上 下
75 / 108
第二章 ストレーガ国までの帰路

5

しおりを挟む
 ワンピースに着替えてエプロンを持ち、コテージから出ると、大小2つのカマドに火が付いた。その周りで、シエルさんとラエルさんはアイテムボックスをひらき、調理具、食材を準備している。
 
「おはよう、ルーチェさん。カマドの準備は終わったよ」
 
「ルー、こっちで料理を始めよう」

「おはよう、ラエルさん。いま行きます」

 エプロンをつけて2人に近づくと。まな板、包丁がテーブルの上に置かれ、鍋などが使いやすく並んでいる。子犬ちゃんとガット君はまだ寝ていて、福ちゃんは小島の見回りに行っているらしい。

「ラエル、この大きな鍋に水魔法で水を出してくれ」
 
「わかった、他にはいい?」
「ラエルさん、このポットにもお願いします」

 後で、みんなにコーヒーか紅茶をいれよう。食事の準備を始めると、ラエルさん側のコテージの扉が開き、子犬ちゃんがあくびをしながら出てきた。

「おはよう、みんな。あ――腹減った」

「ベルーガ、おはよう。よく眠れたみたいだな」
「フフ、ベッドで高いびきだったからね、よかった」
 
「ああ、ひさしぶりにぐっすり眠れたよ」

「うん、呪いも鎮まっているな」

 シエルさんは子犬ちゃんに近付き、体をチェックしてうなずいていた。――よかった、夜に寝ると熱がでて、苦しむとシエルさんが前に言っていたから。


 

「さてと、調理はじめまーす!」

 小さい方のカマドで3合分のお米を鍋で炊いて。つぎに、生姜を半分すり下ろして醤油などで漬けタレを作り、豚肉と薄切りの玉ねぎをボールに漬けた。
 
 残った生姜はみじん切りにして、水にさらし。キャベツの千切りも作り水にさらした。キュウリは薄切りにして、ボールのなかで塩と揉んでおく。

 ――甘めの卵焼きも作るから。

「シエルさん、卵焼き用のフライパンも出して」

「わかった」

 フライパンを受け取りカマドにかけ。卵をボールに割り甘めの味付けをして卵焼き用のフライパンで焼く。ふっくらに焼けた甘めの卵焼きの、端っこを2枚の皿に乗せて――側でラエルさんと、これから進む進路について地図を出して確認している、シエルさんのところに向かった。

 ――焼き立ての卵焼きを箸でとり。

「シエルさん、あーん」
「あーん……! うまっ!」

「フフ、よかった。ラエルさんも味見して」
「ありがとう、いただきます……うん、美味しい」

 シエルさんとラエルさんの、美味しい笑顔に満足して調理にもどり、ベーコンとジャガイモのスープを作り始めた。

 
 
 ♱♱♱

 

 ――お昼をかなり過ぎて料理が完成した。
 
 私達は海辺の近くに移動して、魔法屋で使われていた食卓をだし――テーブルの上に出来たての料理を並べる。献立は炊き立てのご飯、お肉たっぷりの生姜焼きと、大盛り千切りキャベツ。ジャガイモとベーコンのスープ、キュウリの塩揉みと甘めの卵焼き。

 みんなで並んでテーブルにつき、手を合わせた。


「「「「いただきまーす!」」」」
 

 まず先に大皿の生姜焼きを食べだした子犬ちゃん。甘めの卵焼きを独り占めにしたシエルさん。ラエルさんはそんな2人を見て笑い。スープの具――ジャガイモを山盛りお椀に盛っている。

(これはまずい、このままでは食いっぱぐれる?)

 私も箸を伸ばして、山盛りご飯の上に生姜焼きを乗せてパクついた。

「んん、美味しい」

「ハァ? なんだ? ルーのそのご飯の量は?」
「ルーチェさんのご飯、山盛りだね」

「さすが、ルーチェちゃん」

 私のお茶碗に盛られた、ご飯の量を見て驚く3人に。

「それはみんなもでしょう! 生姜焼きいただき、あと卵焼き、スープも!」
 
「あー、ボクのお肉! クソッ、負けるかルーチェちゃん!」
 
「俺の卵焼きが!」
 
「子犬ちゃん、シエルさんだけの料理じゃないですからね」

 おかずの取り合い合戦とかした食卓の上。

 ラエルさんはそれに加わらず、スープのジャガイモをニコニコ独り占めにしていて。気付いた頃にはスープはベーコンスープへと変わっていた。

「ラエル……お前、スープのジャガイモひとりで食べたな!」
 
「ごめんね。僕、ジャガイモ好きなんだ。ご馳走さまルーチェさん美味しかったよ」

「だからって、ジャガイモだけ食べちゃうとか……ラエルありえねぇー!」

「お肉を独り占めにした、ベルーガよりはいいでしょ? 僕は生姜焼き、あまり食べていないからね」

「うっ!」

 その様子を。見回りから帰ってきた福ちゃんと、起きたばかりのガット君は少し離れた位置で、私のお気に入り、とろけるチョコと、さくさくクッキーを食べなが呆れてみていた。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした婚約者

桜咲 京華
恋愛
 侯爵令嬢エルザには日本人として生きていた記憶があり、自分は悪役令嬢であると理解していた。  婚約者の名前は公爵令息、テオドール様。  ヒロインが現れ、テオドールと恋に落ちれば私は排除される運命だったからなるべく距離を置くようにしていたのに、優しい彼に惹かれてしまう自分を止められず、もしかしたらゲームの通りにはならないのではないかと希望を抱いてしまった。  しかしゲーム開始日の前日、テオドール様は私に関する記憶だけを完全に失ってしまった。  そしてゲームの通りに婚約は破棄され、私は酷い結末を迎える前に修道院へと逃げ込んだのだった。  続編「正気を失っていた婚約者」は、別の話として再連載開始する為、このお話は完結として閉じておきます。

婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな

朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
婚約破棄されて国外追放の公爵令嬢、しかし地獄に落ちたのは彼女ではなかった。 !逆転チートな婚約破棄劇場! !王宮、そして誰も居なくなった! !国が滅んだ?私のせい?しらんがな! 18話で完結

前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜! 【第2章スタート】【第1章完結約30万字】 王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。 主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。 それは、54歳主婦の記憶だった。 その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。 異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。 領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。             1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します! 2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ  恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。  <<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>

私は悪役令嬢マリーナ! 魔法とモフモフ達に囲まれて幸せなので、王子様は嫌いのままいてください。

にのまえ
恋愛
 3度のご飯より乙女ゲーム好きな私は、夢にまで見るようになっていた。  今回、夢が乙女ゲームの内容と違っていた。  その夢から覚めると、いま夢に見ていた悪役令嬢マリーナの子供の頃に"転生している"なんて⁉︎      婚約者になるはずの推しにも嫌われている?  それならそれでいい、マリーナの魔法とモフモフに囲まれた日常がはじまる。    第一章 完結。  第二章 連載中。  児童書・童話タグから  恋愛タグへ変更いたしました。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

男装の皇族姫

shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。 領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。 しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。 だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。 そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。 なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))  書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...