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散花目覚める

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左衛門は驚き目を丸くしたが、すぐに皮肉な笑みを浮かべて口を開いた。

「弥太郎は元陰間だと聞くが、陰間は皆その様に夢見がちなのかい?金で男に買われた身ならば分かるだろうに。性愛以外の目的で陰間は求められはしない。」

左衛門の言葉に弥太郎は表情を崩さず答える。

「承知しております。陰間に求められるものは性愛のみ。ですが、左衛門様は散花に性愛以外のものを望んでおいでた。先程、若旦那は散花を『菊乃』と呼び抱きしめておられた。もしや、散花を亡くなった姉の身代わりにするおつもりですか?」

「黙りなさい」
「散花は菊乃ではありません」

「当然だ‥‥菊乃は死んだ。私が愛した菊乃の遺言を守るために、散花を水揚げをするだけ。それ以上の事を私は散花に求めるつもりはない」

不快感を顕にして左衛門は答える。だが、弥太郎はまだ引かない。

「では、散花を水揚げされた後はどうされるおつもりですか?」

弥太郎の立ち入りすぎた問に、左衛門はとうとう声を荒げて応じた。

「下人のお前に話す必要はない。これは私と散花の問題だ。これ以上の口出しは無用。蔦屋の旦那にはお前の無礼を報告する。さあ、寝所から出ていきなさい」

左衛門が怒気を強めて言葉を放つと、若旦那に抱かれた散花が突然目覚めた。散花は寝ぼけたまま『寝所を出ていきなさい』の言葉のみを耳に捉えて青ざめる。

そして、若旦那の胸の中から飛び退くと、叫びながら寝床に頭を擦り付け謝る。

「若旦那様、失礼いたしました!準備が済み次第、寝所を後にします。ん?え、振り袖の帯はどこ??え、あれ?なんで弥太郎がここにいるのよ!?ここは寝所だよ!ん、まさか若旦那様は、3人での行為をお望みだった?さすが、桔梗屋の旦那のご子息‥‥助平変態の資質が!」



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