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第30話
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◆◆◆◆◆◆
「抗っても、無駄だ。女のお前が俺にかなうはずが無いだろ?」
「嫌よ、何で私があんたの側室になんかならないと駄目なのよぉ!!」
私が叫んで抵抗していると、カインは本気になってきたのか私の腕をきつく締め上げてきた。ぎりぎりとカインの指が腕に食い込み、私は泣きそうになった。
「ひっ、痛い。やめて!!」
「お前を側室にすれば、アーサーは怒り狂うだろうな。次期王位に付く俺の側室となれば、王の子のアーサーでもお前に手が出せなくなる。俺を殺してでも王位を奪い、側室の契約を終わらせないかぎりな!!」
「あなたは、どうしてそんなにアーサーに拘るのよ!!アーサーの初恋の人を殺しただけでは、まだ飽き足らないの!!」
「ああ、飽き足らないさ。アーサーと較べられて生きてきた俺の気持ちなどお前には解るまい。アーサーは何時も俺を蔑んだ目で見てくる。俺こそが王に相応しいというような顔でね。そのアーサーを屈服させた時だけ、俺は安堵できる。俺こそ、この国を統治する王に相応しいとね!!」
カインは、コンプレックスの塊なんだ。自分が王の器かどうか自分自身が疑っている。疑いながらもそれを望み、自分より優れた兄に嫉妬し執着している。カインは苦しんでいる。
「カイン、あなたは王になることを恐れている。自分がその器にあるのか、自分自身が疑っているのでしょ?」
「随分、強気の発言をする女だな。お前の言葉は人をイライラさせる。トモヤ、アーサーやレンが救いに来てくれるとでも思っているのか?」
「アーサーが王の間から出てきたら、すぐに駆けつけてくれる。蓮だって黙っていない。彼は最強の魔法使いよ!!私が助けを求めれば蓮はどこにいようと私を助けに来てくれるんだから!!」
必死で抵抗する私の腕をぎりぎりと締め上げて、カインはそのまま己の胸の中に私を抱き寄せきつく拘束した。そして、私の希望を砕くような言葉を口にした。
「アーサーもレンもお前を助けには来られない。彼らが王の間にいる時を狙って、お前を連れ出した意味をまだ理解していないようだな?」
「ど・・どういう意味よ?」
「王の間に入れば仕来りにより半日は出てこられない。しかも、あの王の間は歴代の王に仕えた強力な魔法使い達が幾重にも魔法陣を書き重ねている。王の契約魔法使いになれば、その魔法陣の系譜を記した書を読むことができるが、初めて王の間に入った魔法使いにとっては迷宮さながらの世界らしいぞ。そして、王の魔法使いは、仕来りにのっとってその時がくれば魔方陣の一部を書き直し、人の出入りを許す。そうだな、ギルド?」
モモを抱いた魔法使いはカインに声を掛けられると、海パンマントのふざけた格好のギルドが真面目な顔付きで頷き、口を開いた。
「はい、カイン様。王の間に一度入ってしまえば、その魔法陣の強力な力でどんな強力な魔法使いであろうとも混乱し翻弄を余儀なくされることでしょう。よほど魔法陣に詳しい魔法使いでもない限り、外部の事を探ることも、ましてや王の間から出ることも不可能です。」
「嘘よ!!蓮は最強の魔法使いなんだから、簡単に外に出られるはずだわ!!」
「強力な力を有するからこそ、幾重にも張り巡らされた魔法陣が全て見えて魔法使いの心を絡めとってしまうのです。彼に期待するのはおよしなさい。期待しても、辛くなるだけですよ。さあ、早くカイン様の側室の座をその手に掴みなさい。そうすれば、どんな贅沢もカイン様が叶えてくださることでしょう。」
「嫌よ!!離してよーーーー。アーーーサーー、蓮っーーー、助けて!!」
私が叫んだ時だった、カインの胸のなかで抗っていた私の黒髪から、蓮がさしてくれた真紅の薔薇の髪飾りが床に落ちていった。床に落ちた薔薇が花びらを散らした時、それらが青い炎となって薔薇が燃え上がり徐々に大きくなっていく青い炎が人の形に変貌を遂げた時に、魔法使いのギルドが叫んでいた。
「カイン様、それは魔法の術です。お気をつけて!!」
「っ!!」
私の目の前で、薔薇を焼く青く炎が透き通ったアーサーを作り出した。そして、そのアーサーが剣を抜くとカインに向かって飛び掛った。カインは私を突き飛ばすと剣を引き抜きぎりぎりのところで、剣を交えて身をかわす。何とか急所を外したもののカインは、魔法でできたアーサーの分身によって左腕に負傷をおっていた。赤い血が、ぽたぽたと床に落ちる。
カインが憎しみを込めて口を開く。
「アーサー、貴様!!」
◆◆◆◆◆◆
「抗っても、無駄だ。女のお前が俺にかなうはずが無いだろ?」
「嫌よ、何で私があんたの側室になんかならないと駄目なのよぉ!!」
私が叫んで抵抗していると、カインは本気になってきたのか私の腕をきつく締め上げてきた。ぎりぎりとカインの指が腕に食い込み、私は泣きそうになった。
「ひっ、痛い。やめて!!」
「お前を側室にすれば、アーサーは怒り狂うだろうな。次期王位に付く俺の側室となれば、王の子のアーサーでもお前に手が出せなくなる。俺を殺してでも王位を奪い、側室の契約を終わらせないかぎりな!!」
「あなたは、どうしてそんなにアーサーに拘るのよ!!アーサーの初恋の人を殺しただけでは、まだ飽き足らないの!!」
「ああ、飽き足らないさ。アーサーと較べられて生きてきた俺の気持ちなどお前には解るまい。アーサーは何時も俺を蔑んだ目で見てくる。俺こそが王に相応しいというような顔でね。そのアーサーを屈服させた時だけ、俺は安堵できる。俺こそ、この国を統治する王に相応しいとね!!」
カインは、コンプレックスの塊なんだ。自分が王の器かどうか自分自身が疑っている。疑いながらもそれを望み、自分より優れた兄に嫉妬し執着している。カインは苦しんでいる。
「カイン、あなたは王になることを恐れている。自分がその器にあるのか、自分自身が疑っているのでしょ?」
「随分、強気の発言をする女だな。お前の言葉は人をイライラさせる。トモヤ、アーサーやレンが救いに来てくれるとでも思っているのか?」
「アーサーが王の間から出てきたら、すぐに駆けつけてくれる。蓮だって黙っていない。彼は最強の魔法使いよ!!私が助けを求めれば蓮はどこにいようと私を助けに来てくれるんだから!!」
必死で抵抗する私の腕をぎりぎりと締め上げて、カインはそのまま己の胸の中に私を抱き寄せきつく拘束した。そして、私の希望を砕くような言葉を口にした。
「アーサーもレンもお前を助けには来られない。彼らが王の間にいる時を狙って、お前を連れ出した意味をまだ理解していないようだな?」
「ど・・どういう意味よ?」
「王の間に入れば仕来りにより半日は出てこられない。しかも、あの王の間は歴代の王に仕えた強力な魔法使い達が幾重にも魔法陣を書き重ねている。王の契約魔法使いになれば、その魔法陣の系譜を記した書を読むことができるが、初めて王の間に入った魔法使いにとっては迷宮さながらの世界らしいぞ。そして、王の魔法使いは、仕来りにのっとってその時がくれば魔方陣の一部を書き直し、人の出入りを許す。そうだな、ギルド?」
モモを抱いた魔法使いはカインに声を掛けられると、海パンマントのふざけた格好のギルドが真面目な顔付きで頷き、口を開いた。
「はい、カイン様。王の間に一度入ってしまえば、その魔法陣の強力な力でどんな強力な魔法使いであろうとも混乱し翻弄を余儀なくされることでしょう。よほど魔法陣に詳しい魔法使いでもない限り、外部の事を探ることも、ましてや王の間から出ることも不可能です。」
「嘘よ!!蓮は最強の魔法使いなんだから、簡単に外に出られるはずだわ!!」
「強力な力を有するからこそ、幾重にも張り巡らされた魔法陣が全て見えて魔法使いの心を絡めとってしまうのです。彼に期待するのはおよしなさい。期待しても、辛くなるだけですよ。さあ、早くカイン様の側室の座をその手に掴みなさい。そうすれば、どんな贅沢もカイン様が叶えてくださることでしょう。」
「嫌よ!!離してよーーーー。アーーーサーー、蓮っーーー、助けて!!」
私が叫んだ時だった、カインの胸のなかで抗っていた私の黒髪から、蓮がさしてくれた真紅の薔薇の髪飾りが床に落ちていった。床に落ちた薔薇が花びらを散らした時、それらが青い炎となって薔薇が燃え上がり徐々に大きくなっていく青い炎が人の形に変貌を遂げた時に、魔法使いのギルドが叫んでいた。
「カイン様、それは魔法の術です。お気をつけて!!」
「っ!!」
私の目の前で、薔薇を焼く青く炎が透き通ったアーサーを作り出した。そして、そのアーサーが剣を抜くとカインに向かって飛び掛った。カインは私を突き飛ばすと剣を引き抜きぎりぎりのところで、剣を交えて身をかわす。何とか急所を外したもののカインは、魔法でできたアーサーの分身によって左腕に負傷をおっていた。赤い血が、ぽたぽたと床に落ちる。
カインが憎しみを込めて口を開く。
「アーサー、貴様!!」
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