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◆◆◆◆◆
「・・ダニエル、道を間違えていないか?」
「何言ってるの?自宅への道を、間違えるわけないだろ?ひょっとして、エアハルト・・俺の事を、お馬鹿さんだと思ってない?」
「流石にダニエルでも、自宅への道は間違えないか。だが・・ここは、明らかに風俗街だ。まさか、風俗街に自宅があるのか?」
俺の言葉にエアハルトは返事しつつ、周囲をキョロキョロと眺めている。
たしかに、厭らしい看板が目立つ。だが、♂の結合部分には『葉っぱモザイク』が描かれており、緑豊かな街並みと言えなくもない。
「たしかに風俗街だけど、合法的な店ばかりだから大丈夫だよ。それに、俺の自宅は『エロチックロード』から、脇道に入った裏手にあるから・・割りと静かだよ?」
「この道は『エロチックロード』と命名されているのか・・脳みそを感じない命名だな」
「堕落した英雄は、意外とゲスるねえ~、新鮮で、楽しい。でも、その反応を見ると、エアハルトは、エロチックロードには来たことないんだね?堕落していたのに意外~」
エアハルトは肩を竦めて、軽い口調で答える。
「自宅に商売男を数人呼んで、酒を煽る。そして、その後は記憶を失くして・・朝を迎える毎日だった。朝日を浴びながら、裸の男が数人リビングに転がってる状態を見て、やるせない気分に陥る。そんな日々を送っていたが・・中々、その生活から抜け出せなかった」
俺は思わず、エアハルトの顔を覗き込んでいた。英雄が視線をそらしたが、俺は構わずエアハルトに質問していた。
「今は、その生活から抜け出せたの?」
「以前よりは、かなりましになった」
「寂しさは・・和らいだ?」
「・・どうだろうな・・」
言葉少なに答えた英雄の表情が虚ろに見えて、俺は話題を変えることにした。俺は、エアハルトの腕を掴み注意を引いた。
「エアハルト、この道を脇に入るとすぐに自宅に到着だよ!周囲から完全に浮いているけど、古い貴族の邸があるんだよね」
「じゃあ、ダニエルは、その貴族の邸を借りて住んでいるのか?」
エアハルトの発言に、俺は呆れ顔で答える。
「そんなわけないだろ?王都は家賃が高いから、一軒家に住めないよ」
「確かに、そんな事を言っていたな」
「その邸は『愛犬屋敷』と呼ばれていて・・亡くなった貴族の、愛犬が住んでいるんだ。その昔、邸を愛犬に残すという遺言書を弁護士に預けて、死んじゃった貴族がいたんだよね。でも、親族は、相続権を巡って裁判を起こした。その結果、なんと、愛犬が勝利したんだよ!今は愛犬に支える使用人と、愛犬の愛人犬が数匹、この邸に住んでいるんだ。凄いだろ!」
「うーん、世の中は、訳がわからない事だらけだな。それで、ダニエルは、一体どこに住んでいるんだ?」
「『愛犬屋敷』の門扉の横に、門番所があるんだけど、俺はそこの二階に住んでる。愛犬が邸を相続した時に、門番所は売りに出されたんだ。それを購入したのが、今の俺の大家さん。大家さんは一階に住んでいて、俺は二階を借りて住んでるんだ。古い建物だけど、頑丈だよ」
「・・その大家は孕み子なのか?」
「いや、仕事が『商売男』だから男だよ。言葉使いは、ちょっとナヨってるけど」
不意に、エアハルトの表情が険しくなった。
「元犯罪者と同棲など、到底容認できない。悪いが・・今すぐに、引っ越しの準備をしてくれ、ダニエル。俺の家には部屋がたくさんある。家賃を要求する気はない。だが、ダニエルがそれでは気を使うというなら・・俺が大家さんになる。英雄が大家さんなら、安全は保証されたも同然だ!ダニエル、今すぐに引っ越そう!」
英雄は饒舌に語る。
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「・・ダニエル、道を間違えていないか?」
「何言ってるの?自宅への道を、間違えるわけないだろ?ひょっとして、エアハルト・・俺の事を、お馬鹿さんだと思ってない?」
「流石にダニエルでも、自宅への道は間違えないか。だが・・ここは、明らかに風俗街だ。まさか、風俗街に自宅があるのか?」
俺の言葉にエアハルトは返事しつつ、周囲をキョロキョロと眺めている。
たしかに、厭らしい看板が目立つ。だが、♂の結合部分には『葉っぱモザイク』が描かれており、緑豊かな街並みと言えなくもない。
「たしかに風俗街だけど、合法的な店ばかりだから大丈夫だよ。それに、俺の自宅は『エロチックロード』から、脇道に入った裏手にあるから・・割りと静かだよ?」
「この道は『エロチックロード』と命名されているのか・・脳みそを感じない命名だな」
「堕落した英雄は、意外とゲスるねえ~、新鮮で、楽しい。でも、その反応を見ると、エアハルトは、エロチックロードには来たことないんだね?堕落していたのに意外~」
エアハルトは肩を竦めて、軽い口調で答える。
「自宅に商売男を数人呼んで、酒を煽る。そして、その後は記憶を失くして・・朝を迎える毎日だった。朝日を浴びながら、裸の男が数人リビングに転がってる状態を見て、やるせない気分に陥る。そんな日々を送っていたが・・中々、その生活から抜け出せなかった」
俺は思わず、エアハルトの顔を覗き込んでいた。英雄が視線をそらしたが、俺は構わずエアハルトに質問していた。
「今は、その生活から抜け出せたの?」
「以前よりは、かなりましになった」
「寂しさは・・和らいだ?」
「・・どうだろうな・・」
言葉少なに答えた英雄の表情が虚ろに見えて、俺は話題を変えることにした。俺は、エアハルトの腕を掴み注意を引いた。
「エアハルト、この道を脇に入るとすぐに自宅に到着だよ!周囲から完全に浮いているけど、古い貴族の邸があるんだよね」
「じゃあ、ダニエルは、その貴族の邸を借りて住んでいるのか?」
エアハルトの発言に、俺は呆れ顔で答える。
「そんなわけないだろ?王都は家賃が高いから、一軒家に住めないよ」
「確かに、そんな事を言っていたな」
「その邸は『愛犬屋敷』と呼ばれていて・・亡くなった貴族の、愛犬が住んでいるんだ。その昔、邸を愛犬に残すという遺言書を弁護士に預けて、死んじゃった貴族がいたんだよね。でも、親族は、相続権を巡って裁判を起こした。その結果、なんと、愛犬が勝利したんだよ!今は愛犬に支える使用人と、愛犬の愛人犬が数匹、この邸に住んでいるんだ。凄いだろ!」
「うーん、世の中は、訳がわからない事だらけだな。それで、ダニエルは、一体どこに住んでいるんだ?」
「『愛犬屋敷』の門扉の横に、門番所があるんだけど、俺はそこの二階に住んでる。愛犬が邸を相続した時に、門番所は売りに出されたんだ。それを購入したのが、今の俺の大家さん。大家さんは一階に住んでいて、俺は二階を借りて住んでるんだ。古い建物だけど、頑丈だよ」
「・・その大家は孕み子なのか?」
「いや、仕事が『商売男』だから男だよ。言葉使いは、ちょっとナヨってるけど」
不意に、エアハルトの表情が険しくなった。
「元犯罪者と同棲など、到底容認できない。悪いが・・今すぐに、引っ越しの準備をしてくれ、ダニエル。俺の家には部屋がたくさんある。家賃を要求する気はない。だが、ダニエルがそれでは気を使うというなら・・俺が大家さんになる。英雄が大家さんなら、安全は保証されたも同然だ!ダニエル、今すぐに引っ越そう!」
英雄は饒舌に語る。
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