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第一部 ヤン=ビーゲル
第21話 過保護な兄
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◆◆◆◆◆
護衛のエドガーが怪我をしたシノを抱きかかえ、ライナー兄上が僕を抱っこしている。
がたがた揺れる馬車内でも快適に過ごせて最高だ!最高か??
「違う!これは違う!」
「どうした、ヤン?」
「兄上、そんなに甘い声を出さないでください。それよりも、この抱っこされてる状況はおかしいです!」
昔は兄上に抱っこをよくお強請りしたが、今は僕も大人で‥‥流石にこれは恥ずかしい。
「ライナー兄上は過保護だと思います。とにかく、抱きかかえるのはやめて下さい。」
僕の頼みを聞いた兄上は『それもそうだな』と小さく呟く。そして、視線をエドガーに向けて声を発する。
「シノを抱きかかえるのは過保護だとヤンが言っている。その男は馬車の床に転がしておいていいぞ、エドガー」
「承知しました、ライナー様」
ライナーがシノを床に転がそうとしたので、僕は慌てて両手を振って静止する。
「違うから!シノを床に転がしたら駄目だからね、エドガー!」
「お前はもう大きいのだから、大人しくしていないと支えきれない。私に抱きつきなさい、ヤン」
「あっ!」
ライナー兄上にさらに抱き寄せられて、ますます恥ずかしくなる。兄の腕の中に収まったまま、僕は説得を試みる。
「僕を甘やかさないで下さい!」
「え?何故だ?」
「何故って‥‥。シノは出血して気を失っているので、エドガーに抱っこしてもらわないと駄目です。でも、僕は怪我をしていません。なので、兄上の抱っこは必要ありません。シートに下ろしてください、ライナー兄上。」
「‥‥‥‥‥‥。」
僕の言葉に兄上が黙り込んでしまった。馬車の揺れから僕を守ってくれているのに、感謝の言葉が足りなかったかもしれない。気を悪くしたのかな?
「兄上、あの‥‥」
「尻は‥‥」
「え?」
「尻は負傷して‥‥。」
「あっ、そっちですか。確かにシートに座ると痛いかも‥。久しぶりにガツガツされたからっ、んぁ!」
ライナー兄上にギュッと抱きしめられた。苦しいくらいに抱きしめてくる。
「苦しいです、兄上」
「すまない、ヤン。嫌なことを思い出させた。このまま、抱きしめさせて欲しい。」
「兄上‥‥。」
娼館では尻の怪我は日常ごとだったので、男娼仲間と話すように『ガツガツ』なんて言ってしまった。この体は色街にすっかり馴染んでいるみたい。
「ライナー兄上、このままビーゲル邸に向かうのですか?」
「そのつもりだが‥‥どこかに寄りたいのか、ヤン?」
僕は少し躊躇したが、気持ちをはっきりと伝えることにした。
「僕が邸にお邪魔すると兄上の奥方が困惑されると思います。ですから、どこか宿を取っていただけると助かります。安宿で構いません。僕とシノはそこで暫く過ごします。」
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護衛のエドガーが怪我をしたシノを抱きかかえ、ライナー兄上が僕を抱っこしている。
がたがた揺れる馬車内でも快適に過ごせて最高だ!最高か??
「違う!これは違う!」
「どうした、ヤン?」
「兄上、そんなに甘い声を出さないでください。それよりも、この抱っこされてる状況はおかしいです!」
昔は兄上に抱っこをよくお強請りしたが、今は僕も大人で‥‥流石にこれは恥ずかしい。
「ライナー兄上は過保護だと思います。とにかく、抱きかかえるのはやめて下さい。」
僕の頼みを聞いた兄上は『それもそうだな』と小さく呟く。そして、視線をエドガーに向けて声を発する。
「シノを抱きかかえるのは過保護だとヤンが言っている。その男は馬車の床に転がしておいていいぞ、エドガー」
「承知しました、ライナー様」
ライナーがシノを床に転がそうとしたので、僕は慌てて両手を振って静止する。
「違うから!シノを床に転がしたら駄目だからね、エドガー!」
「お前はもう大きいのだから、大人しくしていないと支えきれない。私に抱きつきなさい、ヤン」
「あっ!」
ライナー兄上にさらに抱き寄せられて、ますます恥ずかしくなる。兄の腕の中に収まったまま、僕は説得を試みる。
「僕を甘やかさないで下さい!」
「え?何故だ?」
「何故って‥‥。シノは出血して気を失っているので、エドガーに抱っこしてもらわないと駄目です。でも、僕は怪我をしていません。なので、兄上の抱っこは必要ありません。シートに下ろしてください、ライナー兄上。」
「‥‥‥‥‥‥。」
僕の言葉に兄上が黙り込んでしまった。馬車の揺れから僕を守ってくれているのに、感謝の言葉が足りなかったかもしれない。気を悪くしたのかな?
「兄上、あの‥‥」
「尻は‥‥」
「え?」
「尻は負傷して‥‥。」
「あっ、そっちですか。確かにシートに座ると痛いかも‥。久しぶりにガツガツされたからっ、んぁ!」
ライナー兄上にギュッと抱きしめられた。苦しいくらいに抱きしめてくる。
「苦しいです、兄上」
「すまない、ヤン。嫌なことを思い出させた。このまま、抱きしめさせて欲しい。」
「兄上‥‥。」
娼館では尻の怪我は日常ごとだったので、男娼仲間と話すように『ガツガツ』なんて言ってしまった。この体は色街にすっかり馴染んでいるみたい。
「ライナー兄上、このままビーゲル邸に向かうのですか?」
「そのつもりだが‥‥どこかに寄りたいのか、ヤン?」
僕は少し躊躇したが、気持ちをはっきりと伝えることにした。
「僕が邸にお邪魔すると兄上の奥方が困惑されると思います。ですから、どこか宿を取っていただけると助かります。安宿で構いません。僕とシノはそこで暫く過ごします。」
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