異世界転移、魔法使いは女体化した僕を溺愛する

月歌(ツキウタ)

文字の大きさ
上 下
31 / 172

第30話

しおりを挟む
◆◆◆◆◆◆


「抗っても、無駄だ。女のお前が俺にかなうはずが無いだろ?」
「嫌よ、何で私があんたの側室になんかならないと駄目なのよぉ!!」

私が叫んで抵抗していると、カインは本気になってきたのか私の腕をきつく締め上げてきた。ぎりぎりとカインの指が腕に食い込み、私は泣きそうになった。
「ひっ、痛い。やめて!!」

「お前を側室にすれば、アーサーは怒り狂うだろうな。次期王位に付く俺の側室となれば、王の子のアーサーでもお前に手が出せなくなる。俺を殺してでも王位を奪い、側室の契約を終わらせないかぎりな!!」

「あなたは、どうしてそんなにアーサーに拘るのよ!!アーサーの初恋の人を殺しただけでは、まだ飽き足らないの!!」

「ああ、飽き足らないさ。アーサーと較べられて生きてきた俺の気持ちなどお前には解るまい。アーサーは何時も俺を蔑んだ目で見てくる。俺こそが王に相応しいというような顔でね。そのアーサーを屈服させた時だけ、俺は安堵できる。俺こそ、この国を統治する王に相応しいとね!!」

カインは、コンプレックスの塊なんだ。自分が王の器かどうか自分自身が疑っている。疑いながらもそれを望み、自分より優れた兄に嫉妬し執着している。カインは苦しんでいる。

「カイン、あなたは王になることを恐れている。自分がその器にあるのか、自分自身が疑っているのでしょ?」
「随分、強気の発言をする女だな。お前の言葉は人をイライラさせる。トモヤ、アーサーやレンが救いに来てくれるとでも思っているのか?」
「アーサーが王の間から出てきたら、すぐに駆けつけてくれる。蓮だって黙っていない。彼は最強の魔法使いよ!!私が助けを求めれば蓮はどこにいようと私を助けに来てくれるんだから!!」
必死で抵抗する私の腕をぎりぎりと締め上げて、カインはそのまま己の胸の中に私を抱き寄せきつく拘束した。そして、私の希望を砕くような言葉を口にした。

「アーサーもレンもお前を助けには来られない。彼らが王の間にいる時を狙って、お前を連れ出した意味をまだ理解していないようだな?」

「ど・・どういう意味よ?」
「王の間に入れば仕来りにより半日は出てこられない。しかも、あの王の間は歴代の王に仕えた強力な魔法使い達が幾重にも魔法陣を書き重ねている。王の契約魔法使いになれば、その魔法陣の系譜を記した書を読むことができるが、初めて王の間に入った魔法使いにとっては迷宮さながらの世界らしいぞ。そして、王の魔法使いは、仕来りにのっとってその時がくれば魔方陣の一部を書き直し、人の出入りを許す。そうだな、ギルド?」
モモを抱いた魔法使いはカインに声を掛けられると、海パンマントのふざけた格好のギルドが真面目な顔付きで頷き、口を開いた。
「はい、カイン様。王の間に一度入ってしまえば、その魔法陣の強力な力でどんな強力な魔法使いであろうとも混乱し翻弄を余儀なくされることでしょう。よほど魔法陣に詳しい魔法使いでもない限り、外部の事を探ることも、ましてや王の間から出ることも不可能です。」

「嘘よ!!蓮は最強の魔法使いなんだから、簡単に外に出られるはずだわ!!」

「強力な力を有するからこそ、幾重にも張り巡らされた魔法陣が全て見えて魔法使いの心を絡めとってしまうのです。彼に期待するのはおよしなさい。期待しても、辛くなるだけですよ。さあ、早くカイン様の側室の座をその手に掴みなさい。そうすれば、どんな贅沢もカイン様が叶えてくださることでしょう。」

「嫌よ!!離してよーーーー。アーーーサーー、蓮っーーー、助けて!!」

私が叫んだ時だった、カインの胸のなかで抗っていた私の黒髪から、蓮がさしてくれた真紅の薔薇の髪飾りが床に落ちていった。床に落ちた薔薇が花びらを散らした時、それらが青い炎となって薔薇が燃え上がり徐々に大きくなっていく青い炎が人の形に変貌を遂げた時に、魔法使いのギルドが叫んでいた。

「カイン様、それは魔法の術です。お気をつけて!!」
「っ!!」

私の目の前で、薔薇を焼く青く炎が透き通ったアーサーを作り出した。そして、そのアーサーが剣を抜くとカインに向かって飛び掛った。カインは私を突き飛ばすと剣を引き抜きぎりぎりのところで、剣を交えて身をかわす。何とか急所を外したもののカインは、魔法でできたアーサーの分身によって左腕に負傷をおっていた。赤い血が、ぽたぽたと床に落ちる。
カインが憎しみを込めて口を開く。

「アーサー、貴様!!」


◆◆◆◆◆◆
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...