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第1章
第5話
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私は代金を支払って見つけた本を手に持って店を出た。どうしよう、なんだか胸がドキドキしてくる。慣れない事をしたからだろうか。
私は歩きながら、ジロジロと手元にある先ほどの本を見たり、前を見たりとせわしなく視線を入れ替える。どうしようかな、この本……早速読んでみたいけど家まで歩くとなるとここから時間がかかる。私は一考した後に、近くに公園がないかを調べてみる事にしてみた。
スマホの地図を調べて見つけた近場の公園に行ってみると、ビンゴな事にベンチがしっかり備わったそれなりの広さの公園であった。丁度良い、ここで買った本を読んでみようと私は思った。
「汚れは……一応、大丈夫ね」
ベンチに座っても大丈夫か確認した後に私はベンチに座った。
そして、先ほどの本を手に取ってみる。
「それにしてもこの本ってどこの本なんだろ……?」
とても気になった本ではあるけど、この本の出版社とか著者とかそういう情報は本には全然書いてない。スマホで調べれば一発だろうけど、まずはこの本を読むのが先決だった。私はこのために公園をわざわざ探して今この場にいる。
「よし……読んでみよう」
そして、私は『あなたの人生の本』と表題されたその本を開いたのだった――。
「……みー! ……ゆみってば! 起きなさいよ、まゆみィィー!」
「ふわっ?!」
私は顔を上げた。すぐ横を見るとそこにはリリーがいた。……何でリリーが?
「な、何?」
「何って、次の授業始まりそうなのに呑気に寝てる麻由美を起こしに来ただけだっての!」
「えぇ……? 授業?」
「そう! 次は移動教室だからさっさと行かないと遅刻っ! さっさと行くわよ!」
そして、リリーは教室の前に移動していった。
「早く! ここで待ってるからっ!」
確かに、リリーの言う通りここは学校で……私のいる教室ではあるんだけど……。
「……次って何の授業なの?」
「……」
リリーは私の返答を聞いた後しばらく経ってから「はあああぁぁぁぁ」と非常に大きなため息をついてきた。そんな反応されたって、本当に次どの授業なのか知らないんだって……。
「もう! そんなのちゃんと覚えておきなさいよ!」
「え、えへへ……」
私は苦笑いでその場を誤魔化した……。
さて、私はとりあえずその次の授業を受け始めてしばらく経ってから、何か可笑しい事に気が付いてきた。何だか……二学期が始まったばかりにしては何だかポツポツと違和感が出始めている。というか一番決定的なのは制服だった。
リリーと話していた直後は突然よくわからない事態に陥って良く見ていなかったんだけど、よく見ると私も、周囲の皆も……着ているのが冬服だった。
少なくとも私の記憶の限りだと二学期の始めはまだ夏服だった筈なんだけど……これは一体、どういう事なの?
「ねえリリー」
小声で隣にいるリリーに声を掛ける。とりあえずこれが授業中である事はわかっているんだから手短に済ませないと。
「何?」
「何でみんな冬服なの? まだ夏服じゃないの?」
私がそう話した瞬間、リリーの眉毛がピクリと動いて顔全体が険しくなっていったのを私は肌身で実感した。何? 私何かとんでもない事言っちゃった?
「何言ってるのよ、夏服解禁はまだ一カ月先よ。本当にどうしたの?」
「……え?」
その時、リリーの言っている事に私は半分くらい理解していなかったと思う。けど、リリーの言い分で理解できたのはまだ冬服の時期だという話である事。
どういう事なの? もしかして、私……タイムスリップしたとか? と、とりあえず授業を終えたらスマホで日付を確認しなおさないと行けない。これは、真っ先に確認しておかないと。
「うそ……でしょ?」
授業が終わって教室に戻った私は真っ先にスマホを開いた私はそこに書かれた日付に驚愕する。
五月……日。つまり、今は五月という事? さっきまで九月だったのに。
「……ハッ、そうだカバン」
私は真っ先にカバンの中を開いてみる。私の視界には真っ先に、気づいたものがある。
「これって……!」
あの時の絵本が、カバンの中に入っていたのだ。つい先ほど古本屋で買って、今ここに来る前に開いたばかりの、あの絵本が。
私はこれだけで頭が痛くなりそうなぐらいのとんでもない状況だと思ったのだが、まずはカバンの中にあるものを確認しないと!
そして、私はカバンから取り出したものを大体確認した時、かなり呆然としていたんだと思う。
「ちょっと麻由美、急にカバンの中から教科書とか筆記用具とか取り出して。さっきからとても大丈夫には見えないんだけど……」
リリーが声を掛けてくる。心配、かけてしまった様だ。
「あ、アハハ……だ、大丈夫だから。ほらっ、リリーもそろそろ次の準備しないとだよ」
なんとかリリーに元の席へと戻ってもらう様に半ば強引に押し出した後、私は一人呟いた。
「この中にあるの……新しい状態になってる」
二学期の時と比べると随分真新しい教科書や筆記用具入れ。そして、先ほどのスマホに表示された日付……。私は、ここまでの材料が揃って今確信した事がある。
やっぱりこれ……タイムスリップしてる!
放課後、私はどうにかして一人で居れる場所を校内探し回ってやっと見つけた階段裏に身をひそめる。皆が使う廊下からは大分離れているしすぐに外に出れる場所だけど、すぐ近くには人気がない。つまりは誰かに見られる可能性がない、という事だ。
「……よしっ」
私は早速手元にあるカバンから絵本を取り出す。そして、その絵本を開く。
すると、どうだろうか。
さっき、私が居た筈の公園の絵が描かれているページに驚く。しかも、真ん中には私が映っている。そのベンチに座っている様子、来ている制服、そして隣に置いてあるカバンまでバッチリ見覚えがある。これは間違いなかった。
「うそっ?!」
そして、次のページを開いた時私はまた驚いたのだ。次のページには何も描かれていない。文字も絵も全くないまっさらのページだった。その次のページを開けてみる。また、同じ様にまっさらだった。
え、本当にどういう事なの? これは一体……。
「おや、誰かいるのかい?」
「ひゃあぁ?!」
突然近くから呼び止められる声が。私は悲鳴を上げながら爆速で手に持っていた絵本を乱暴にカバンの中に突っ込む。声をした方……階段側の方を向くと、私はその意外な人物に驚く事になった。
「あ……あんた、東谷?!」
私は代金を支払って見つけた本を手に持って店を出た。どうしよう、なんだか胸がドキドキしてくる。慣れない事をしたからだろうか。
私は歩きながら、ジロジロと手元にある先ほどの本を見たり、前を見たりとせわしなく視線を入れ替える。どうしようかな、この本……早速読んでみたいけど家まで歩くとなるとここから時間がかかる。私は一考した後に、近くに公園がないかを調べてみる事にしてみた。
スマホの地図を調べて見つけた近場の公園に行ってみると、ビンゴな事にベンチがしっかり備わったそれなりの広さの公園であった。丁度良い、ここで買った本を読んでみようと私は思った。
「汚れは……一応、大丈夫ね」
ベンチに座っても大丈夫か確認した後に私はベンチに座った。
そして、先ほどの本を手に取ってみる。
「それにしてもこの本ってどこの本なんだろ……?」
とても気になった本ではあるけど、この本の出版社とか著者とかそういう情報は本には全然書いてない。スマホで調べれば一発だろうけど、まずはこの本を読むのが先決だった。私はこのために公園をわざわざ探して今この場にいる。
「よし……読んでみよう」
そして、私は『あなたの人生の本』と表題されたその本を開いたのだった――。
「……みー! ……ゆみってば! 起きなさいよ、まゆみィィー!」
「ふわっ?!」
私は顔を上げた。すぐ横を見るとそこにはリリーがいた。……何でリリーが?
「な、何?」
「何って、次の授業始まりそうなのに呑気に寝てる麻由美を起こしに来ただけだっての!」
「えぇ……? 授業?」
「そう! 次は移動教室だからさっさと行かないと遅刻っ! さっさと行くわよ!」
そして、リリーは教室の前に移動していった。
「早く! ここで待ってるからっ!」
確かに、リリーの言う通りここは学校で……私のいる教室ではあるんだけど……。
「……次って何の授業なの?」
「……」
リリーは私の返答を聞いた後しばらく経ってから「はあああぁぁぁぁ」と非常に大きなため息をついてきた。そんな反応されたって、本当に次どの授業なのか知らないんだって……。
「もう! そんなのちゃんと覚えておきなさいよ!」
「え、えへへ……」
私は苦笑いでその場を誤魔化した……。
さて、私はとりあえずその次の授業を受け始めてしばらく経ってから、何か可笑しい事に気が付いてきた。何だか……二学期が始まったばかりにしては何だかポツポツと違和感が出始めている。というか一番決定的なのは制服だった。
リリーと話していた直後は突然よくわからない事態に陥って良く見ていなかったんだけど、よく見ると私も、周囲の皆も……着ているのが冬服だった。
少なくとも私の記憶の限りだと二学期の始めはまだ夏服だった筈なんだけど……これは一体、どういう事なの?
「ねえリリー」
小声で隣にいるリリーに声を掛ける。とりあえずこれが授業中である事はわかっているんだから手短に済ませないと。
「何?」
「何でみんな冬服なの? まだ夏服じゃないの?」
私がそう話した瞬間、リリーの眉毛がピクリと動いて顔全体が険しくなっていったのを私は肌身で実感した。何? 私何かとんでもない事言っちゃった?
「何言ってるのよ、夏服解禁はまだ一カ月先よ。本当にどうしたの?」
「……え?」
その時、リリーの言っている事に私は半分くらい理解していなかったと思う。けど、リリーの言い分で理解できたのはまだ冬服の時期だという話である事。
どういう事なの? もしかして、私……タイムスリップしたとか? と、とりあえず授業を終えたらスマホで日付を確認しなおさないと行けない。これは、真っ先に確認しておかないと。
「うそ……でしょ?」
授業が終わって教室に戻った私は真っ先にスマホを開いた私はそこに書かれた日付に驚愕する。
五月……日。つまり、今は五月という事? さっきまで九月だったのに。
「……ハッ、そうだカバン」
私は真っ先にカバンの中を開いてみる。私の視界には真っ先に、気づいたものがある。
「これって……!」
あの時の絵本が、カバンの中に入っていたのだ。つい先ほど古本屋で買って、今ここに来る前に開いたばかりの、あの絵本が。
私はこれだけで頭が痛くなりそうなぐらいのとんでもない状況だと思ったのだが、まずはカバンの中にあるものを確認しないと!
そして、私はカバンから取り出したものを大体確認した時、かなり呆然としていたんだと思う。
「ちょっと麻由美、急にカバンの中から教科書とか筆記用具とか取り出して。さっきからとても大丈夫には見えないんだけど……」
リリーが声を掛けてくる。心配、かけてしまった様だ。
「あ、アハハ……だ、大丈夫だから。ほらっ、リリーもそろそろ次の準備しないとだよ」
なんとかリリーに元の席へと戻ってもらう様に半ば強引に押し出した後、私は一人呟いた。
「この中にあるの……新しい状態になってる」
二学期の時と比べると随分真新しい教科書や筆記用具入れ。そして、先ほどのスマホに表示された日付……。私は、ここまでの材料が揃って今確信した事がある。
やっぱりこれ……タイムスリップしてる!
放課後、私はどうにかして一人で居れる場所を校内探し回ってやっと見つけた階段裏に身をひそめる。皆が使う廊下からは大分離れているしすぐに外に出れる場所だけど、すぐ近くには人気がない。つまりは誰かに見られる可能性がない、という事だ。
「……よしっ」
私は早速手元にあるカバンから絵本を取り出す。そして、その絵本を開く。
すると、どうだろうか。
さっき、私が居た筈の公園の絵が描かれているページに驚く。しかも、真ん中には私が映っている。そのベンチに座っている様子、来ている制服、そして隣に置いてあるカバンまでバッチリ見覚えがある。これは間違いなかった。
「うそっ?!」
そして、次のページを開いた時私はまた驚いたのだ。次のページには何も描かれていない。文字も絵も全くないまっさらのページだった。その次のページを開けてみる。また、同じ様にまっさらだった。
え、本当にどういう事なの? これは一体……。
「おや、誰かいるのかい?」
「ひゃあぁ?!」
突然近くから呼び止められる声が。私は悲鳴を上げながら爆速で手に持っていた絵本を乱暴にカバンの中に突っ込む。声をした方……階段側の方を向くと、私はその意外な人物に驚く事になった。
「あ……あんた、東谷?!」
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