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第一部 ヤン=ビーゲル
第15話 僕は男を咥える淫乱です
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◆◆◆◆◆
「ドトールの手紙には、ヤンは怪我をして治療院にいると書いてあった。すぐに王都の邸に戻り医者を呼ぶが、それまで我慢できるかい?」
ライナー兄上に見つめられて、僕は顔が真っ赤になってしまう。やばい‥‥治療中に兄上に尻の穴を見られたら死ぬー!
「ラ、ライナー兄上。あの‥‥治療は終わっているので必要ありません。それと、僕の所有権は娼館の主にあるので‥‥兄上と共にはいけません」
「何を言っている、ヤン!?」
兄の腕の中は心地よくて安心する。でも、僕は母が浮気をして出来た子だ。血の繋がりのない弟の為に、ライナー兄上がスキャンダルに塗れる姿は見たくない。
「ごめんなさい、兄上。」
「ヤン?」
真実を話さないと駄目だ。兄上の気持ちが離れても、気持ち悪いと思われても仕方ないよね。
「僕は兄上の元には戻れません。男娼の元弟を引き取っては、噂好きの貴族たちの格好のネタになります。これ以上、ビーゲル家の名を穢せません。それに父上も許しては下さらないはずです‥‥。」
「その様な事を気にする必要はない。噂など気にせず私と共に帰ろう、ヤン。父上は病の為に領地で静養していらっしゃる。父上の説得は難しいが黙らせる事は可能だ。」
黙らせるってどういう事!?
いや、それよりも父上は病で領地で静養中とは。僕が父上の子でないと分かるまでは、よく可愛がって下さった。見舞いたいけどその資格はないよね‥‥他人なんだから。
「ヤン、お前を無理矢理に邸に連れて行くような事はしたくない。どうか、私の願いを叶えて欲しい。」
兄上が僕の右手をとり、その額に押し当てる。ライナー兄上の気持ちに胸が熱くなるが、だからこそこの人を穢せない。
僕は覚悟を決めて左手で体を覆っていた布を肌けて床に落とす。裸体になった僕に兄は大きく目を見開いた。
「この体を見て下さい。僕は男に体を売る男娼です。男に体を噛まれても、媚びて客が再び来るよう願い請う日々。そんな生活が身に染み付いた僕が、兄上と共には暮らせる筈がありません」
「ヤン、やめなさい。」
「これが今の僕の姿です。兄上の瞼には昔の僕の姿があるかもしれません。でも、今の僕は違う。僕は男を咥え込む淫乱です。父上を裏切った母と同じです。どうか捨てて下さい、兄上。」
いつの間にか僕は涙を流していた。
ポロポロと涙が頬を滑っていく。兄上は僕を抱き寄せると頬の涙を指の腹で拭ってくれた。そして、僕の額に軽くキスをする。
「捨てるものか。二度と手放さない、ヤン。お前を追放した父を説得することもできず、ただ金を渡して見送ってしまった。後悔している。市井で生きるヤンを私も夢見てしまった。まさかこんな結果になるなんて‥‥。」
「あにうぇ」
僕も市井で生きられると思っていた。でも、それは単なる自惚れで自活する能力なんて何もなく‥‥ただ流されて今の場所にたどり着いてしまった。
それが悔しくて恥ずかしくて‥‥。
「今は兄としてお前を保護したい。従ってくれるね、ヤン?」
そう尋ねられて思わず頷きそうになる。その僕の弱い心を引き止めたのはシノの声だった。
「貴様、俺のヤンに何してやがる」
治療院に戻ってきたシノが怒りを露わにして兄に迫ってきた。
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「ドトールの手紙には、ヤンは怪我をして治療院にいると書いてあった。すぐに王都の邸に戻り医者を呼ぶが、それまで我慢できるかい?」
ライナー兄上に見つめられて、僕は顔が真っ赤になってしまう。やばい‥‥治療中に兄上に尻の穴を見られたら死ぬー!
「ラ、ライナー兄上。あの‥‥治療は終わっているので必要ありません。それと、僕の所有権は娼館の主にあるので‥‥兄上と共にはいけません」
「何を言っている、ヤン!?」
兄の腕の中は心地よくて安心する。でも、僕は母が浮気をして出来た子だ。血の繋がりのない弟の為に、ライナー兄上がスキャンダルに塗れる姿は見たくない。
「ごめんなさい、兄上。」
「ヤン?」
真実を話さないと駄目だ。兄上の気持ちが離れても、気持ち悪いと思われても仕方ないよね。
「僕は兄上の元には戻れません。男娼の元弟を引き取っては、噂好きの貴族たちの格好のネタになります。これ以上、ビーゲル家の名を穢せません。それに父上も許しては下さらないはずです‥‥。」
「その様な事を気にする必要はない。噂など気にせず私と共に帰ろう、ヤン。父上は病の為に領地で静養していらっしゃる。父上の説得は難しいが黙らせる事は可能だ。」
黙らせるってどういう事!?
いや、それよりも父上は病で領地で静養中とは。僕が父上の子でないと分かるまでは、よく可愛がって下さった。見舞いたいけどその資格はないよね‥‥他人なんだから。
「ヤン、お前を無理矢理に邸に連れて行くような事はしたくない。どうか、私の願いを叶えて欲しい。」
兄上が僕の右手をとり、その額に押し当てる。ライナー兄上の気持ちに胸が熱くなるが、だからこそこの人を穢せない。
僕は覚悟を決めて左手で体を覆っていた布を肌けて床に落とす。裸体になった僕に兄は大きく目を見開いた。
「この体を見て下さい。僕は男に体を売る男娼です。男に体を噛まれても、媚びて客が再び来るよう願い請う日々。そんな生活が身に染み付いた僕が、兄上と共には暮らせる筈がありません」
「ヤン、やめなさい。」
「これが今の僕の姿です。兄上の瞼には昔の僕の姿があるかもしれません。でも、今の僕は違う。僕は男を咥え込む淫乱です。父上を裏切った母と同じです。どうか捨てて下さい、兄上。」
いつの間にか僕は涙を流していた。
ポロポロと涙が頬を滑っていく。兄上は僕を抱き寄せると頬の涙を指の腹で拭ってくれた。そして、僕の額に軽くキスをする。
「捨てるものか。二度と手放さない、ヤン。お前を追放した父を説得することもできず、ただ金を渡して見送ってしまった。後悔している。市井で生きるヤンを私も夢見てしまった。まさかこんな結果になるなんて‥‥。」
「あにうぇ」
僕も市井で生きられると思っていた。でも、それは単なる自惚れで自活する能力なんて何もなく‥‥ただ流されて今の場所にたどり着いてしまった。
それが悔しくて恥ずかしくて‥‥。
「今は兄としてお前を保護したい。従ってくれるね、ヤン?」
そう尋ねられて思わず頷きそうになる。その僕の弱い心を引き止めたのはシノの声だった。
「貴様、俺のヤンに何してやがる」
治療院に戻ってきたシノが怒りを露わにして兄に迫ってきた。
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