おっさん聖女は王国一の騎士と魔法契約を交わす

おっさん聖女降臨

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30代後半の疲れ気味なサラリーマン。
山下真琴やましたまこと・・つまり、俺なのだが、何故か数人の女子と共に、聖女として異世界に召喚されてしまった。

そこは、乙女ゲーム『☆聖女は痛みを引き受けます☆』の世界だった。

男の俺だが、この乙女ゲームをプレイした経験がある。女子の間では不評だった乙女ゲームだったが、一部のおっさんには人気があった。

プレステ初期のRPGゲームを彷彿とさせる、ゲーム世界観の中、攻略対象者がパーティーを組み魔王討伐に挑む。敵の魔王は強い。だが、様々なアイテムを討伐前に集め、全てのアイテムが揃った状態なら簡単に倒せる。

しかし、このアイテム集めに非常に時間がかかり、情報をかき集めて、アイテム探しをしなくてはならない。とにかく時間が必要だ。

そして、魔王討伐を終えて、ようやく乙女ゲームが始まる。だが、肝心の乙女ゲーム部分がショボく、どのルートを辿ろうとも、ハッピーエンドにたどり着くのだ。何度試しても、バッドエンドがなかった。

バッドエンドがない乙女ゲームなど、クソゲーでしかない。そのような理由で、このゲームは女子からは敬遠された。一体、製作サイドは誰をターゲットに『☆聖女は痛みを引き受けます☆』を作ったのか不明である。

とにかく、男の俺も聖女と認定され、魔王討伐に赴く王国一の騎士と魔法契約を交わした。

聖女の役目は、離れた場所から契約相手の傷の痛みを共有し癒して、魔王討伐の手助けをする事だ。で、女の子聖女は優先的に、比較的怪我を負いにくい相手と契約を交わした。

そして、最後に残ったおっさんは、最も魔王討伐に貢献するであろう、王国一の騎士と契約した。いや、本当は嫌だよ？

だって、このキャラはHPが高いため、他のパーティーメンバーを庇いながら、戦闘するんだよね。戦闘狂モードもあって、HPをがつがつ削られても、魔王に攻撃を繰りかえすし。

契約した聖女は、痛みを共有するわけだから・・普通嫌でしょ。だけど、モブ兵士や騎士に守られる王子達や魔法使いは女子聖女を選び去っていったからね。俺は視界に入っていなかったのかな？

で、残り物の俺の手を取ったのが、騎士のコナリー = オブライエンだった。

「俺と契約を交わしてくれますか、聖女？」

「騎士のコナリー = オブライエン、貴方と契約を交わします。私の事は、マコトと呼んで下さい。貴方が魔王討伐より無事にお帰りになることを、心から祈っております」

おっさん聖女だが、聖女らしく話すようにと神殿関係者から圧力をかけられ、話し言葉は『私』と改められた。くそがっ！


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