娼館で働く托卵の子の弟を義兄は鳥籠に囲いたい

第二部 シノ=アングル

第1話 色街で生まれ育ち

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ギルスハート王国の王都ローデル。

その王都の片隅に俺の育った色街がある。母のカーラは娼婦だったが、娼館主のハルス=アングルの子を孕んだ後に妾として囲われた。

シノと名付けられた俺は母の元で育ったが、カーラは精神を病み今は教会の療養所で過ごしている。

母が療養所で過ごすようになると、俺は娼館主の父ハンスに呼び寄せられた。そして、娼館に住み込み手伝いをするように命じられる。

俺には腹違いの弟がいた。

父のハルスには正妻がいて、息子のダンテを産んだ一年後に亡くなっている。父は正妻の子のダンテを溺愛し、息子が色街以外でも生きていけるようにと学校に通わせていた。

学校に通うことを許されなかった俺は、弟のダンテのことを妬んだ。なのに、弟は俺に懐いて学校で学んだ事を教えようとする。

弟の行為を迷惑に思いつつも、俺はそれに付き合った。勉強は嫌いではなく学べば更に知りたいことが増える。

娼婦や男娼の管理を父から命じられていた俺は、彼らに媚びて教えを請うこともあった。俺はいつか色街を出るつもりで学んでいて‥‥娼館主である父もその行為を黙認した様に思う。

色街を出て行きたい。

色街で生まれ育ち様々なモノを見てきた俺の結論だった。でも、弟のダンテの死で俺の立場は急変する。

その事故はダンテが学校に通う途中で起こった。貴族の馬車がダンテを轢いて逃げ去り、残されたダンデは苦しんだ末に亡くなる。

怒り狂った父は犯人を見つけ出したが、高位貴族の男は殺した御者を父に差し出し金で全てを終わらせようとした。

それを不服に思った父は裁判を起こしたが、加害者の貴族は誠意を見せたと判断され何の罪にも問われなかった。

それ以来、父は貴族を憎悪して色街に籠もるようになる。そして、唯一の後継ぎである俺も、色街から出る切っ掛けを失ってしまった。

目標を失いなんとなく色街で過ごす俺の前に、ある日やせ細った男が現れる。

名前はヤン=ビーゲル。

父が拾った行倒れの男だった。


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