。えーーっと、トモヤだったっかしら、名前は?」
そう私に声をかけてきたのは、女性だった。でも、その耳は猫耳よりも尖って鋭い感じの獣の耳だった。私は思わずその耳に障っていた。女性はびっくりて、私の手を叩き落とした。
「ちょ、ちょっとそこ触ってるのよ!!耳は感じやすいんだから、勝手に触らないでよぉ。」
女性はそう言うと、彼女は頬を赤らめて大きな胸を両手で隠すと獣の耳をぴくぴくとさせた。胸を除くと、衣服越しにも乳首がぴんと立っているのが解った。そんな女性の様子を見て、私は思わずにやついて呟いていた。
「ひょっとして、耳が性感帯だったりする?」
私がそう言った途端にごつんと背後から頭を叩かれた。私が悲鳴をあげながら背後を振り向くと、そこには私を誘拐した犯人が立っていた。
「ひっ、誘拐犯!!」
「俺はそんな名前じゃない。アベルだ。で、その女は医者のリリカだ。お前がつわりで苦しんでいるようだから、彼女に預けたんだ。お前のうめき声が聞こえたから来て見たら・・・お前なにリリカを虐めているんだ。」
「虐めてなんかいないよ。それより、リリカさんが医者とは助かりました。うげぇーーー。この通り、つわりで、うぐぐっ・・・吐きそうなんです。なんとかなりません?」
リリカは顔をちょっと赤めたまま、私に団子のようなものを差し出した。
「薬草をパンに練りこんだものなの。きっと食べれば楽になれると思おうわ。」
「あ、ありがとう。」
私は、それをリリカから受け取ったがなかなか口にする事ができなかった。それは、以前に飲んだつわり止めの薬が苦くてまずかった記憶が蘇った為だが、その様子をアベルは勘違いしたみたいだ。
「毒なんて入ってねーよ。お前は大事な人質だからな。」
アベルがそう言ったので、私は言い返していた。
「別に毒が入っているって思ったわけじゃないから。あんたはともかく、リリカさんの目は純粋で信じられると確信したから。ということで、頂きますーーー。」
私が迷い無くぱくっと薬草の練りこんだパンにかじりつくと、アベルとリリカは私をじっと見つめていた。でも、そんな事に気が付かないくらいに夢中になって薬草パンを食べつくした。
「美味しい!!最近、つわりで全然食べられなかったのに。これ、無臭に近いね。」
「獣族に代々伝わる、つわりを和らげる薬草のパンなの。栄養も取れてつわりも和らげば最高でしょ?」
リリカが自慢げに話した。私は思わずうんうんと頷いて口を開いていた。
「王宮の女医のギーナも腕はいいんだけど、つわりで出してくれた薬は最悪に臭くて苦かったのよねぇ。このパンの作り方教えてくれる?治療院にパンのレシピを伝えるわ。」
私がそう言うと、アベルは意外そうに口を開いた。
「お前、次期王位を継ぐカインの側室だよな?もっと、鼻につくような上流階級の嫌な奴かと思ってたが案外と庶民的だな。」
「そしゃ、元男で庶民ですから。そうだ、忘れてた。私って誘拐されたんだよね?で、アベル私を誘拐した目的はなんだったの?ここは、あなたの住んでいるところなの?」
私は王宮とは比べようも無い粗末な小屋を見ながら口を開いた。アベルは私をじろじろ見ながら口を開いた。
「ここは、俺たち狼一族が住んでいる村だ。この家は、リリカの家だ。・・・お前を誘拐したのは、お前の身と引き換えに牢獄塔に幽閉されている俺たちの長を解放させるためだ。」
「そうだったんだ!!でも、残念だったね。私を誘拐しても意味無いよ。私は、カインが兄のアーサーへの当て付けの為に側室にしたようなものだものだもの。そんな要求、王宮が飲むはず無いよ。」
私がそう言うと、アベルは意外そうに口を開いた。
「そんな事はないだろ。お前、カインに寵愛されているからこそあいつの子を宿したのだろ?それに、王宮にお前が誘拐された事が伝わった途端に、牢獄塔から囚人は数人解放される事が即決まった。その中に、俺たちの長の名があった。そんな事ができるのは、王国を実質動かしているカインだけだ。」
「そうなんだ・・・カインが動いてくれたんだ。」
私は、ほっとしつつもその表情を曇らせた。
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「うげぇーーーぇえ。」
私は吐き気とともに、目が醒めた。最悪の目覚めである。だが、目覚めたところは私を誘拐した狼耳の男の胸の中ではなく、ちょっと固めのベッドの上だった。
「あ、気が付いたのね。えーーっと、トモヤだったっかしら、名前は?」
そう私に声をかけてきたのは、女性だった。でも、その耳は猫耳よりも尖って鋭い感じの獣の耳だった。私は思わずその耳に障っていた。女性はびっくりて、私の手を叩き落とした。
「ちょ、ちょっとそこ触ってるのよ!!耳は感じやすいんだから、勝手に触らないでよぉ。」
女性はそう言うと、彼女は頬を赤らめて大きな胸を両手で隠すと獣の耳をぴくぴくとさせた。胸を除くと、衣服越しにも乳首がぴんと立っているのが解った。そんな女性の様子を見て、私は思わずにやついて呟いていた。
「ひょっとして、耳が性感帯だったりする?」
私がそう言った途端にごつんと背後から頭を叩かれた。私が悲鳴をあげながら背後を振り向くと、そこには私を誘拐した犯人が立っていた。
「ひっ、誘拐犯!!」
「俺はそんな名前じゃない。アベルだ。で、その女は医者のリリカだ。お前がつわりで苦しんでいるようだから、彼女に預けたんだ。お前のうめき声が聞こえたから来て見たら・・・お前なにリリカを虐めているんだ。」
「虐めてなんかいないよ。それより、リリカさんが医者とは助かりました。うげぇーーー。この通り、つわりで、うぐぐっ・・・吐きそうなんです。なんとかなりません?」
リリカは顔をちょっと赤めたまま、私に団子のようなものを差し出した。
「薬草をパンに練りこんだものなの。きっと食べれば楽になれると思おうわ。」
「あ、ありがとう。」
私は、それをリリカから受け取ったがなかなか口にする事ができなかった。それは、以前に飲んだつわり止めの薬が苦くてまずかった記憶が蘇った為だが、その様子をアベルは勘違いしたみたいだ。
「毒なんて入ってねーよ。お前は大事な人質だからな。」
アベルがそう言ったので、私は言い返していた。
「別に毒が入っているって思ったわけじゃないから。あんたはともかく、リリカさんの目は純粋で信じられると確信したから。ということで、頂きますーーー。」
私が迷い無くぱくっと薬草の練りこんだパンにかじりつくと、アベルとリリカは私をじっと見つめていた。でも、そんな事に気が付かないくらいに夢中になって薬草パンを食べつくした。
「美味しい!!最近、つわりで全然食べられなかったのに。これ、無臭に近いね。」
「獣族に代々伝わる、つわりを和らげる薬草のパンなの。栄養も取れてつわりも和らげば最高でしょ?」
リリカが自慢げに話した。私は思わずうんうんと頷いて口を開いていた。
「王宮の女医のギーナも腕はいいんだけど、つわりで出してくれた薬は最悪に臭くて苦かったのよねぇ。このパンの作り方教えてくれる?治療院にパンのレシピを伝えるわ。」
私がそう言うと、アベルは意外そうに口を開いた。
「お前、次期王位を継ぐカインの側室だよな?もっと、鼻につくような上流階級の嫌な奴かと思ってたが案外と庶民的だな。」
「そしゃ、元男で庶民ですから。そうだ、忘れてた。私って誘拐されたんだよね?で、アベル私を誘拐した目的はなんだったの?ここは、あなたの住んでいるところなの?」
私は王宮とは比べようも無い粗末な小屋を見ながら口を開いた。アベルは私をじろじろ見ながら口を開いた。
「ここは、俺たち狼一族が住んでいる村だ。この家は、リリカの家だ。・・・お前を誘拐したのは、お前の身と引き換えに牢獄塔に幽閉されている俺たちの長を解放させるためだ。」
「そうだったんだ!!でも、残念だったね。私を誘拐しても意味無いよ。私は、カインが兄のアーサーへの当て付けの為に側室にしたようなものだものだもの。そんな要求、王宮が飲むはず無いよ。」
私がそう言うと、アベルは意外そうに口を開いた。
「そんな事はないだろ。お前、カインに寵愛されているからこそあいつの子を宿したのだろ?それに、王宮にお前が誘拐された事が伝わった途端に、牢獄塔から囚人は数人解放される事が即決まった。その中に、俺たちの長の名があった。そんな事ができるのは、王国を実質動かしているカインだけだ。」
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