上 下
3 / 7

しおりを挟む
 旦那様のことは大、大好きだけど、彼は精力に満ち溢れたお方。
 初夜のときにおもいしった。

 あれは学園卒業後の舞踏会、ダンスの後に彼はみんなの前で私を抱きしめて言ったの。


『シルビア、結婚をしよう』


 彼と婚約破棄ではなく、彼と結婚。
 驚きと、嬉しさに涙がとまらなかった。

 一週間後、無事に結婚式も終わり、旦那様と迎えた初夜。
 お互い初めでのはず。

 式の後、お母様に「シルビアはなにもしなくていいの、エンリス様にすべてお任せしなさい」と言われてた。
 私にしては頑張ったネグリジェ――それを見て、興奮した旦那様に速攻ベッドに押し倒された。

『愛しているシルビア。お前は僕のもの……どこにも行かさない』  

『エンリス様?』

 初めて見た彼の欲望に満ちた瞳、吐息、低い掠れた声。
 自分の恥ずかしい喘ぎ声――痛み、すべてが幸せに満ちていた。

 彼の腕の中で、幸せに浸りながら眠りに落ちる寸前――ちゅっ、ちゅっキスされた。

 そのキスはしだいに激しくなっていく。
 えっ? 終わったんじゃないの?

『ひゃん! ま、待って』

『待たない』

 旦那様は「まだシルビアを愛し足りない!」痛がるから挿入はせず、朝まで声が枯れるまで喘がされた。


 ……獰猛な獣。


 普段でもえっちが濃いのに、これ以上濃くなられてもこまる。

 一番は旦那様に妄想を読ませたくない。
 隠れてはいないけど、隠れBL好きでいさせてぇ。



 *



 静かなサロン。聞こえるのは紙をめくる幸せの音。

 前世でも現世でもテンプレもの好きな私はため息をあげた。

(はぁ、王道学園もの最高!)

 俺様会長、腹黒副会長、赤髪おかん……なぜBL好きなの? と聞かれても答えに困るけど、果てしなく好き。


「あの、シルビア様よろしいですか?」


 サロンで小説を読み回し中、マリア様の手が止まった。


「はい、何でしょうか?」

 まさか私の小説に不備? 誤字? 脱字? それはよくあるのだけど……しかし声をかけてきた、アリア様は私ではなく後ろを見ていた。

「背後に飛んでらっしゃる、それはなんでしょうか? サロン一緒に入ってきましたけど……」

「あ、それ。私も気になっておりましたわ」

 リリアンさんも? 何かと、振り向くと背後にふわふわ丸い光の球が飛んでいた。
 

 お二人が不思議に思う球、私はこの光の球を知っているーー犯人は旦那様だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

入れ替わり!

にのまえ
恋愛
国王は困っていた。来年、結婚する皇太子ローエンとミミンナの仲が悪い。 このままでは婚約破棄になりかねないと。 そこで、昔、相談役をしていた北の森の魔女、ドドーラを呼んだ国王。 ドドーラのじっ、いいえ。新魔法でふたりは中身が入れ替わってしまう。 中身が変わった二人は果たしてどうなるの? 作者のゆるいご都合です。

ヒロインでも悪役でもない…モブ?…でもなかった

callas
恋愛
 お互いが転生者のヒロインと悪役令嬢。ヒロインは悪役令嬢をざまぁしようと、悪役令嬢はヒロインを返り討ちにしようとした最終決戦の卒業パーティー。しかし、彼女は全てを持っていった…

その悪役令嬢、問題児につき

ニコ
恋愛
 婚約破棄された悪役令嬢がストッパーが無くなり暴走するお話。 ※結構ぶっ飛んでます。もうご都合主義の塊です。難しく考えたら負け!

【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~

春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。 かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。 私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。 それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。 だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。 どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか? ※本編十七話、番外編四話の短いお話です。 ※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結) ※カクヨムにも掲載しています。

モブとか知らないし婚約破棄も知らない

monaca
恋愛
病弱だったわたしは生まれかわりました。 モブ? わかりませんが、この婚約はお受けいたします。

殿下! たべる相手がまちがっています!

にのまえ
恋愛
悪役令嬢ラビットは婚約者のフォックスが大好き。 好きだけど、悪役令嬢の自分は選ばれない。 婚約破棄後は彼の幸せを祈るつもり。 しかし、とうのフォックスはラビットを離さない。 ダメです。 このままだと、フォックスに大変なことが起こります。と、ラビットは離れようとするのだけど。

悪役令嬢はヒロインに敵わないのかしら?

こうじゃん
恋愛
わたくし、ローズ・キャンベラは、王宮園遊会で『王子様を巻き込んで池ポチャ』をした。しかも、その衝撃で前世の記憶を思い出した。 甦る膨大な前世の記憶。そうして気づいたのである。  私は今中世を思わせる、魔法有りのダークファンタジー乙女ゲーム『フラワープリンセス~花物語り』の世界に転生した。 ――悪名高き黒き華、ローズ・キャンベルとして。 (小説家になろうに投稿済み)

処理中です...