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第6話 僕から私に変更する羽目になる

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花畑で抱き合う僕と蓮を見ていたアーサーが、何故か不機嫌そうに腕を組み口を開いた。

「トモヤとレンは恋人同士なのか?」

はぁ?

僕は誤解を解く為に蓮から身を離そうとしたが、蓮のやつはニヤニヤしながら僕の耳たぶを噛んできやがった。

「はぅっ!!」

僕は思わず変な声を出してしまう。顔を真っ赤にして幼馴染を睨むと、蓮はげらげらと笑いながら僕をその胸から解放した。そして、アーサーに向かって口を開く。

「ただの幼馴染ですよ、智也とは。ところで、あなたは質のよい服を着ていらっしゃるし、気品がありますね。高いご身分の方とお見受けいたしますが?」

蓮の質問に口を挟んだのは、アーサーの妹だった。

「当たり前です!!アーサーお兄様は、王家の血を引く方なのですよ。あなた達のような庶民が言葉を掛けるなどもってのほか。身分をわきまえないさい、特にトモヤ!!」

アーサーの妹に名指しされて、僕はムカつきながらも黙っていた。その妹をたしなめたのはアーサーだった。

「よせよ、メアリー。王家の血を引くといっても、母の身分が低くて王宮にもたまにしか行けぬ身分。持っているものといえば、小さな城とそれに見合う少ない領地。あとは、母上とメアリーと数人の召使だけだ。豪商や豪農の方が、まだ金を持っているよ。」

「そんな事ありません!お兄様を次期王にと望んでいる貴族たちが沢山いるのはご存知でしょ。母親の身分が高いからと言って、あんな無能なカインが王位を継ぐなんて国が乱れるに決まっているわ。ああ、お父様がアーサーを王位継承者に指名して下さったらいいのに!!」

なんか‥‥ややこしそうだな。

そんな僕の心を読んだのか、アーサーが僕を抱き寄せながら耳元で囁く。

「父上は病の床でね。俺の弟のカインが王宮で幅を利かせているのが、メアリーには我慢ならないんだよ。まあ、俺は王位を継ぐなんてごめんだけどね。こうやって気楽に馬車を走らせて、妖しげな女と出逢うなんて冒険もできなくなってしまう」

そう言うと、いきなりアーサーが僕の唇を奪ってきた。歯列を割って入り込む舌が僕の舌を絡めとり、僕の口の端からは唾液が零れだす。

「っ、んんっ‥‥っ、」

それが胸の谷間にたらたらと落ちていと、胸がカッと熱くなる。自分でも乳首がぴんと立つのがわかった。

「んっ、はぁ‥‥っ!」

ようやくアーサーが唇を離した時、僕は腰が砕けたて花畑に崩れ落ちた。何なんだ、この男はーー!?

蓮は肩を竦めて地面に座り込んだ僕を立ち上がらせると、アーサーに向かって口を開いた。

「その妖しげな女に興味があるようですね、アーサー様?俺達は旅の途中で山賊に襲われて、一文無しになってしまいました。俺たちをあなたの城でしばらく逗留させてもらえないだろうか?」

「蓮!?」

「俺たちが泊まる部屋ぐらいはあるでしょう?いくら小さなお城と言っても、王家の方のお城なのですから。ね、メアリー様?」

蓮がにっこりとメアリーに微笑みかけると、メアリーは頬を赤く染めるた。そして、ふわりとした衣装の袖で真っ赤な顔を隠しながら口を開く。

「お兄様。この方たちもお困りのようですし、部屋を貸してはいかがかしら?」

おい、メアリー。僕への態度とえらい違いじゃないか?僕だって男の体をしていたら、メアリーに微笑みかけてメロメロにさせてやるのに。

まあ、蓮ほどの自信はないが。
童貞だし。
今は、処女だけど。

「そうだな。お前たちと過ごすのも面白そうだから、泊めてやってもかまわない。だが、一つ条件がある」

「条件といいますと?」

「トモヤが『僕』というのは、女性なのに下品だ。『私』と言い改めて女性らしく振る舞うなら、泊めてやってもかまわないぞ。」

「なにぃいいいーーーーー!!」

何故、僕が『僕』と言っちゃ駄目なんだ。むしろ『俺』と言いたい。似合わないから僕を言ってしまう自分が悲しい。くそ!

しかし、こんな異世界で無一文なのは悲惨過ぎる。このまま旅を続ければ、またあんな山賊に襲われかねない。 

僕はまだいい。でも、妹のモモがあんな男たちにレイプでもされたら耐えられない。僕は背中に抱き付く猫モモに視線を向けた。

「どーちたですか、おにいちゃま。」

う、いかん。こんな可愛い顔してたら、絶対に変態ロリ男に目をつけられる。

「分った。これから、僕は‥‥わ、私は女の子らしくします。うん、する。これでいい、アーサー?」

「いいぞ、契約成立だ。さあ、いまから馬車に乗って城に案内しよう」

私は顔を引きつらせながら、とびっきりの媚顔でアーサーに微笑んでみた。アーサーは満足そうに微笑み返すと、振り返り馬車に向かって歩きだす。

くすくすと蓮が笑っていたので、アーサーの見ていない時に蹴り飛ばしてやった。

とにかくこれからは人前では女らしく振舞おう。うん、これからは『私』でいくわよ!って、やっぱりなんだか違和感が。

くそ、笑うな、蓮。

私はこれから女らしく振舞わないと駄目なんだから、さらに蹴るぞ。

「痛ってぇええーーーーー!!」

私は思い切り蓮を蹴り飛ばした。馬車に向かっていたアーサーが不思議そうに振り返ったので、ほほほっと微笑んでみたりした。



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