28 / 108
24
しおりを挟む
「せ、先輩?」
「シーッ、ヤツに見つかりたくなかったら、少し黙っていて」
「ヤツ?」
「ルーが会いたくない、カロール殿下だ」
ヤツーーカロール殿下! シエル先輩にうなずき口を手で押さえた。その直後にノック無しで勢いよく扉が開き、どかどかと数人の足音が聞こえて、私たちのいるソファーの前で止まった。
「おい、シエル。貴様の部屋からなにやら親しげな、女性の声が聞こえたといましがた報告があったが? 誰を連れ込んのだ?」
声を荒げるカロールに対して、先輩は慌てず寝起きの演技を始める。
「ふわぁっ、なんですかいきなり……この女性は私の大切な人です。だから、親しげに話もするでしょう? ……フウッ、こんなに大勢引き連れて、ノックもなしに私の部屋に入って来るのは、いくら殿下でも失礼ではありませんか?」
「それは、そうだが……いいや、貴様、その胸の上にいる女性はルーチェ嬢ではあるまいな?」
(ドキッ!)
ーーな、なんで、いま私の名前が出るの?
ほんとうにシエル先輩の上にいますけど……先輩は胸を揺らし"クックク"と低く喉で笑い。
「カロール殿下は何を言ってるのですか? ルーチェ様はまだ見つかってはおりませんよ。どうして、その方が私の胸の中などいるのでしょうか?」
「……貴様と仲がよかった、と報告を開けている」
「ただの、友達だったと伝えましたが?」
平然とカロールと話す先輩だけど、それとは裏腹にシエル先輩の指先は私の髪を撫でて、クルクルと指に髪を絡めて遊ぶ。それがくすぐったくて、笑いそうで……ドキドキと緊張が混ざる。
「「ドクン!」」
いきなり"ドクン"と体全体が脈を撃ち、体がピキピキと音が鳴るくらいに痛くなる。その痛みに我慢出来ず(くっ)と声に出さないようにうめいた。それに気付いた先輩は声を上げ。
「カロール殿下、私の大切な人が目を覚ましてしまう、お帰りください……それとも殿下はルーチェ様ではなく、彼女の肌を見たいのですか?」
腕の中の女性が騒ぎに気付き起きてしまう、と、先輩に強めに言われて。ことが、ことだけにカロールは引き下がった。
「すまなかった、シエルと女性……失礼した。戻るぞ!」
「「はっ!」」
大勢を連れて部屋を出て行き、静かになる先輩の部屋。その部屋の中でシエル先輩は"指をパチン"と鳴らしてローブを剥ぎ取った。
「ルーが来て驚いていたから、見張られていることを忘れていた。ルー、遮音の魔法を使った話しても外に聞こえないぞ。……はあ、それにしてもビックリしたな」
「はい、びっくりしました」
ムクっと起き上がって、シエル先輩を見上げたら、先輩の瞳がひらいて。
「はあ? え、ええ? ル、ルー? お前、自分の体を見てみろ」
「え、自分の体? あれ? 先輩の姿がやけに、大きく……見えるけど?」
コテンと首を傾げる。
「そうだろうな……お前、この部屋で魔法陣を描いた紙に触らなかったか?」
「魔法陣の紙? あ、それなら拾って、そこの研究机に置きましたけど……?」
「まじか……触ったのか。そうか……それが原因だ、ルーお前、ネズミの姿になっているぞ」
ネズミ? 自分の体を見ると白銀色の髪と、同じ色のふさふさな毛が見えた。
「ほんとうだ。でも、これってネズミじゃなくて、ハムスターかな? それともチンチラ?」
「チンチラより小さいから、ハムスターの方だろうな」
「そっか……ハムスターか」
私はシエル先輩が描いた、魔法陣の紙を触ってしまい、ハムスターの姿になっていた。
「シーッ、ヤツに見つかりたくなかったら、少し黙っていて」
「ヤツ?」
「ルーが会いたくない、カロール殿下だ」
ヤツーーカロール殿下! シエル先輩にうなずき口を手で押さえた。その直後にノック無しで勢いよく扉が開き、どかどかと数人の足音が聞こえて、私たちのいるソファーの前で止まった。
「おい、シエル。貴様の部屋からなにやら親しげな、女性の声が聞こえたといましがた報告があったが? 誰を連れ込んのだ?」
声を荒げるカロールに対して、先輩は慌てず寝起きの演技を始める。
「ふわぁっ、なんですかいきなり……この女性は私の大切な人です。だから、親しげに話もするでしょう? ……フウッ、こんなに大勢引き連れて、ノックもなしに私の部屋に入って来るのは、いくら殿下でも失礼ではありませんか?」
「それは、そうだが……いいや、貴様、その胸の上にいる女性はルーチェ嬢ではあるまいな?」
(ドキッ!)
ーーな、なんで、いま私の名前が出るの?
ほんとうにシエル先輩の上にいますけど……先輩は胸を揺らし"クックク"と低く喉で笑い。
「カロール殿下は何を言ってるのですか? ルーチェ様はまだ見つかってはおりませんよ。どうして、その方が私の胸の中などいるのでしょうか?」
「……貴様と仲がよかった、と報告を開けている」
「ただの、友達だったと伝えましたが?」
平然とカロールと話す先輩だけど、それとは裏腹にシエル先輩の指先は私の髪を撫でて、クルクルと指に髪を絡めて遊ぶ。それがくすぐったくて、笑いそうで……ドキドキと緊張が混ざる。
「「ドクン!」」
いきなり"ドクン"と体全体が脈を撃ち、体がピキピキと音が鳴るくらいに痛くなる。その痛みに我慢出来ず(くっ)と声に出さないようにうめいた。それに気付いた先輩は声を上げ。
「カロール殿下、私の大切な人が目を覚ましてしまう、お帰りください……それとも殿下はルーチェ様ではなく、彼女の肌を見たいのですか?」
腕の中の女性が騒ぎに気付き起きてしまう、と、先輩に強めに言われて。ことが、ことだけにカロールは引き下がった。
「すまなかった、シエルと女性……失礼した。戻るぞ!」
「「はっ!」」
大勢を連れて部屋を出て行き、静かになる先輩の部屋。その部屋の中でシエル先輩は"指をパチン"と鳴らしてローブを剥ぎ取った。
「ルーが来て驚いていたから、見張られていることを忘れていた。ルー、遮音の魔法を使った話しても外に聞こえないぞ。……はあ、それにしてもビックリしたな」
「はい、びっくりしました」
ムクっと起き上がって、シエル先輩を見上げたら、先輩の瞳がひらいて。
「はあ? え、ええ? ル、ルー? お前、自分の体を見てみろ」
「え、自分の体? あれ? 先輩の姿がやけに、大きく……見えるけど?」
コテンと首を傾げる。
「そうだろうな……お前、この部屋で魔法陣を描いた紙に触らなかったか?」
「魔法陣の紙? あ、それなら拾って、そこの研究机に置きましたけど……?」
「まじか……触ったのか。そうか……それが原因だ、ルーお前、ネズミの姿になっているぞ」
ネズミ? 自分の体を見ると白銀色の髪と、同じ色のふさふさな毛が見えた。
「ほんとうだ。でも、これってネズミじゃなくて、ハムスターかな? それともチンチラ?」
「チンチラより小さいから、ハムスターの方だろうな」
「そっか……ハムスターか」
私はシエル先輩が描いた、魔法陣の紙を触ってしまい、ハムスターの姿になっていた。
11
お気に入りに追加
3,033
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」
お飾りの私と怖そうな隣国の王子様
mahiro
恋愛
お飾りの婚約者だった。
だって、私とあの人が出会う前からあの人には好きな人がいた。
その人は隣国の王女様で、昔から二人はお互いを思い合っているように見えた。
「エディス、今すぐ婚約を破棄してくれ」
そう言ってきた王子様は真剣そのもので、拒否は許さないと目がそう訴えていた。
いつかこの日が来るとは思っていた。
思い合っている二人が両思いになる日が来ればいつの日か、と。
思いが叶った彼に祝いの言葉と、破棄を受け入れるような発言をしたけれど、もう私には用はないと彼は一切私を見ることなどなく、部屋を出て行ってしまった。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!
桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。
令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。
婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。
なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。
はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの?
たたき潰してさしあげますわ!
そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます!
※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;)
ご注意ください。m(_ _)m
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな
朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
婚約破棄されて国外追放の公爵令嬢、しかし地獄に落ちたのは彼女ではなかった。
!逆転チートな婚約破棄劇場!
!王宮、そして誰も居なくなった!
!国が滅んだ?私のせい?しらんがな!
18話で完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる