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第二章 ストレーガ国までの帰路

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 フワフワな蜂蜜色の髪の、可愛い子がこちらにやって来た。その子はシエルさんの隣にいる、私をチラッと見て鼻で笑った。

「お久しぶりです、シエル様」
 
「お久しぶりだね、セレンス嬢。今から王都に向かうから、私達はこれで失礼するよ」

「えぇ、もう言ってしまわれるのですか? 数年ぶりにお会いできましたのに……メイドに頼んで、テラスにお茶の準備もしましたのよ」

(おぉ、拗ねた顔も可愛い)

「わるいね、お茶を飲む暇はないんだ……シャーロン辺境伯、詳しい情報は助かった。ルー、みんなのところに戻ろう」

「は、はい」

 シエルさんは辺境伯に礼をして去ろうとしたが――セレンス嬢は止めた。

「待ってください! あ、あのシエル様、そちらの方は誰ですの? かなり親しげの様ですが……お付きのメイドですか?」

 シエルさんが私をルーと呼んだからか、セレンス嬢は眉をひそめながら聞いてきた。それもそうだろう……私の姿はポニーテールと質素なワンピースだ。ドレス姿の彼女から見たらメイドに見えても仕方がない。隣のシエルさんはフッと笑い、私の手を優しく握った。

「彼女はメイドではないよ、私の婚約者のルーチェだ」

「な、なんですって! シエル様の婚約者? ち、違うわ、わたくしが……シエル様の婚約者なの! ベルーガ殿下の婚約者を探しに行っている間に寂しくて、浮気なさったのですか?」

 ――浮気? シエルさんの婚約者?

「ハァ? いつ、セレンス嬢は私の婚約者になったんだ? ベルーガの誕生会の時に数回しか会ったことがない! シャーロン辺境伯これはどう言うことだ!」

 辺境伯はさっきの覇気はなく、娘に弱いのかヘコヘコ、シエルさんに頭を下げた。

「すみません――セレンスが余りにもシエル様をお慕いしていて……ストレーガ国にお戻りになったら公爵様を交えて、婚約者の話をしようと話していまして……」

「そうよ、公爵様に選ばれるのは貴女じゃないわ、辺境伯の娘の、私なのよ」

 この子、本当にシエルさんの事が好きなんだ。でも、好きな気持ちなら私だって負けないけど。シエルさんの位が公爵なら、今の私は平民だ。

「クク、悪いが君との婚約はないと前にも言った。ルーの事は一度は諦めようとした。だが、ようやく恋人になれたんだ……離せるわけがない。それに君の魅了魔法はちっとも効かない……ベルーガ、ラエルにも効かないな」

「なんですって、わたくしの魅了魔法が効かない?」

「ハハハッ、コイツにお前のチンケな魔法が効くわけがない。全く、断られているのにセレンスはまだ、シエルの事を諦めていなかったのか。シエルとラエルの相手はお前には無理だ」

「そんな事ないですわ、ノースお兄様!」

 可愛い顔を歪ませたセレンス嬢の肩を叩く、同じ蜂蜜色の短な金髪の騎士服の男性が現れた。
 
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