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第二章 ストレーガ国までの帰路

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 シエルさんと入った神殿――ロウソクの炎が照らす神殿の中は外の外装とは違いシンプルな石作りだった。
 入ってすぐ祭壇へと向かう石の階段があり、その階段を登り切った先にはドラゴンの石像が両手に、真っ白な卵を抱きしめて私達を見下ろしていた。

 ――しかし、その私達の足は神殿を入ったすぐで止まっていた。
 この古代遺跡に私達を呼んだ声の主であろう、薄手の金色のドレスを身にまとった、頭に黒い角と背にコウモリのような羽、長い白銀の髪、青い瞳の女性がいた。

 その彼女は青い瞳に涙を浮かべて、私達にゆっくりと頭を下げた。
 

〈ようやく現れました……この島を見つけて降り立つ人を……貴方達にお願いがございます〉
 

「私達にお願い?」
 
「願いか……俺達に出来ることなら聞くけど。無理だと判断したら諦めてくれ」

〈話を聞いてくださるのですね、ありがとうございます。お願いとは。わたくしの最愛の息子を同じ種族――ドラゴン族の里まで連れて行って欲しいのです〉

 ――祭壇の上のドラゴンが守る卵は、この人の子供なんだ。

「ドラゴンの里か……俺達の力だけで探すのは難しいな。だが、ストレーガ国に戻って国王陛下に聞けば"ヒント"くれるかな?」

「国王陛下がヒント?」

「そそ、俺たちの国の陛下は"ヒント"はくれるけど、後は自分達の力で探してみつけろって言うんだ。それがまた、俺達の為になって楽しいんだ」

「それは面白そう、私も探すわ」
 

〈ああ――――三百年もの間……待った甲斐がありました。ようやく、わたくしは旦那様の元に行けます〉

「旦那様の所?」

〈はい。私達――ドラゴン族は三百年前に魔王軍によって、滅ぼされました。街が燃え……竜の戦士たちは傷付き倒れ。私の竜王も魔王と戦いその刃によって命を失いました。多くのものを失い、最後に残ったのはわたくしと息子だけ。私は最後の力で息子に何十もの結界の魔法を施し、神に息子を守ってくださいと願いました〉

「ま、魔王軍?」
「魔王だと……そんなものが、三百年前にはいたのか」

〈――フフ、神はわたくしの願いを聞きいれて下さり、息子は守ってやろう。いつになるかは分からないが……この島に人が降り立つ時が来るまで。その時のために、そなたを案内人として魂をここに残す――と〉

 ようやく訪れた人――その私達が預かると伝えると、女性は大つぶの涙を流して、私達に感謝の言葉を何度もつぶやいた。
 この女性は愛する旦那様との子供――息子の為に、いつ来るかもわからない人を、三百年もの間一人で待ち続けたんだ。

「どうなるかわからないけど、全力を尽くします」
「ああ、必ず見つけると言いたいが……まだ、わからないがあなたの子は俺とルーが大切にする」

〈ありがとう、ございます。祭壇に上がり、二人同時に卵に手をかざしてください、そうすれば結界が溶けます〉

「わかった、祭壇に行こう、ルー!」

 シエルさんに手を引かれて祭壇に登った。
 登り切った先――私達の目の前には三十センチぐらいの、真っ白な卵があった。その卵を守るように竜の石像が抱きしめている。

「ほお、これがドラゴンの卵か、デカイな」
「ほんと、大きい」

 ドラゴンの卵は結界に頑丈に守られている。
 その結界に、シエルさんと一緒に触れた。

「大変な役目だけど、全力を尽くす」
「私も、全力を尽くします」
 
 シエルさんと触れた途端、結界はキラキラと雫になり消えていく。

 私とシエルさんとで、精一杯、貴方を守るね。
 卵が答える様にドクンと脈打った。

〈宜しく頼みます、行ってらっしゃい我が息子〉

 女性は微笑み――守り役としての役目を終えて、花が散りさるように消えていった。

 
 
 その直後――ゴゴゴッと音がなり遺跡が朽ち果てていく。彼女が消えたから……かかっていた魔法が解けるんだ。

「ルー、遺跡が元に戻りかけてるな、行こう」
「うん!」

 シエルさんと手を繋ぎ、卵を抱えてて、竜の街の出口まで走った。


 心の中で――長い年月お疲れ様でした。
 あとは私たちに任せて、愛する人とゆっくり休んでください。
 

〈ほんとうに、ありがと…………う〉
 
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