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 今日の午後、座り心地の良いソファー、彫刻が施されたテーブル一級品の家具が揃えられた王城のサロンに集まったのは、趣味の合う夫人と令嬢のお二人。

 この豪華絢爛のサロンに合わない声をあげた。

「見て、見てください!」

 このお茶会の主催。元悪役令嬢そして今は第二王子の奥さんシルビア・コルティアこと、私は鼻息荒くサロンで叫んだ。
 集まったお二人は見慣れたもので、いくら私が鼻息荒くても声を上げても気にせず、専属メイドが入れた紅茶を飲み、優雅にお菓子を摘み微笑んでいた。

「今回、シルビア様は何を題材に書かれたのですか?」

 このなかで年上のアリア様はお飲みになっていた、紅茶をのカップをテーブルに置き、きらりと瞳を輝かせて私にそう聞いた。
 隣に座るリリアンさんも、きらきらな瞳を私にを向けた。

「シルビア様の書く物語には、毎回驚かされますものね」

 若干ハードルが上がったようですが、一ヶ月妄想を重ねて書いた萌。

 毎回書くものは決まっておらず、途中でも、漫画でも小説でも萌さえあれば自由。
 ただし、みんなが苦手な物語は書かないのが決まり。

 なぜか? (旦那様とは、それ以上のこともしている)私に、男同士の絡みのあるものを書くには早いとの一言で、キス、抱き合うまでしか書いてません。

 私の文章がいくら幼稚くさくても、下手でも最後まで読んでくれる。
 そして、感想までくれる友人。


「ふふっ、お二人とも聞いて驚いてくださいな。前回は獣人の番BLもの、今回は王道学園にしましたの。それもモサモサ頭が主人公ではなく、腐男子総受けを書きましたわ!」

 
 書き上げた原稿をお二人に見せたのだけど……あれっ、反応がいまいち? 苦笑いをなさっている。


 まさか⁉︎


「あら、内容が被ってしまいましたわ。わたくしも好きな王道学園を今回、書いて持ってきましたわ」

 公爵夫人でありながら、作家のマリア・サスペンダー様(28歳)

「はい、私もです。シルビア様も私もマリア様も大、大好きな王道学園ものにしました」

 元ヒロイン。リリアン・カウザーさん(18歳)

 私達の大好物、王道学園とは。
 モサモサ頭(元不良?)が山間にある、全寮制男子学園に転校してから始まる物語。
 俺様生徒会長、腹黒、敬語、眼鏡副会長、チャラ男の会計、書記のわんこと、庶務の双子といった面々に溺愛されていくBL。

 赤髪のおかんも出てくる、記憶に残る前世の私の大好物。
 それを題材に選んで書いてきてくださるなんて、素敵すぎ!

「早く、早くお二人の書かれた王道学園を読みたいですわ、その原稿を渡してくださいませ!」

「まぁシルビア様ったら、そんなに慌てないの」

「ふふっ、そうですよ。原稿は逃げませんわ」

 歳が離れたお二人なのだけど、落ち着いた大人の雰囲気。
 いつも私だけが子供の様に騒ぎ立ている。

「だって、ひと月前に読んだマリア様の書くオフィスラブ、リリアンさんが書く学園純愛も良かったですもの!」

 オフィスラブ、人目を避けた資料倉庫の中会社の中、残業で残った後、休日のマンション……もう大人な、らぶらぶがいっぱい……はぁ、よかった。
 純愛、気付かず好きになっていく幼なじみの二人、手を握るにしても、キスをするにしても初々しい二人、学園祭のお化け屋敷の二人の密着、私の求めている純愛が全て含まれておりました。

 おーっと思い出して、よだれが、、じゅるり。

「そんなに褒めても何も出ませんわよ」

「そうですわ、ただ嬉しくなってしまうだけですわね」

「本当のことですもの。この世界に来てBL好きな腐女子の方に出会い。素晴らしいBL作品が読めるなんて、思ってもみなかったわ」
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