書籍化作家の殺人日記【妄想から生まれる殺人鬼とクソキャラの供養塔】

運命の恋に狂う保険金殺人

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運命の恋ってあると思う。
その人に出逢って心を奪われた。

私には夫がいる。子供ができない理由が私にあると分かっても、優しく接してくれた優しい夫。

でも、それだけの人。

ある日、同窓会へのお誘いの手紙が来た。高校生だった自分が懐かしくなり、少しオシャレをして参加することにする。

会場に行けば、皆がおじさんやおばさんになっていた。がっかりしたような、ホッとしたような‥‥ちょっと切ない気分になる。

学生時代から「皆と明るく楽しむ」時間が苦手だった。部屋のすみでお酒を飲みながら、どうして同窓会に来ちゃったのかと後悔してしまう。そんな私に声を掛ける人物がいた。

高校時代に私を虐めていた女。

女は過去の事をすっかり忘れたのか気軽に話しかける。『女だけでホストクラブで二次会するけど、行く？』そう尋ねる女の顔に『貴女は地味だから行かないわよね』と書いてあるように思えて‥‥。

「行きます‥‥」

そう答えていた。意外な顔をするイジメ女に復讐できた気がして、テンションがあがる。その気持ちのまま、初めてのホストクラブに向かった。

そして出逢った。

その人は優しくハンサムだった。お喋りでない私の為に何かと気を使ってくれる。隣にいるだけで心地良い。

相手はホスト。きっと心では私のことをおばさんだと嘲笑っている。でも、そうでもないかもと思わせる優しさと笑顔。その笑顔は本物？

◇◇◇

推しのホストにハマり貯金を使い果たしてしまった。貯めるのにあんなに時間が掛かったのに、無くなるのはあっという間。でも、お陰で男性と親しくなり‥‥セックスをした。

私はそのセックスで初めてオーガズムを体験した。あまりの事に涙が出た。好きだと思った。好きでたまらなくて、男を抱きしめて泣いた。

でも、お金が無くなるとホストクラブには通えなくなり、ホストからも敬遠され始める。恋人のようなあの時間は幻？

◇◇◇

悶々としたある日、SNSで「旦那デスノート」と言うサイトを見つけた。運営は女性の離婚をサポートする会社。興味が湧いて主婦たちの書き込みを見て驚いた。そこには夫への恨みや悪意が書き込まれている。

そして、夫を秘密裏に殺害する計画が、【旦那デスノート】綴られていた。私は夢中になって読んだ。フィクションだと分かっている。でも、具体的な薬品名が出てくるリアルさに動悸が激しくなる。

夫の保険金目当てに毒を盛り続ける女が何人も存在する。彼女らは自慢げに今日は毒をスープに混入したと、楽しげに書き込んでいる。

毒されるとはこのことだろうか‥‥。

【旦那デスノート】に書かれていた薬品は、ネットで簡単に手に入った。これを料理に盛り続けると、肝臓が悪化してやがて死ぬらしい。

「夫の保険金‥‥いくらかな‥‥‥‥？」

今日から無味無臭のこの薬品を夫の料理に盛る。お酒にも盛ろう。死は早いほうがいい。運命の恋を得るためには、優しいけどそれだけの夫は不要だ。お金がいる。

あの人に逢うためにはお金が必要だから。



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