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第13話 三原
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花屋『かさぶらんか』と地下の風俗店が売れた。そして、付属品の俺も売れた。
『かさぶらんか』はかなりの安値で売られていた。それでも、俺と同じ年齢の男が購入することになるとは思いもしなかった。速水の今の姿は知らないが、俺は過去の速水の事はよく覚えている。
◇◇◇◇
俺は、随分昔に、一度だけ奴に会ったことがある。母が『初物』を手に入れたと喜んでいた事を今も憶えている。小学生の高学年だった俺は、もう母親の商売を把握していた。
だが、『初物』の速水は自分がこれから何をさせられるのか、理解していない様子だった。母親から教わる『アナル』という言葉さえ知らぬようで困惑の表情を浮かべていた。今から男たちに犯され、性奴隷に堕ちるとも知らずに、速水は熱心に母親の言葉に耳を傾けていた。
今までも、そんな子供はたくさん見てきた。それが俺の日常だった。それでも、速水の事を覚えていたのは、奴が俺好みの容姿をしていたからだ。もちろん、その当時も今も、男には興味はないが・・・とにかく、可愛らしかった。
だけど、それだけならきっと俺の記憶には残らなかっただろ。
速水は勤務一日目で店を辞めた。
速水は、俺の親父に店で犯された。そして、その日の内に、親父に手を引かれて風俗店を辞めた。
速水が親父の囲われ者になったと、悔しそうに母親から聞いたのはそれから数日後の事だった。母親は死ぬまで速水の事を口汚く罵っていた。『あいつが自殺を図ったせいで、お前の父親に見限られた』と恨み言を度たび俺に聞かせた。俺は、そんな母親の存在が鬱陶しくて仕方なかった。
親父から見放された俺たち親子の生活は一変した。『かさぶらんか』の経営は傾く一方なのに母親は意地でも店をたたもうとはしなかった。それは親父への意地だったと思う。元妾としての意地。『あんたの助けが無くても立派にやっていけるのよ』とでも、母親はいいたかったのかもしれない。
だが、現実は正反対だった。母は借金だらけの『かさぶらんか』を残して死んだ。
結局、俺はそのつけを払わされることになった。付属品の俺込みで『かさぶらんか』は借金取りによって売り出された。俺の体格で、しかもこの年齢で性奴隷に堕とされるかどうかは疑問だが、『かさぶらんか』が売れなければ、内臓を切り売りする約束になっていた。
だから、俺は『かさぶらんか』を買ってくれた速水に感謝しないといけないんだ。それが、屈辱的な事であったとしても・・性奴隷の速水に頭を下げて従うしかない。
◇◇◇◇
もやもやとそんな事を考えていると、『かさぶらんか』の前に高級外車が止まった。ベンツではないようだが、とにかく高級車の黒光りする輝きに俺はビビってしまった。どう考えても、やくざだろ・・乗ってるの。
不意に後部座席が開き、一人の男が降り立った。その人は、このあたりの風俗店を束ねている青山竜二だった。俺は、目を見開いて彼を見つめた。端正な顔立ちの彼は、俺に視線を一度も向けずに後部座席の反対側の扉に向かう。すると、扉が開き竜二はエスコートするように車内に手を伸ばした。
「だーかーら、女みたいに扱うのやめてって何度も言ってるだろ、竜二さん!!」
「素直じゃねーな、速水は」
「しかも、車の扉にロックが掛かって、自分で開けられないとか、なに、この扱い?」
「いやー、速水ってそそっかしいから、チャイルドロックは必要だろ?車から降りて、車に即はねられる可能性が否定できない・・速水の場合」
「うるせー、消えろー、竜二。とにかく、明日から車の送迎とか要らないから。マンションから職場まで、歩いて五分だよ?車に乗る意味を見いだせないよ。ね、明日からはなしにしてね、竜二さん?」
「ちっ、しょうがねーな」
「ありがとう」
俺があっけにとられていると、ようやく車内からもう一人の人物が現れた。いずれは青山組の中心人物になる竜二さんと対等に話す人物としては、あまりにも普通の人物だった。その普通の人物が、店先にいた俺に視線を向けるとふわりと笑って話しかけてきた。
「三原進さんですね?僕は、速水誠です。こちらの花屋『かさぶらんか』と地下の風俗店の購入者です。勿論、あなたも買いましたのでご心配なく。それで・・これからの事を、三原さんと相談したいのですが、店内に話をする場所はありますか?」
「はあ・・」
「おい、速水。俺も話し合いに参加させろ」
「ダメダメ。清二さんから、竜一さんと竜二さんには迷惑かけるなって、言われてるの。僕が怒られちゃうから、竜二さんは遠慮してよ」
「叔父の奴、俺に忠告してんのか・・自分の女に手を出すなって。ちっ、正式に組長になってからの叔父はやりたい放題だ。お前を勝手に愛人にするとかありえねーだろ」
「違うよ。清二さんは、二人の事を心配しているんだよ。元性奴隷の僕なんかと関わると、評判を落とすから。いずれは、青山組を支える柱になる二人だから、穢したくないんだよ。その気持ち、僕はよくわかるよ?」
俺は、二人の会話についていけずに呆然としていた。その俺の目の前で、竜二さんが速水の腕を掴んだ。その細い腕には高級時計が嵌っていた。竜二さんはその時計に口づけを落とした。
「腕時計・・使ってくれてんだな。なんか、嬉しいもんだな」
「それがさあ・・・一度嵌めたら外れなくなったんだけど。どうやったら外れるの、この腕時計?」
「コツがあるんだよ、外すのに。外すのに俺でも一時間はかかるから、速水には一生無理だな。なあ、今度俺の部屋に来いよ。その時計の外し方、教えてやるから。一時間でも、何時間でも、手取り足取り外し方を教えるからさあ」
「竜二さんが、変態みたいになってきた。こんな人はもう放っておこう。ねえ、三原さん。店内を案内してくれる?」
「冷たいねー。じゃあ、俺は仕事行くから、何かあったらいつでもスマホに連絡くれよ、速水」
「うん、送ってくれてありがとね、竜二さん!」
速水の腕に・・というか、腕時計にキスをしていた竜二さんは、速水の腕を解放すると、あっさりと車に乗り込んだ。速水は車が角を曲がるまで手を振っていたが、車が見えなくなると、すぐにげんなりした顔をした。
「まさか、この時計にそんな仕掛けがあったなんて。うーん、マジで竜二さん、僕の事を狙ってるんじゃないだろうな。えー、面倒くさいな。竜一さんに相談した方がいいかな。清二さんには、なんて報告しよ。はーー」
やばい。速水の口から飛び出す人物名が、この街を牛耳っている奴らばかりで・・怖すぎる。
速水が性奴隷から出世しまくってた!!
◆◆◆◆◆◆
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