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第二章 ストレーガ国までの帰路

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 日が沈み、辺りは完全な暗闇となる。
 私達はサンドイッチを食べた後、コテージの中で出る準備をしていた。
 
「さて、物もしまったし出発するか。……ドラゴンの卵は静かだな?」

 ほんの前まで元気に卵をゆらして『ガオガオ』話していた。
 
「疲れたのか、寝ちゃったみたい」
 
「そうか、俺の魔力をたらふく食べたものな。ルー、俺のローブで悪いけどこれを着てくれ」

「シエルさん、ありがとう」

 暗闇に紛れるためにと、シエルさんのローブを貸してもらう。受け取り頭からすっぽり被ると、ふわり香るシエルさんの匂りがした。まるで、シエルさんに包まれているみたいでドキドキする。

 それが、シエルさんにも伝わったのか『お古で悪いけど、これからも使って』と、コテージの外に出て行った。

「これからも使って?」

 シエルさんの魔法使いローブ、貰ってもいいの……嬉しい。
 

 
 +

 

 身支度を終えて外に出ると、シエルさんはライトの灯りの中で地図を開き、どの進路を取るかをラエルさんと話していた。

「ラエル、海を超えた後は北に進むか?」
 
「そうだね。転移の魔法陣まではまだ距離もあるから、北に進んだ方が安全だね」

 進路が決まり、その進路が福ちゃんにも伝えられる。

「じゃあ、行くぞ!」

 シエルさんとラエルさんはアイテムボックスにコテージをしまい。福ちゃんは私達を乗せるために体を大きくさせる。そんな福ちゃんにシエルさんが近付き、頭を撫でて。

「ウルラ、辛くなったら遠慮なく言えよ」
「ああ、わかった」

 福ちゃんは今から私達を乗せて海を越え、それから北に向けて夜通し飛び、次の休憩の場所まで国を何ヵ国か超えると言った。
 
「福ちゃん、よろしくね」
「任せておけ、お嬢は卵を落とさないように」

「うん、気をつけるね」
 
 私達が乗り込むと羽を広げて福ちゃんは空高く飛び上がった。その後、風に乗り海上を飛んでいく。

 ――頬を撫でて流れて行く風。ラエルさんと子犬ちゃん、ガット君は固まって毛布に包まり眠っている。

「ルー、眠かったら卵を預かるぞ」
「まだ平気だよ、シエルさんこそ寝てもいいからね」

 じゃぁ遠慮なくと、ゴロリ私の膝の上に寝転り"ふわぁっ"と欠伸をすると目を瞑った。平気そうに見えるけど、まだ魔力が回復してないみたい。

「ゆっくり休んでね、シエルさん」
「ありがとう、ルー」

 しばらくして、寝息が聞こえて来た。
 




 

「起きろ、みんな。海を越えてサーロン国の領域に入った。近くにリーメン港が見えてきた」

 眠っていた私達は福ちゃんの声で目を覚した。
 辺りはまだ暗闇だけど、その暗闇に中に薄らかがり火と灯が見えていた。

「サーロン国? リーメン港?」
 
「ああ。今、暗闇で見ないがサーロン国に入ったみたいだ。もう直ぐ下にモール港よりも大きい、リーメンという港が下に広がる。確か魚介を使ったパエリアとサーモングリルが有名だったかな?」

「パエリア? サーモングリルかぁ、美味しそう」

 俺も食べてみたいと。時間ができたらリーメン食べに来ようと、シエルさんは約束してくれた。

「何々、食べ物の話?」
  
 私達の食べ物の話を聞きつけて、横に子犬ちゃんがモソモソやって来て座った。

「そうだ、ベルーガは国から逃げて、ここから船に紛れ込んだのか?」
 
「うん、そうだよ。国から逃げて荷馬車、相乗り馬車に紛れ込んで着いた、リーメンから『どこの国行きでもいい』と、あのときは慌てて船に乗ったんだ。それが、たまたまモール港行きの貨物船だったんだ」

「よかったな、モール港行きの貨物船で」
 
「本当そうだよ。その時は焦っていたから飛び乗ったけど……全然違うところに行ってたら……って、いま考えると怖いよな」

 ほんと怖い話だ。
 でも良かった、子犬ちゃんが迷子にならなくて。

「子犬ちゃん、シエルさんに会えて良かったね」
 
「うーん、僕としてはルーチェちゃんに会えたのが一番かな。可愛い女の子に拾ってもらえたから」

 ニシシッと笑った。
 その子犬ちゃんの頭をガシッと、シエルさんが掴み。

「そうだな、良かったな。俺の忠告を何度も破ったのは、忘れずに覚えてるからな」

「シエルさん、子犬ちゃんに酷いことしないの!」
「嫌だね!」

 子犬ちゃんは『ヒーッ』と叫び。シエルさんの手から逃れて、ラエルさんの所に逃げて行った。
 
「もう、シエルさんは……あっ?」
「どうした、ルー?」

 抱っこしているドラゴンの卵がぶるぶる動き、殻にピシッとヒビが入る音がした。

「うそ、卵にヒビが入ったかも?」
「えっ、ヒビ? ここで孵化するのか?」

「兄貴、ルーチェさん、どうしたの?」

「ラエル、ドラゴンの卵にヒビが入ったぞ」

 ――ええっ、と驚き。

 卵からドラゴンが生まれると、みんなは集まって来た。

 
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