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「ダニエル君、食事中に申し訳ない。少し質問があって、同席しても構わないかな?」

自警団副団長のゲルトラウト = アイヒマンは、にこやかな表情で俺に話しかけてきた。俺も思わず笑顔になって返事をする。

「もちろんです!自警団副団長の同席を妨げるものは全て排除いたします。あ、でもちょっと待ってくださいね。一応、親友に確認してみます。ねえ、エアハルト。さっき、俺が自警団の人にお世話になっているって言っただろ?彼は自警団副団長のゲルトラウトさん。俺に用事があるみたいだから、同席してもらっても構わないよね?」

「ああ、構わない。彼とは知り合いだから、問題ないよ、ダニエル」

「え、そうなの?」

俺は驚いて、エアハルトに聞き返した。

「ゲルトラウトとは、同じ孤児院で育った。魔王討伐の仲間になってくれと、俺はこいつに頭を下げた。だが、『嫌だ』の一言で断られた。あれは結構、苦い記憶になっている。それにしても、今でも自警団に所属していたのか。私服を着ていたから、自警団を辞めたのかと思ったぞ、ゲルトラウト?」

「今日は非番なんだよ。のんびり飯屋の前を歩いていたら、突如俺の背中に指輪の箱が直撃。地味に痛かったぞ。『指輪を預かれ』とのメッセージは受け取った。だが、紋章付きの指輪なんて厄介なものを、俺に預けようとするな」

「そう文句を言うこともないだろ?一時的に、指輪を預かって貰おうと思っただけだ」

「・・エアハルト、お前は相変わらず行動が雑すぎる。この指輪を預かったお陰で、俺は殺気だった凶悪男に絡まれて・・貴重な非番を台無しにされたんだぞ?これで、ダニエル君が関わっていなかったら、自警団事務所に指輪を届けて、面倒ごとを終わりにするところだった」

自警団副団長のごもっともな意見にも関わらず、エアハルトは不機嫌な顔をしている。英雄は時に子供っぽい。まあ、二人は仲良しみたいだから、本格的な喧嘩には発展しないだろう。

ちなみに、俺は上機嫌だ。『ダニエル君が関わっていなかったら』って、副団長が言ってくれたからだ。何、この特別扱い感!よき!

とにかく、いつもお世話になっている自警団副団長には、早く席に座ってもらおう。

「ゲルトラウトさん、俺の隣に座ってください。どうぞ、どうぞ」

「悪いね、ダニエル君」

自警団副団長が俺の隣に座った。そして、肩が触れ合った。ムキムキがムキムキしていて、ムキムキだった為に、鼻血が出そうになった。

そんな俺の幸せな気分を邪魔する奴がいた。エトヴィン = ウェラーだ。彼は、エアハルトとゲルトラウトを睨みつけて、言葉を吐き出した。

「おい、どういうことだ!お前達は、俺の指輪を最初から盗むつもりだったのか?英雄から盗賊に転職かよ、エアハルト!?」

エトヴィンの言葉に、エアハルトは静かに切り返す。

「エトヴィン、ダニエルに結婚を申し込むのは君の自由だ。だが、『第一類大人の玩具』に分類される『婬魔の指輪』を差し出して、ダニエルを口説くなど・・到底、ダニエルを本気で愛しているとは思えない」

「うっ、それは!」

エトヴィンが、言葉につまる。

「第一類大人の玩具?婬魔の指輪?」


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