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第74話
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◆◆◆◆◆◆
カインの言葉にユリアスは薄い笑みを浮かべ口を開いた。
「もう手は考えてあります。トモヤ様が懐妊されていた事は幸いでした。王家の正統なるお世継ぎ懐妊の恩赦として、獣属の長を放免といたしましょう。本人も無実だと訴えているように実際投獄されている長は、庶民を蔑んだ言葉を放った貴族に反論しただけで捕まったようです。ま、ありがちな話ですが。彼を、牢獄塔から出しても王国に害をなすとは思えません。」
カインはほっとした表情になって、ユリアスに命じた。
「恩赦で放免とするなら、書類がいるだろう。お前のことだ、もう用意してあるのではないのか?」
「こちらに書類を用意してあります。カイン様のサインをいただければすぐに、囚人は牢獄塔から放免できます。それと、狼属の獣族長だけを釈放しては何かと目立ちますので、釈放しても問題なさそうな囚人を数人牢獄塔から同時に釈放しましょう。その中に、今回の騒動の主のアベルの名前も記しておきました。この書類に署名をお願いします。」
カインはユリアスが王家への忠誠からではなく、己自身の野心の為にその頭脳を使っていることに少々嫌気が差していた。それをすこし顔に表しつつ、カインはユリアスから書類を受け取り一通り読んだ後、書類に署名し王家の印を押した。それをユリアスに渡しながら気になっていたことを口にした。
「王家が一部族の要求に従い、牢獄塔の囚人を解放したことが世間に知れてはまずいだろうな。そのあたりも、お前は手配済みなのか?」
「はい。側室のトモヤ様が誘拐されたことは極秘となっております。生き残って帰ってきた護送車の運転手も大量失血の為亡くなりました。側室の誘拐を知るものは、あとは王家へ忠誠を誓っているものだけです。長が治める狼属の一族には、秘密を守らなければ全面的に攻撃すると警告しましたので秘密は守られるはずです。」
おそらくユリアスは護送車の生き残りの運転手を、口封じの為に殺したのだろうとカインは思ったが黙っていた。あとは、狼属の獣族が長の釈放を知って約束どおり側室を解放してくれる事を祈るだけだった。もし、従わないようなら強硬手段をとらなくてはならなくなる。強硬手段に出ることになると、魔法使いの存在が欠かせなくなるがその肝心の魔法使いが見当たらない。カインはユリアスに向かって口を開いていた。
「ところで、レンはどうした?トモヤの捜索に出ているのか。一度も顔を合わせていないが?」
カインの質問に答えたのは、正妃の契約魔法使いのギルドだった。いつの間にか、執務室の部屋の隅に控えていた。その彼が、口を開く。
「カイン様、レンは牢獄塔にしばらく投獄することとなりました。」
「どうしてだ!?」
カインが驚いて声をあげた。ギルドは表情を変えずに正確に事実を主に伝えた。
「レンは『トモ』の祖母の脳を、囚人が生きた状態のまま喰らったようでございます。脳はほぼすべて、レンの胃に収まったようです。拷問は牢獄塔では許可されてますが・・・・生きた囚人の脳を食べる拷問方法は、常軌を逸しております。レンの精神がまともであるかどうか判明するまで、牢獄塔に投獄することなりました。事後報告をお許しください、カイン様。」
カインは言葉を失い、椅子に深く座り込んだ。
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カインの言葉にユリアスは薄い笑みを浮かべ口を開いた。
「もう手は考えてあります。トモヤ様が懐妊されていた事は幸いでした。王家の正統なるお世継ぎ懐妊の恩赦として、獣属の長を放免といたしましょう。本人も無実だと訴えているように実際投獄されている長は、庶民を蔑んだ言葉を放った貴族に反論しただけで捕まったようです。ま、ありがちな話ですが。彼を、牢獄塔から出しても王国に害をなすとは思えません。」
カインはほっとした表情になって、ユリアスに命じた。
「恩赦で放免とするなら、書類がいるだろう。お前のことだ、もう用意してあるのではないのか?」
「こちらに書類を用意してあります。カイン様のサインをいただければすぐに、囚人は牢獄塔から放免できます。それと、狼属の獣族長だけを釈放しては何かと目立ちますので、釈放しても問題なさそうな囚人を数人牢獄塔から同時に釈放しましょう。その中に、今回の騒動の主のアベルの名前も記しておきました。この書類に署名をお願いします。」
カインはユリアスが王家への忠誠からではなく、己自身の野心の為にその頭脳を使っていることに少々嫌気が差していた。それをすこし顔に表しつつ、カインはユリアスから書類を受け取り一通り読んだ後、書類に署名し王家の印を押した。それをユリアスに渡しながら気になっていたことを口にした。
「王家が一部族の要求に従い、牢獄塔の囚人を解放したことが世間に知れてはまずいだろうな。そのあたりも、お前は手配済みなのか?」
「はい。側室のトモヤ様が誘拐されたことは極秘となっております。生き残って帰ってきた護送車の運転手も大量失血の為亡くなりました。側室の誘拐を知るものは、あとは王家へ忠誠を誓っているものだけです。長が治める狼属の一族には、秘密を守らなければ全面的に攻撃すると警告しましたので秘密は守られるはずです。」
おそらくユリアスは護送車の生き残りの運転手を、口封じの為に殺したのだろうとカインは思ったが黙っていた。あとは、狼属の獣族が長の釈放を知って約束どおり側室を解放してくれる事を祈るだけだった。もし、従わないようなら強硬手段をとらなくてはならなくなる。強硬手段に出ることになると、魔法使いの存在が欠かせなくなるがその肝心の魔法使いが見当たらない。カインはユリアスに向かって口を開いていた。
「ところで、レンはどうした?トモヤの捜索に出ているのか。一度も顔を合わせていないが?」
カインの質問に答えたのは、正妃の契約魔法使いのギルドだった。いつの間にか、執務室の部屋の隅に控えていた。その彼が、口を開く。
「カイン様、レンは牢獄塔にしばらく投獄することとなりました。」
「どうしてだ!?」
カインが驚いて声をあげた。ギルドは表情を変えずに正確に事実を主に伝えた。
「レンは『トモ』の祖母の脳を、囚人が生きた状態のまま喰らったようでございます。脳はほぼすべて、レンの胃に収まったようです。拷問は牢獄塔では許可されてますが・・・・生きた囚人の脳を食べる拷問方法は、常軌を逸しております。レンの精神がまともであるかどうか判明するまで、牢獄塔に投獄することなりました。事後報告をお許しください、カイン様。」
カインは言葉を失い、椅子に深く座り込んだ。
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